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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生2巻1号

1947年06月発行

雑誌目次

總説

學校給食問題

著者: 齋藤潔

ページ範囲:P.3 - P.7

1.戰後の食糧事情
 戰後に於て交戰國の食糧問題が大きな關心をもたれることは當然であるが,今次大戰後のように,その影響する所が廣く且つ深刻であることは,未だ曾てその例を見ない。その及ぶところは,唯に交戰緒國ばかりでなく,殆んど凡ての國々にまで波及してゐる現状である。實に戰禍の慘状を思はせるものがある。敗戰日本に於ては,民族の生死にも關する切實なる事實として,この問題がわれ等の生活にひしひしと迫つてゐる。而も,この情勢が獨力では如何ともなし得ない實際から見て,近い將來に解決の曙光さへも見出し得ないものと覺悟せねばならない。戰前でさへも食糧の國内生産は,その必要量を充たし得ず,外地からの輸入に俟つて,その不足を補つてゐたのであるから,今日の状態を見るのは異とするに足らないであらうが,この難關が突破されない限り,民族の再建も,丈化國家の建設も,いふべくしてその緒にだに就き得ないのは明かなことである。われ等は食の問題を今日ほど身にしみて切實に體驗したことはない。
 國内で生産される食糧にせよ,また輸入食糧にせよ,食糧の必要量が充分にみたされている時代に於ては,食糧に就ては極めて無關心であつて,食生活の如きも長い間の習慣と惰性に引きづられ,食糧の消費が不合理に行はれていた。榮養學の教へる食糧の生産,及び消費の上の幾多の改革案も,また不合理な食生活に對する改善策も耳を傾けられずに過ぎ去つて,遂にこの難所を切り抜けねばならない破目に陥つている。

原著

BCG接種方法に關する研究—(接種量の問題)第2報

著者: 染谷四郞 ,   栃内寛 ,   宍戸昌夫 ,   原富平 ,   川村達 ,   工藤祐晃 ,   栃内秀衞 ,   三田禎 ,   柳克巳

ページ範囲:P.8 - P.18

I.緒言
 著者等の一人染谷1)はさきに0.05mg乃至0.4mg含有BCGワクチンを接種した初接種の觀察に於いて,接種後約3ヶ月位では其の接種量の多い程ツベルクリン反應(ツベルクリンを以下ツと略す)陽轉率は高く,強度も強いこと,又た接種BCG量が増加するに從ひ陽性率の最高になる時期が次第に早くなる傾向のあることを見,接種BCG量が0.1mg以上になるとツ反應の成績に餘り著しい差異が認められなかつた事を報告した。そこで今囘著者等は初接種者と再接種者に夫々種々なる量のBCGワクチンを接種し,その後のツ反應の推移を觀察した。その成績の概略をこゝに報告する。

資料

米國々立衞生研究所の無菌試驗用培地に就いて

著者: 小島三郎 ,   增山忠俊 ,   山本繁夫 ,   中村康平 ,   宮澤肇

ページ範囲:P.18 - P.22

緒論
 從來生物學的製劑(血清,ワクチン類)の無菌試驗に就いては檢品を一定量取り,好氣性菌用及嫌氣性菌用の培地に別々に加へて試驗して居る。好氣性菌用として普通Bouillonを,嫌氣性菌用としてはLeber-Leber-Bouillonの各50mlを數本宛用ひ之に2mlの檢品を加へるのである。
 余等は茲に米國々立衞生研究所提唱の培地を追試し發表する。

論述

米國の腸チフス死亡率と公衆衞生

著者:

ページ範囲:P.23 - P.24

 腸チフスの如きは全く非衞生的環境の許に發生するのであるから,その發生の多寡は延いてその國の公衆衞生普及の程度を示すBarometerなりと言ふも過言ではあるまい。以下米國醫學協會(American Medieal Association)調査になる米國先要75都市36ケ年の累年腸チフス發生状況調査を紹介し日本のそれと比較してみる。過去36年間米國に於ける本病が如何に顯著な減少を示して居るか全く驚歎に價する(表參照)。
 今之れを日本のそれと比較する時尚ほ一層その感を深める。例へば昭和20年(1945)に於ける日本の状態は米國の1914年(大正3年)頃の状態に相當し,腸チフス死亡者數に關する限り日本は約30年遲れて居り,尚お1944年度に就て比較すれば米國は日本の6分の1と言ふ驚威的な数字を示してゐるではないか。而かも日本では本戰爭間腸チフス患者の大増加を見たに反し米國では累年減少して居り何等戰爭の影響は認められなかつた。1945年度には米國の腸チフスは全部散發的發生であつて爆發流行の例は一もなかつた。又た前記75都市中40までは腸チフス皆無であつた。

傳染性疾患の防渇—食中毒(第3囘)

著者: 早川淸

ページ範囲:P.24 - P.29

食中毒:細菌性中毒
葡萄状球菌
1.本病の認知
 本病は感染ではなく中毒であつて發病は急激である。時として強烈な嘔氣,嘔吐,及び蓑弱を招來し激しく始つて來る強い下痢を伴ふものもある。確實な診定は疑はしい食品より葡萄状球菌を分離しその濾液を特志志願者に飲ますか,或は小猫に注射するかして毒性を證明するにあるのみ。

公衆衞生監視員の記

著者: 玉城仁

ページ範囲:P.30 - P.34

 敗戰後道義心の極度の敗退にともなひ相互の信頼感が薄くなつてゐる今口,殊に食品營業者が往々その害毒を世に擴げ,少からず人命を失はしめてゐることは誠に歎かはしい限りである。日本で初めて設けられた公衆衞生監視員が,東京では食品衞生に重點をおいたことはもつともなことである。
 私は満洲引揚者として失業状態にあつた時代東京の公衆衞生監視員に採用されで2ヶ月を経た。施設の完壁よりもむしろ食品營業者の道義心の昂揚も指摘しつゝおこなつた監視業務を通じて得た經驗が,將來この種業務の参考になれば幸である。

コレラの治療(Formar American Red Cross Correspondent in India. From Science News Letter)—GHQ CIES 特別提供

著者: ,   森島

ページ範囲:P.34 - P.36

 人類の罹る最も古く,且つ最も多く死亡者を出す流行病の一つであるコレラに對し,完全な治療とは如何なるものであるかという發見が,印度のカルカッタ市における本病流行中に行はれた實驗で,米國海軍の疫學者によつて成し遂げられた。
 毎年大流行する印度,中國,ビルマ,セイロン,フィリツピン等に駐在する數千の人々に對し豫防的手段が始められ,其の實驗の結果は醫學における新たな一歩前進といふことになつた。此の恐るべき疾病には以前から,ただ豫防接種のみはあつたが,それは確かな火消しをする豫防法ではなかつた。現在は血漿やサルファダイアヂン等の適當なる使用により,最早コレラで死ぬといふことはないとの知識を得たのである。

公衆衞生學講座・5

衞生統計學—第2講

著者: 久保秀史

ページ範囲:P.37 - P.41

 衞生統計學は前囘にも書いた様に,統計的衞生學がその本來の目的であるが,こゝでは統計的衞生學を作る手段としての統計方法,即ち統計學のごく初歩を,そして,今までの統計書にあまり書いてない事柄について述べる。詳しいこと,不充分なところは,既刊の統計書を見て頂きたい。

保健所のペーヂ

乳製品配給量に關する一調査

著者: 酒井威

ページ範囲:P.42 - P.45

 戰爭に由來する食糧不足の下に,萬民齊しく窮乏に耐へつゝあるとは雖も,乳兒食料の缺乏が成人の夫れとは比すべくもなく由々しい重大事であるのは言う迄もない。食糧事情が漸次好轉しつゝあるけれ共,尚お當分は配給制度も續行されると考へる故に,更に改善法を討究するのも徒勞ではない。偶々牛乳乳製品の適正公平な分配を期して,區長と保健所長との協力を以て某區内の母乳不足乳兒に就て,一齊に發育調査を行ひ,從來の配給割當量と實際の配給量と,而して今囘の檢査に基いて決めた必要量(各診察醫による)の三者が,各乳兒毎に分明したので,當該區保健所に於て之を整理綜合し,その結果を略記考按する。
調査對象:區内に居住する人工榮養及母乳不足の全乳兒及び乳製品を希望する1年2ヶ月迄の發育不良兒

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情報

ページ範囲:P.46 - P.47

通牒
腸チフス豫防接種に關する件
(厚生省,豫發第302號縣知事宛)
 本年の腸チフス豫防主要對策の一として,豫防接種を廣範且つ徹底的に行ひたいと考へ,先頃から新菌株によるワクチンの生産竝びにワクチンの嚴重な檢定の具體化につき努力して來たが,この程漸く見通しがつき,腸チフス豫防接種計畫を左の通り決定したので,各地方に於ては,本計畫に基て至急具體的計畫を樹立し,其の實施に遺憾の無いようにせられたい。尚實施に當つては國民に對し本計畫の重要性について充分理解の上,洩れなく注射を受けるやう啓蒙普及に努めると共に,不測の障碍の起らぬよう充分慎重に行はれたい。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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