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綜説
疫学調査の方法—特に流行調査について
著者: 宮入正人1
所属機関: 1国立公衆衛生院疫学部
ページ範囲:P.25 - P.34
文献購入ページに移動疫学調査というと食中毒や伝染病の所謂集団発生が起つた時にその伝播経路とか,伝染源をきめる調査であると,一般に考えられている。しかしこのような疫学調査は,疫学調査の中の特殊な場合であつて正しくは流行調査(Epidemic survey)と呼ぶものである。勿論この流行調査の原則は一般の疫学調査のそれと根本的に変るものではないし,ここでは流行調査の方法とそれに伴う手技を述べるつもりであるが,その前に疫学調査の一般論とでも云うべきものをはじめに簡単に述べて,以後に述べる流行調査が疫学調査の中,どの様な位置にあるかを予め明らかにしておきたい。
「疫学は公衆衛生の診断学(Diagnostic discipline, Gordon1))である」と云われているが,その理由は先ず第一に現在直面している問題の重要性をはつきりと知る為である。重要性を測る示標として死亡数,患者数,或は感染者数等が用いられるが,これ等から致命率(Death),後遺症発現率(Defect),或は又正常活動不能者数(Disability)或はその期間等をその疾患の質的な示標とし,その様な疾患がその社会に現在どの位存在しているか,又1カ年なら1カ年という単位期間内に新しくこの疾患になる人々がどの位あるかを量的な指標とし更にこれ等がどのような時間的経過を辿るであろうか等を他の疾患と比較して公衆衛生上の重要性を確認する事である。
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