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綜説
世界の社会保障制度
著者: 館林宣夫1
所属機関: 1厚生省医療課
ページ範囲:P.1 - P.4
文献購入ページに移動社会保障ということばが始めて用いられたのは比較的近年のことである。即ちアメリカにおいて,ルーズベルトがニユーデイール政策をおしすすめようとしていた1932年のことである。然しこの言葉の生れたアメリカは,今日社会保障と云われている制度に関してはむしろ発達の遅れている国であつて,イギリスでは1601年に既に生活保護法に類するものがあり,ドイツでは1883年に健康保険法が生れている。これ等の国では何百年,何十年の歴史の後に今日の制度の発達をみているのであつて,社会保障制度は決して1932年にこの言葉が世の中に出現してから生長したものではない。
そのように古い歴史を持つ国々に比べると我が国の健康保険の歴史はやつと30年,生活保護法や厚生年金法が制定せられてから僅か十年乃至十数年にすぎない。我が国の疾病保険の制度は近く,国民皆保険に到達しようとしており,一応の目標も定まり,制度としても雑然としてはいるが,内容は相当充実したものと云い得るものとなつているが,社会保障の二大支柱の一つである老令年金制度については法律こそあるが内容が極めて貧弱なものであり,又国民の一部について制定せられているに過ぎないので我が国の社会保障制度は疾病保障に傾斜した不均等な状態にあると云い得る。
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