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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生18巻1号

1955年07月発行

文献概要

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温度と濕度の衛生

著者: 田多井吉之介1 山本理平1

所属機関: 1国立公衆衞生院生理衞生学部

ページ範囲:P.15 - P.25

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はしがき
 生態学は,人間の環境を3つに区分している。物理的環境,生物的環境,および社会的環境がこれであるが,温度と湿度は前記物理的環境においてつねに代表的にあげられる要素である。したがつて衞生学の発展過程において,その当初から学者の注目をあつめ,多数の研究がなされてきたのは改めてここに述べるまでもなかろう。しかし学問の発展は社会的進歩と切離しては考えられない。最初の衞生学者が取扱つた「人間に対する温度と湿度との影響」の研究は,もつぱら抽象された人間の温度あるいは湿度の単位に関して行われたのであるが,現在の温湿度の衞生を考慮する場合には,社会的な人間と社会的環境から明確に分離しがたい物理的環境条件としての温湿度とを採上げざるをえないのである。鉱工業の発達にともない製鉄場その他には異常高温条件が必要になり,その作業環境に労働者が曝露され,またとくに食品産業に不可欠の冷凍業では,反対に労働者は低温環境に曝露されねばならない。軍事的要求や交通の必要から,極地や熱帯地に居住しなければならない集団も生じてきた。あるいは温帯に生活していた人が,急に熱帯地や極地に移動する必要も起つてくる。1)これらはすべて産業の近代化に影響されて派生してきた現象であるが,考えてみると地球上の大部分の大陸には1年中の寒暑の差がかなり大きい地域がある。したがつて,ある一定の地域に定住していても,寒暑の影響を多分にうけて生活せざるをえないのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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