公衆衛生21巻1号

1957年01月発行

原著

先天性股関節脱臼ならびにその準備状態の分布について—主として乳幼児股関節間接撮影検診に関する検討

著者： 今田拓¹ 田中一雄²³

所属機関： ¹東北大学整科外形 ²東北大学整形外科教室 ³宮城県白石保健所

ページ範囲：P.47 - P.53

1．はじめに
　東北地方の文化に恵まれない農漁村の生活は因襲久しきに亘つた特殊な道徳と植民地的未分化な社会組織，そして貧困ということが加わつてもたらされたものであろうが，宮城県衛生部がこれの改善を意として昭和23年母子衛生指導模範地区事業なるものを，県単独に開始したことは慧眼というべきであろう。
　この仕事に対して，はじめは東北大学小児科教室がその専門的な立場から協力し，乳幼児検診を主体とした養育指導をおこなつた。23年には丸森町のみであつたが，24年には5ヵ町村，25年には10ヵ町村，26年以降は15ヵ町村と漸次その指定地区を増しているが，26年よりは，東北大学整形外科教室も協力して検診をおこなつた。勿論この仕事は母子の福祉を目的とした仕事であるが，一方専門的な新らしい発見を得たことも興味をそそつた。最近ではこの事業が育成医療と密接な関係を保ちつつ，母子のために大きな福祉を投げかけていることは悦ばしいことである^{31）17）18）}。