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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生21巻1号

1957年01月発行

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アンケート

公衆衞生は黄昏か?(1)—関係者のアンケートにさぐる

著者: 楠本正康 ,   聖成稔 ,   佐藤徳郎 ,   勝木新次 ,   渡辺義雄 ,   井上善十郎 ,   石垣純二 ,   水島治夫 ,   石橋卯吉 ,   佐藤恒信 ,   豊川行平 ,   館林宣夫 ,   原島進

ページ範囲:P.30 - P.46

 最近公衆衛生の危機が叫ばれている折から,本誌に別項の如く熱心な一保健所医師の手紙が寄せられた。本誌ではこの手紙を厚生省をはじめ,公衆衛生行政官,公衆衛生学教室責任者など,およそ公衆衛生の将来に重大な関心を持つ要路の人に提示してその意見を求めた。小沢医務局長,山口公衆衛生局長,曾田公衆衛生院次長(前医務局長)などからは次号に責任ある回答が寄せられることになつている。読者諸賢で,これについての御意見があつたら長短は問わないから是非寄せられるよう御願いする。

綜説

新しいウイルス病—ウイルス学の立場から

著者: 福見秀雄

ページ範囲:P.1 - P.7

 Hans Zinsserの "Rats, lice and history" という題名の著述は発疹チフスのlife historyを扱つたものと副題をつけられているが,その内容は発疹チフスに限らず一般に人類に大なり小なり惨禍をもたらして疾病史に強い刻印を残した流行病のbiographyである。そこには流行病,伝染病がその誕生からはじまつてその成長,成人の過程が著者のユニークな眼を通して眺め語られている。生物が,人類が,進化発展する如く伝染病もまた進化し,生長し,変貌し,盛衰するのである。
 この意味で勿諭ウイルス病もまた新生し,変貌しているかもしれない。併しながら新しいウイルス病と言う場合,我々はこの様な意味での新生ウイルス病を意味することは珍らしい。今から10年程前,即ち昭和23年の初春に我が国では全国的に伝染性下痢症の流行があつた。この病気は当時甚だ珍しいものとされ,我が国ではそれまでなかつたものとして奇病などと言う名前も頂戴したのであるが,既にその2年前にアメリカでは若干の流行をみていたのである。アメリカでそれ以前にこの病気がどうであつたかについては多少の推論はあるが明確なところはわかつていない。随つて伝染性下痢症がそれ以前にいかなる歴史を持つていたか,それが新生ウイルス病としていつ登場してきたかについては勿諭何ら判然するところはない。

新しいウイルス病の臨床

著者: 北本治 ,   館野功

ページ範囲:P.8 - P.21

まえがき
 「新しいウイルス病の臨床」という題の求めによつて,以下それに関する2〜3の記述を試みる。
 コクサツキーウイルス病,非麻痺性ポリオ,伝染性下痢症,原発性異型肺炎,オーム病,APCウイルス病(仮称)等について,現段階における粗描を行い,公衆衛生的活動の一助になるようつとめたつもりではあるが,かなり教科書的な記載になつたのでその点読者の御叱正をうけるかもしれない。御諒承を願いたい。

最近のウイルスの話題—タバコモザイク・ウイルスの再構成

著者: 松本稔

ページ範囲:P.22 - P.29

 ウイルス学の多くの最近の話題の中から,タバコモザイク・ウイルスの再構成の問題をとりあげてのべてみたい。これはウイルスの本質的なものにふれていると思われるからである。
 ウイルスの中でその粒子の化学組成や構造のもつともよく研究されているのはタバコモザイク・ウイルス(TMV)である。よくしられているように,このウイルス粒子は直径15mμ,長さ300mμの棒状のもので,蛋白質とリボ核酸(RNA)とからなつている。このような粒子がひとたび感受性細胞にであうと,細胞内に侵入し,増殖し,もとと同様の多数のウイルス粒子ができてくるわけである。ウイルス粒子の発揮するこのような機能と,ウイルス粒子の構造との関係は,ウイルスの本質をつく大問題である。StanleyがTMVの精製結晶化に成功し,ウイルスの研究に新しい道をひらいて以来,この問題は,Stanleyをもふくめて,多くの研究者の興味の中心であつた。

原著

先天性股関節脱臼ならびにその準備状態の分布について—主として乳幼児股関節間接撮影検診に関する検討

著者: 今田拓 ,   田中一雄

ページ範囲:P.47 - P.53

1.はじめに
 東北地方の文化に恵まれない農漁村の生活は因襲久しきに亘つた特殊な道徳と植民地的未分化な社会組織,そして貧困ということが加わつてもたらされたものであろうが,宮城県衛生部がこれの改善を意として昭和23年母子衛生指導模範地区事業なるものを,県単独に開始したことは慧眼というべきであろう。
 この仕事に対して,はじめは東北大学小児科教室がその専門的な立場から協力し,乳幼児検診を主体とした養育指導をおこなつた。23年には丸森町のみであつたが,24年には5ヵ町村,25年には10ヵ町村,26年以降は15ヵ町村と漸次その指定地区を増しているが,26年よりは,東北大学整形外科教室も協力して検診をおこなつた。勿論この仕事は母子の福祉を目的とした仕事であるが,一方専門的な新らしい発見を得たことも興味をそそつた。最近ではこの事業が育成医療と密接な関係を保ちつつ,母子のために大きな福祉を投げかけていることは悦ばしいことである31)17)18)

鉤虫Carrierの臨床的研究(第3報)—鉤虫寄生の農民労働力に及ぼす影響

著者: 石崎達 ,   佐藤澄子 ,   久津見晴彦 ,   小林昭夫 ,   安田一郎 ,   小宮義孝

ページ範囲:P.53 - P.58

1.はしがき
 農民の作業能力が鉤虫寄生によつて影響をうけるだろうという予想は当然のことである。
 そこで我国に於ても鉤虫を保有する農民を対象とした種々の体力テストが行われて来た。妹尾(1950)は病院外来又は入院の患者をしらべて血色素量60%以下の貧血のある者に著しい循環機能の変化と作業能力の低下をみとめた。しかし所謂Carrierと呼ばれる人達を対象とした竹内(1952),富士田(1952),小宮(1953),柳沢(1954)等の研究によれば作業能力の低下は全く認められないか,又は軽微であるという。しかし柳沢(1954)によると鉤虫保有者群にSchneider test及びマラソン負荷試験の成績低下がみとめられ,富士田は農作業負荷による疲労が保有者では強度であること証明した。

多槽式屎尿処理槽の研究(第2報)

著者: 木村道也

ページ範囲:P.58 - P.62

 屎尿を肥料として用いている他町村迄舟で運搬していた岡山県都窪郡茶屋町に,第1図のものを汐入川にそつてこれに脱離液が放流出来るように設置された。
 先ずその大要を述べると,各槽の容積は次のようである。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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