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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生2巻3号

1947年08月発行

雑誌目次

原著

榮養調査より見たる昭和21年度わが國國民榮養状況

著者: 大礒敏雄

ページ範囲:P.109 - P.120

 私は本誌第1巻第1號に榮養調査の方法と,之による厚生省の榮養調査に就き述べ,昭和20年12月東京都のみについて行はれた成績と昭和21年2月大阪,名古屋,福岡及呉の4大都市竝に19府縣の成績を報告したが,其の後,同調査は,引績き昭和21年5月,8月,11月にも行はれ,本22年も亦同様な月に行はれる豫定で,既に2月,5月には調査を完了した。此處に昭和21年1ケ年間の成績が纏つたので報告することゝした。
 同年5月からは,都市では新たに札幌,仙臺,金澤,松山が加へられて,合計9大都市,調査對象約78,000名に擴大され,(内攝取量調査對象約7,700世帯,35,000名),農村では,新たに加へられた都市を園む地域が増加したので,總計27都道府様に及び,調査對象は約76,000名となつた。(内攝取量調査對象約7,600世帯,48,000名)。其の他北海道,福島,福岡の炭礦と秋田の鑛山,之等の調査對象は約8,700名(内攝取量調査攝象816世帯。4,700名),それに東京都居住の鐡道從業員1,200名(内攝取量調査對象114世帯,630名)の特殊調査があるので,此の榮養調査の總調査對象は,毎囘約164,000名に達し,攝取量調査は約15,000世帯83,000名に及んで居る。

ビタミンC缺乏早期發見法に關する研究—特にビタミンC飽和度の標示としての血漿内ビタミンC量に就て

著者: 中川一郞 ,   大口ちか子

ページ範囲:P.121 - P.126

 ビタミンC(以下V. Cと略記)飽和度判定の標示として,血液殊に血漿内V. C量の測定は,尿中V. C定量,インドフェノール皮内反應等と共に廣く用ひられて居る所である。著者及び共同研究者等も,此の方法の判定法としての價値竝に前述の他の判定方法との關係に就て,既に幾度か考察を行つて居る。今囘はV. C抗與による血漿内V. Cの動搖に就て,更に詳細に檢討を行つて見た。尚,V. C飽和度判定の目的には從來還元型V. Cの定量が行はれてゐるが,著者等は同時に酸化型V. Cの定量をも行ひ,V. C抗與と之の動揺との關係をも追求した。尤も本實驗より以前に,既にPlant及びBülow1)はV. C抗與と還元型,V. C酸化型との消長に就て報告して居り,それによると血漿内には普通には還元型V. Cを認めざるも,V. C負荷後の増量は大部分還元型V. Cであるというて居る。
(1)Plant, F., aud Bülow, M.:Z. f. physiol. Chem., 236:241, 1935.

資料

炭素粉末の結核菌發育促進作用について

著者: 益子義敎 ,   張仲鑲 ,   西岡芳子

ページ範囲:P.127 - P.132

 素炭粉末を固形結核菌培地に加えた場合に,結核菌の發育が著しく促進されること,殊に寒天斜面培地に炭素粉末を加えた場合,誠に驚く程の發育促進作用が見られる事實を發見した。

愛知縣海部郡に於けるマラリヤの疫學的研究(第1報)

著者: 河瀨久男 ,   船橋達郞

ページ範囲:P.133 - P.137

1.緒言
 現在我國はマラリヤ問題に於て前大戰後のヨーロッパの如き危險にさらされてゐる。然も海部郡は我國有數の有瘧地である。然るに從來之に對する全般的の調査もないので,著者は風土マラリヤの數的調査を保健所業務の一部として始めた。

論述

これからの學校衞生

著者: 野津謙

ページ範囲:P.137 - P.141

1.緒言
 新憲法が制定せられ,新らしい國會が開かれて,文化國家建設に向つてあらゆる手段がとられつゝあるが,結局は教育の力に俟たなければならない。教育界には六三制が採用せられ,教育の民主化が叫ばれ教育の實踐即ち教授,學習,訓練,養護等の綜合的指導に就ても,大反省が行はれっゝある。一方保健衞生の立場より學校の現状を觀察すれば,衞生環境に於ても,學童の體位に就ても頗る寒心すべき状態に置かれてゐる。
 之れが對策としては文部省に於ても,學校施設,衞生教育,學校給食等に重點的な努力が拂はれつゝあるし,教育者の中にも,學校衞生に熱心なる人々が力強い雰圍氣を作りつゝある。私は以下之からの學校衞生の具體的諸問題に就て愚見を述べて見たい。

保健所の強化と今後のあり方

著者: 倉持恭一

ページ範囲:P.141 - P.145

 先に「インターン」制度の確立に伴つて醫育の面にも積極的役割を果すことになつた保健所は,1947年4月7日附連合軍総司令部よりの厚生省に對する覺書『保健所機能の擴充強化に關する件』によつて,更にその活動分野が擴充されることになった。
指導機關として相談事業に專ら努力して來た保健所は,公衆衞生の向上及び増進に必要のある結核,性病,歯科疾患、等の治療を行ふことゝなり,更に都道府縣知事の職權に屬する公衆衞生についての行政事務をも處理することになつたのである。尚お新憲法實施に伴つて,從來警察で處理してきた衞生事務は或は都道府縣知事に,或は市區町村長に移管され,そして前者は保健所の整備をまつてこれに委任することになつたのである。即ち

結核の家族感染に就て

著者: 前田鍵次

ページ範囲:P.145 - P.151

 臨牀家が結核感染の樣相を實際に就て觀る場合,一面急性傳染病を想はす様な蔓延状態があると共に,他面恰も非傳染性疾患の樣な外觀が認められる場合もあることは,少しく此點に注意する時經驗される處である。一般に病源體が體内に侵入し感染發病を來すには,病源體を提供する感染源之を媒介傳搬する感染徑路,及びその侵入で發病する様な感受性ある個體,この三者が必須の要素で其の何れを缺くも感染は起らぬ。從つて結核感染に關し明確な概念を得るには個々例に就き3要約各々の諸條件を明かにする事が必要となる。結核感染を臨牀家として考究するに最好適な材料をとりうるは家族内感染で,此の際の經驗が一般的に室内感染の他の場合を察する基本となり得やう。下述調査の材料は余が概ね名古屋市牧野保健所にて,西區と中村區の概ね中流以下家庭につき昭和15年春より19年秋迄に得た所に係る。
 結核の家族感染率が如何に高いかは先人の反覆指摘せる處で,特にその乳幼兒への影響は極めて深甚なものがある。余の經驗によれば結核負因ある乳幼兒313名の「ツ」陽性率は55.9%,發病率は26.8%で,負因き789名(外來)の名々10.0%,4.2%に比し5-6倍の高きに達してゐる。乳兒335中「ツ」陽性は26名で其中22名に負因を認めた。負因を有する4-7歳151名の「ツ」陽性率66.2%,發病卒29.1%は,中村區の3幼稚園兒810名の夫々14.1,1.1なるに比し著しい相違を示してゐる。

ミシガン州公衆衞生計畫—(GHQ, C. I. E. S.)特別提供

著者: ,   重松

ページ範囲:P.151 - P.153

 1946年7月のある暖い日の午後,ミシガン州ハイランドパークの地方衞生官から州衞生局防疫官F. S. Leeder博士に,腸チフス患者3名と容疑者數名が發生した旨電話があつた。今世紀のはじめごろは,當州も年5000名の腸チフス患者が發生していたが,牛乳及び上水檢査の改善と,豫防接種の普及によつて,患者は漸次減少し,1945年には45名の最低記録を示すに至つたのである。そこでLecder博士は,この3名の新患者は保菌者から傳染したもので,傳染源を速かに發見することによつて患者の發生を局限し得るであろうと輕く考えた。ところが,それから1時間とたたない内にデトロイト市においても4名の腸チフス患者が發生したとの電話をうけた。そこでFeeder博士は心配になつてきた,遠くはなれた2地區で患者が發生したとなると話が簡單ではないからである。
 直ちに患者の感染經路が調査せられたが,その結果,犠牲者のすべてがある結婚被露宴のお客であることが判つた。それから數時間以内にLeeder博士は州内12地方にわたる210名のお客の名簿を手に入れるとともに,宴會が教會で催され,5人の婦人が調理と給仕に當つたことを知つた。あとは簡單であつた。この5人の婦人は直ちに隔離せられるとともに,檢便が行われた。お客の名前は金部その地の衞生官に通知せられ,監視をうけることになつた。檢便の結果,教會の5人の婦人のうち1人が保菌者であることが判明した。

公衆衞生學講座

衞生統計—第3講

著者: 久保秀史

ページ範囲:P.154 - P.159

4.製表
 表を作るときの注意は詳しく言へば相當あるが,殆んど常識的のことである。要は分り易い,正しい表を作ればよい。又,表には必ず簡潔にして,充分な標題を付けることを忘れてはいけない。

保健所のペーヂ

結核感染學童の疫學的研究

著者: 成田充徳

ページ範囲:P.159 - P.165

第1章 緒言
 所澤保健所に於て昭和21年8月6日管内の某國民學校に「ツベルクリン」反應檢査を施行した所,著明な學級感染の1例を發見し,其の感染源の追求及び同様の結核感染學童の疫學的調査を昭和21年11月より翌22年2月に亙り行つた。その成績を抄録する。
 當國民學校の學區は埼玉縣所澤町に昭和19年に合併された農村で,東西約4粁,南北約5粁,人口6077人,戸數1099戸(昭和21年調)を有し,舊所澤町に隣接の第1區より第5區までの5地區に分たれてゐる。

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新刊紹介

ページ範囲:P.165 - P.166

 最近米國公衆衛生に關係のある新刊圓書として進駐軍日比谷圃書室に陳列,一般に公開せられてゐるものに次の様な書がある。
 1.Public Medical Care(公衆看護法):Frane Goldmann, M. D, Columbia大學書出版部1945.

最新の文獻

人に於ける牛結核に就て/補髄結合反慮上より觀たる發疹チフス及び發疹熱リケツチア群の血清學的關係に就いて

著者: 蘆原

ページ範囲:P.166 - P.169

 1902年に人類よりRavenelが最初に牛結核菌を分離してから,Griffith,Jensen,Lange,Hedvall,等によつて研究が進められて肺結核,淋巴腺結核,急性粟粒結核,結核性腦膜炎,濕性肋膜炎腹膜炎,骨關節炎,等を起すと云ふ事が現に立證された今日,又たHedvallの報告によれば牛結核は家畜より人に,人より家畜の接觸と牛乳により感染すると云ふ事も確認された現在の牛結核菌に對する被害の豫防は重要である。
 今日の米國に於ては米國獸醫界が牛結核豫防と治療に勵んだので,牛結核に感染せる家畜は,総頭類の0.2%に近接しつゝあつて公衆衞生上喜ぶべき状態にある。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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