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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生18巻2号

1955年08月発行

雑誌目次

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疫痢の疫学

著者: 尾崎嘉篤

ページ範囲:P.1 - P.9

1.緒論
 疫痢はわが国に特に多発している疾患であり,しかも極めて高い致命率を示す急性伝染病である。
 即ち昭和27年には年間全赤痢患者は111,709名であつて,その内疫痢の罹患者は25,338名,人口10万対罹患率は29.5にも上つている。又,致命率は過去20カ年間のいずれの年を見ても50%前後の高率を示している。

日本腦炎について

著者: 北岡正見

ページ範囲:P.10 - P.16

 夏が近づくと毎年,今年は脳炎が流行しますかと,人から尋ねられる。そうしてその都度,当惑している。というのは流行が起るとか,起らないとかの未来の出来事に対する答えは,第六感による主観的決定によつてするのではなく,過去に於ける疫学を,出来得る限り客観的に各因子に分析し,綜合し,そこに何らかの手懸りを見出そうとの努力が,今日でも,なお続けられているにも拘らず,残念乍ら未だ決定的な法則が見出されていないからである。
 しかし過去に於ける全国的大流行の年次発生を通覧すると,そこに凡そ10〜15年の周期的流行波が認められる。また今日迄に明らかにされたことは日本脳炎も他の伝染病に於けると同様に個体の免疫と体内に侵入するウイルス毒力のかね合いによつて,発症したり,しなかつたりしている。近年の流行も昭和23年の全国大流行の連続であることを考慮すれば,そして今年の気象的条件が例年並みであるとすれば,今年の患者発生数が少くなつていつてもよい筈である。今その理由を述べるに先立ち日本脳炎の輪廓に触れてみよう。

家畜の日本腦炎

著者: 伊藤全

ページ範囲:P.17 - P.24

まえおき
 わが国に馬の非化膿性脳炎の流行が間けつ的にみられることは相当古くから知られていたが,人の日本脳炎病毒に一致する病毒が馬から分離されたのは1935年のことである。この城井等の業績は(1),1947,48年の大流行に際し多くの病毒学者により確認され,公衆衞生の上からも馬の流行性脳炎が注目されるようになつた。
 その後,調査研究の進むにつれて,牛,山羊にも日本脳炎の自然発生のあることが明らかにされ(2・3),さらにこの病毒は姙娠豚に感染して死産を起すことも確認されるに至つた(2・3)

三浦市に発生した流行性肝炎について

著者: 兒玉威

ページ範囲:P.25 - P.28

 昭和18年8月初めから中旬にわたり,川崎市某工場に男工16名,女工7名の流行性肝炎の集団発生を,また同じ頃横浜市某工場に30名の同疾患の多発を見,私どもは当時これが調査の機会を得た。よつて神奈川県下には戦前から流行性肝炎が存在し,昭和18年頃横浜,川崎方面に流行があつたものと解される。戦後は昭和27年頃から三浦半島の三崎町,横須賀市方面に流行性肝炎の発生を耳にしていたが,死亡者も少く特に注意をひかなかつた。しかるに昨年来三浦半島の東南部,三浦市南下浦町方面に発生しつつある流行性肝炎は致命率高く,惡性肝炎の流行でないかと疑われるので,現在まだ予備調査の段階にあつて報告の時期ではないが,本誌の要望もあり,あえてその概要を速報することとした。従て本流行の終末報告は調査の完了をまつてそれぞれの調査担当者及び研究者により改めて行われることを了解されたい。

座談会

明日の公衆衛生を語る

著者: 石垣純二 ,   聖成稔 ,   川上六馬 ,   松田心一

ページ範囲:P.29 - P.49

後退期に入つた公衆衛生
 石垣 それじや始めさせて頂きます。今日は"明日の公衆衞生を語る"というテーマで明るい話,暗い話をいろいろお伺い致したいと思いまして,川上先生,松田先生,それから聖成課長の3人の先生方に来て頂いた訳でございます。
 先ず最初に日本の公衆衞生は戦后10年間に非常に目覚ましい発展をいたしまして,死亡率,伝染病の死亡率の低下或は結核の死亡率低下とか沢山の明るい話題がございますけれども,この辺で現状分析を一つお願い致しまして,公衆衞生の明日は一体,上潮であるか,下げ潮であるかどうか,というような分析をして頂きたいと思います。最初に其の点で松田先生に,今日の公衆衞生の現状を少し気樂にお話し願いたいと思います。

研究報告

都内における覺醒劑常用者間に発生したマラリアについて

著者: 山口與四郞 ,   池田和雄 ,   難波諄士 ,   岩崎綾子

ページ範囲:P.50 - P.52

まえがき
 一昨年の暮あたりから覚醒剤常用者間にマラリア患者が集団的に発生している事が判明し既に大阪,九州等の実例が報告されている。
 東京都内でも昭和29年1月初旬より2月中旬にかけて5名の覚醒剤常用者が相次いで惡寒,戦慄,発熱のため芝の民生病院に入院し何れもマラリアである事が判明した。之等の患者は秋葉原ガード下,鍛治橋,浅草山谷等を根城とする浮浪者で何れも三日熱マラリア原虫が証明されたのであるが感染経路については患者発病の時期からみて「蚊に刺されて罹患した」とは考えられず,又患者の既往歴からみて外地にいた事のある二例は一応再発と云う事も考えられるが外地における発病時の症状が,惡寒,戦慄等もなく僅かに38℃台の熱が数日間持続したに過ぎない事からみてマラリアであつたとは断言出来ない。一方之等患者はすべて覚醒剤常用者であり注射器の消毒も不充分なまま直接静脈内に使用している事実からみて彼等がマラリア原虫で汚染された注射器を互に貸借使用することによる接種マラリアであろうと考えられる。

砂糖に発生するコナダニ類

著者: 眞貝春男 ,   上松久子 ,   長谷川曉男

ページ範囲:P.53 - P.54

1.まえがき
 戦後砂糖殊に輸入赤ザラメ中にコナダニ類が発生していて問題になつた事があつた。このコナダニはその後佐々,浅沼氏等の研究により砂糖と味噌に多発するサトウダニである事が明らかにされている。吾々も食品中のコナダニ類調査の一環として市販砂糖を検査したところ,たまたま新しい知見を得たので検査成績と併せて此処に報告する。

山梨県下鉤虫分布の地域差について—特に北富士山麓地区との比較

著者: 志村至厚

ページ範囲:P.55 - P.60

I.前言
 日本人に於ける寄生虫寄生率は恥しい事ながら世界の文明国に比し著しく高率を示していると言われている。殊に戦時中食糧不足のため,自家農園,駆虫剤の不足により蛔虫並びに十二指腸虫寄生率が非常に増加し国民保健上大問題となつている。その防遏予防には根本的,積極的な公衆衞生上の施策が必要である事は勿論であるが他面虫卵が成熟する糞便と共に排出された卵が細胞分裂を行い卵殻内に仔虫を完成するためには外界の諸条件が卵の発育成熟に好適なものでなければならない。
 一般に気温が高く充分な湿度をもつた環境に於いて虫卵はよく発育する従つて人への感染頻度も気温,湿度,降雨の頻度等の自然現象によつて強く左右される。この様な気象要素をも考慮されなければならない。又それらの気象要素と地勢,地域,環境等から比較し考察する事もあながち無駄でないと考えたので,山梨県下鉤虫分布状態,浸淫度を気象要素を指標として自然環境,農業関係等を参考として統計的に観察を試みた。

20年後の男の結婚難

著者: 水島治夫

ページ範囲:P.61 - P.63

I
 近年女の結婚難がしきりに訴えられている。それは,いうまでもなく,戦争で多数の靑年を失つたのと,若い未亡人が多くできたためである。従つて初婚,再婚を欲する女に比し,その相手となるべき独身の男が著しく少い。1950年のCensusの資料により,年令階級別に独身(未婚,離別,死別)の男女の比を見ると第1表のようである。
 但,男は年下の女と結婚する風習があるから,その年令差を便宣上5才として計算した。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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