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綜説
ケース研究の仕方
著者: 土井正徳1
所属機関: 1最高裁家庭局
ページ範囲:P.8 - P.13
文献購入ページに移動ケースCaseつまり,ある問題例というのは,いろいろの学問的および実際的領域にあるものであつて,医学的領域にあつては症例であり,裁判領域においては判決例すなわち判例である。症例や判例がいかにその学問および実際領域において重要なものであるかということは,その方面に関して知識をもつている人ならば,充分知つているところであろう。同時に症例研究や判例研究がいかに大切なものであり,理論的面においても実際的面においても,広く深くおこなわれていることはまた,多くの人の知つているところにちがいない。医学教育でおこなわれている臨床講義というのは,立派な系統的な症例研究であり,すべての基礎医学の知識と実習とを背景とした臨床医学の学習の実際的基礎というものは,臨床講義すなわち症例研究にあるといつても,いいすぎではないであろう。判例研究も同様の教育価値がおかれているものであつて,ことに英米の司法的法律教育の基礎は,判例の具体的研究にあるといわれる。独逸法の大きな支配下にあつた日本の司法領域における判例研究も,この英米流の系統的な判例研究の方法をとり入れてきているというのが,現在の進歩的な傾向であるということができよう。その傾向がもつとも著じるしく,全体的傾向となつているのは,少年法における少年保護領域である。しかし,成人の刑事事件におけるその傾向にも,大いに尊重すべきものがあることを忘れてならないものがある。
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