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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生21巻10号

1957年10月発行

雑誌目次

綜説

人口の老化は危険か

著者: 舘稔

ページ範囲:P.1 - P.7

 わたくしに与えられた課題は,"人口の老化は危険か?" ということである。この課題について問題となるのは,"人口の老化"とは何かということと,"危険"とはどういう意味かということである。

ケース研究の仕方

著者: 土井正徳

ページ範囲:P.8 - P.13

1.ケース研究の意義
 ケースCaseつまり,ある問題例というのは,いろいろの学問的および実際的領域にあるものであつて,医学的領域にあつては症例であり,裁判領域においては判決例すなわち判例である。症例や判例がいかにその学問および実際領域において重要なものであるかということは,その方面に関して知識をもつている人ならば,充分知つているところであろう。同時に症例研究や判例研究がいかに大切なものであり,理論的面においても実際的面においても,広く深くおこなわれていることはまた,多くの人の知つているところにちがいない。医学教育でおこなわれている臨床講義というのは,立派な系統的な症例研究であり,すべての基礎医学の知識と実習とを背景とした臨床医学の学習の実際的基礎というものは,臨床講義すなわち症例研究にあるといつても,いいすぎではないであろう。判例研究も同様の教育価値がおかれているものであつて,ことに英米の司法的法律教育の基礎は,判例の具体的研究にあるといわれる。独逸法の大きな支配下にあつた日本の司法領域における判例研究も,この英米流の系統的な判例研究の方法をとり入れてきているというのが,現在の進歩的な傾向であるということができよう。その傾向がもつとも著じるしく,全体的傾向となつているのは,少年法における少年保護領域である。しかし,成人の刑事事件におけるその傾向にも,大いに尊重すべきものがあることを忘れてならないものがある。

腐敗

著者: 宮木高明

ページ範囲:P.14 - P.23

腐敗のなりたち
 腐敗と名づける現象は微生物の侵襲と繁殖とによつて,有用な資材が変質することである。それ故に経済上の損失を招くのも当然の帰結である。
 腐敗のなかで,最も生活的な関心を抱かれているのは食品の場合だが,その理由は他の資材に較べれば,まず短時間で腐敗し,官能的な―ことに嗅覚や味覚のように,かなり鑑別性があつて,誰でも用いうる―方法で変質の起つていることを生理的に訴えさせるためと考えられる。この変質が生理的に反撥されるものであることはたしかであるが,どのような毒性をもたらすものかについては意外にも科学的な検討が鋭く加えられていなかつたのである。

調理とビタミン

著者: 元山正

ページ範囲:P.24 - P.27

 ビタミンという言葉はもう子供でもよく知つているようになつたが,栄養素のビタミンとしてよりも栄養剤即ち薬品の形になつたビタミンの方が頭に入つてしまつたのではないだろうか。ビタミンが栄養素である以上食品からとるのが正して型であるべきで,薬品の使用は食品からとるビタミンの不足している部分を補うのが正しいのではないだろうか。
 この食品にはどれだけのビタミンが含まれているだろうかという問題は殆んど終り,既に食品成分表に示されているが,ではその食品を調理した際には,ビタミンはどの程度こわれるのだろうかということがもう一つ問題となつて来る,ところが実際には調理法は数多くあり,又食品によつても取扱い方が違つて来るのであるから,簡単にこれを解決することは困難である。この問題については各研究者が多くの報告を出し,又現在でも行われつつあるので,段々と解決されて行くことと思うが,今回はその内の幾つかを紹介しておきたいと思う。

公衆衛生座談会

保健所の在り方を語る(1)

著者: 橋本道夫 ,   大橋誠 ,   箕輪真一 ,   江崎広次 ,   鎌田昭二郎 ,   前田和爾 ,   小西恵美子 ,   石垣純二

ページ範囲:P.28 - P.37

保健所の在り方を語る
 保健所の実習を終つた公衆衛生院正規医学科コースの学生の方々に集つていただき,現在の保健所に対する素直な意見をぶちまけてもらう事にした。学生の意見はあまりに理想に走り過ぎるかもしれない。しかし理想の地点から現実をふり返つて見る事は,現在の保健所にとつて,決して無駄な事ではないだろう。司会は石垣純二氏にお願いし,厚生省保健所課の橋本道夫氏には保健所行政の広汎な視野からの示唆を御願する意味で出席していただいた。

原著

北陸地方における都市事務系職員の体力測定成績

著者: 岡崎康夫

ページ範囲:P.39 - P.45

Ⅰ.緒言
 職業別による体格体力及び身体機能の実状並びにその特徴については,古くから内外多数の研究業績の報告があり我が国においては石川,奥山,八木,福原氏等の研究を始めその他枚挙に遑のない程であるが,戦後この方面の業績は今野,石井,金子氏等の報告があるのみである。体力の研究は過去に幾多の業績はあるがなお未解決の問題もあり,また世代の変化と共に常に研究されるべきものと筆者等は考えており,特に体力の運動能力面における研究の甚だ乏しい事を遺憾に思い我々の研究室では昭和27年以来運動能力をも含めた広い年令層における職業別体力の研究を行つて来た。曩に筆者等の一員である卯野1)は北陸地方における農村住民の体力測定の成績につき報告したが,茲には北陸地方の都市事務系職員の体力測定を行い得たのでその結果を報告する。

生体の負担より見た農業労働改善の目標

著者: 大石省三 ,   山田淳

ページ範囲:P.46 - P.48

緒言
 先に著者1)は農民の生活時間分析より従農時間の生理的限界,理想的標凖,当座の指標,危険度限界を男10,7,9,13,女7,4,6,11時間としたが,これの現行作業慣行下に於ける生体の負担,生理的適正耕地規模と経済との関係を概略検討する。

榮養改善が身体並に精神状況及び機能に及ぼす影響について

著者: 佐伯芳子 ,   佐伯篤 ,   奈良一成

ページ範囲:P.49 - P.52

1.緒言
 栄養改善の実行が,摂食者の身体並びに精神状態のみならず,その機能にいかなる影響を及ぼすかを知るために,警察寮における栄養改善の時に於いて,従来行われていたような身長,体重,病気日数等のみならず,生物学的方法を用いて,同一人について,生体の状態及び機能の両方面より各種の調査を行い,改善前と改善後並びに他寮の人との比較を行つた。

警察寮の栄養改善について

著者: 佐伯芳子 ,   佐伯篤 ,   奈良一成 ,   郷原巖 ,   風間芳男 ,   佐藤忠三 ,   鈴木康夫 ,   松崎正輝 ,   岩井博美

ページ範囲:P.54 - P.60

Ⅰ.緒言
 ○○警察○○寮居住の警邏隊所属の警察官よりの患者発生率(特に胸部疾患)は他の寮に比し高率であり,これの原因の1つは栄養状態の不完全にあると考えられたが,確実な数字的根拠がない。
 故に,現状を調査し栄養学的見地より検討し,もしその点に於いて欠陥が認められた場合に於いては栄養改善を実施する目的をもつて調査を行い,又,警邏隊員という,身体的並びに精神的に重労働であり,同時に極めて不規則で,且つ,日々に変動する生活様式を有する人々が,同一寮内に起居し,同一食事を摂取するという条件の下に於いて,経費を引上げることなく(出来得れば更に低減し)果して各人の要求量を過不足なく満し,これにより各人の身体並精神的状態及び機能の向上の実を挙げ得られるか否かを知るために本研究を行つた。

新潟県農山村に於ける年少労働力の使役とその対策

著者: 手島知明

ページ範囲:P.61 - P.63

 現在の農山漁村の貧しさ,封建的な親の意識の低さが,子供達を過度の家事労働に追い込み,生産活動に従事させている。それらが学童のくらしや,体力に対し,具体的にどの様な影響を与えているかについて,われわれは深い関心を払わねばならない。

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WHOだより—欧州における衛生学および公衆衛生学の数育

著者: 曾田長宗

ページ範囲:P.64 - P.67

 まだ現物は到着していないが,最近WHO Mono-graph Seriesの1册として"The Teaching of Hygieneand Publie Health in Europe"の刊行が伝えられている。
 本書は,1952年南仏Nancyで,又1953年には瑞西のGöteborgで開かれた「医科学生および医科卒業生に対する公衆衛生教育」に関するWHO欧州事務局の研究会議の結果を,英国のProfs. F. Grundy and J. M. Mackintoshが取りまとめたもので,その要旨がChronicle of WHO. Vol. 11 No. 2に收載されている。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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