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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生20巻1号

1956年07月発行

雑誌目次

綜説

新しい感染症(1)—現地疫学の立場から

著者: 松田心一

ページ範囲:P.1 - P.23

(この論文は昭和31年4月3日九州大学に於て開催された第30回日本伝染病学会に於ける特別講演内容を更に加筆補填したものである)

疫学調査の方法—特に流行調査について

著者: 宮入正人

ページ範囲:P.25 - P.34

疫学調査とは
 疫学調査というと食中毒や伝染病の所謂集団発生が起つた時にその伝播経路とか,伝染源をきめる調査であると,一般に考えられている。しかしこのような疫学調査は,疫学調査の中の特殊な場合であつて正しくは流行調査(Epidemic survey)と呼ぶものである。勿論この流行調査の原則は一般の疫学調査のそれと根本的に変るものではないし,ここでは流行調査の方法とそれに伴う手技を述べるつもりであるが,その前に疫学調査の一般論とでも云うべきものをはじめに簡単に述べて,以後に述べる流行調査が疫学調査の中,どの様な位置にあるかを予め明らかにしておきたい。
 「疫学は公衆衛生の診断学(Diagnostic discipline, Gordon1))である」と云われているが,その理由は先ず第一に現在直面している問題の重要性をはつきりと知る為である。重要性を測る示標として死亡数,患者数,或は感染者数等が用いられるが,これ等から致命率(Death),後遺症発現率(Defect),或は又正常活動不能者数(Disability)或はその期間等をその疾患の質的な示標とし,その様な疾患がその社会に現在どの位存在しているか,又1カ年なら1カ年という単位期間内に新しくこの疾患になる人々がどの位あるかを量的な指標とし更にこれ等がどのような時間的経過を辿るであろうか等を他の疾患と比較して公衆衛生上の重要性を確認する事である。

炎症の微小環境メチニコフ説の改訂

著者: ,   田多井吉之介

ページ範囲:P.35 - P.43

 1883年Odessaの医者と自然科学者の仲間を前に行つた「生体の治癒力」と名づける講演で,Metchnikoffは白血球を「敵に突撃する軍隊」にたとえた。かれは「喰細胞」という言葉を創造して,白血球は取込んだ微生物を消化できるとのかれの信念を,(感染に対する防禦力に不可欠であると考える1つの力を)表現した。Metchnikoffはさらに炎症のプロセスに関する個人的な解釈を発展させ,フランス語で1892年に,また英語で1893年に出版されたかれの「炎症の比較病理学に関する講述」で,これを一般的な生物学の学説として表明した。最初の講述の冒頭は生物の組織体の「最も特有な像は攻撃と防禦を行う器官にある」との言葉に始まる。「寄生物は有毒あるいは溶媒物質を分泌して突撃を試み,その宿主の消化および撃退作用を麻痺させて,自らを保護するが,他方宿主は侵略者を破壊し,消化して体外へ排出するし,周囲をとりまく分泌物によつて自らを防護する。」活動性の侵略から感染に至るまでには,ごく短いステツプがあるだけであるとMetchnikoffは信じていたので,炎症性細胞の活動は微生寄生物からからだを保護する目的をもつものと,かれが考えたのも当然であつた。
 Metchnikoffは病理学者でも医者でもなかつた。かれが最初に喰細胞説を樹立した時には,高等動物と人間の病理学的プロセスについては殆んど知らなかつたので,すぐに真向から批判の的となつた。

医療保障の問題点—いかにして医療保障制度を確立せしむべきか

著者: 近藤文二

ページ範囲:P.44 - P.47

1.医療保障と国庫負担
 「社会保障」という言葉ほど世間でよくつかわれながら,しかも,その内容がはつきりとつかまれていない言葉はほかには余りないであろう。
 健康保険が赤字になつたというので保険料を引上げようとすると,それは余りにも「保険」に囚れすぎている。健康保険はすでに「社会保障」の一環となつているのだから,金が足りなければ国庫で負担すればよい.こうした考え方で応々にして「社会保障」という言葉が使れているようである。つまり,何でも国が費用を負担して無償で生活が保障されるのが「社会保障」だというわけである。いかにも「社会保障」という言葉はイギリス人の好んでつかう「ゆりかごから墓場までの最低生活の保障」という意味をもつている。またわが国の憲法第25条が「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定め,かかる権利を守るための手段として社会保障の向上と増進をうたつている場合も,およそこれと同じ考え方からきているといつてよい。しかし,そうだからといつて,「社会保障」とは国がすべての費用を負担するという意味の制度であると簡単に理解してよいであらうが。イギリスのように,社会保障制度が完備している国でも,社会保障の費用の約半分は国民が払こむ保険料で賄れているのであつて,残りの半分でけを国が負担しているに止つている。ただし,医療に関するものだけをぬき出すと,その費用の90%までは国が負担している。

研究報告

ジチゾンを用いる組織中放射性亜鉛Zn65の抽出法

著者: 佐藤德郞 ,   福山富太郞 ,   山田美恵子

ページ範囲:P.48 - P.49

 放射能魚中に放射性亜鉛Zn65の存在することは岡野河端(1),高瀬(2)等によつて明らかにされた。その方法はイオン交換樹枝法で,材料はビキニ海域より採取したものに止まり,他の海域の汚染魚の間にもZn65が分布しているか否かは明かでない。
 また原子爐が日本に建設されるようになれば当然Zn65も問題になる可能性が強いと考えられる。

麻疹罹患率とその条件

著者: 今井清 ,   兒玉光栄 ,   松本幸久

ページ範囲:P.50 - P.53

〔緒〕
 従来から麻疹を経過しないものは,麻疹患者に接すれば殆んど必ずと言つてもよい位感染発病する様に考へられて来た。この点について昭和28年の流行に際し若干疑義のある事例に気付き既にその一部は発表1)2)したが更に麻疹罹患の条件につき色々の問題を各方面から比較検討を試みた。

最近に於ける集娼の梅毒蔓延状況についての調査

著者: 田中英

ページ範囲:P.54 - P.55

 最近,梅毒(殊に新鮮梅毒)は著しい減少を示しており,独り当院だけではなく,どこの臨床面でも同様のことが報告されている。
 そこで,最も大きな感染源又は感染中介者としての集娼に於ける梅毒の蔓延状況を調べてみた。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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