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特集 インフルエンザ 綜説
最近のインフルエンザの病原学
著者: 福見秀雄1
所属機関: 1国立予防衛生研究所
ページ範囲:P.37 - P.41
文献購入ページに移動インフルエンザ・ウイルス及びそれに類似のウイルスとしては前によくMNIウイルス群1)と言う呼称が用いられた。Mumps,Newcastle病,Influenzaの頭文字を集めたものであつて,この3つの病気の病原ウイルスが類似の性質を持つているが故にウイルス群としてその名を与えられたのである。この群のウイルスはいずれもある種の動物の赤血球を凝集すると言う性質を持つている。勿論赤血球凝集能力と言う性質はこの群以外のウイルスでもこれを持つているものがある。例えば痘瘡ウイルス群のものもそうであるし,その他日本脳炎ウイルス,デング熱ウイルス,Theilerの向神経性ウイルス等いろいろあるが,MNIウイルス群のウイルスの赤血球凝集に関する性質は特別のものである。
一般にウイルスの赤血球凝集作用は,ウイルス(あるいはウイルス感染に由来する凝集素)が赤血球に吸着することによつて起る赤血球表面の電荷勾配の変動によるものであるが,MNI群ウイルスの場合には赤血球に吸着されたウイルスはその吸着した赤血球表面の部分(この部分を構成するものをreceptor,即ち接受体と言うが)に一種の酵素作用を及ぼし,それを破壊してしまう。随つてウイルスを吸着して後ウイルスの接受体破壊作用によつて接受体が破壊されて再びウイルスの解離された後の赤血球はもはやウイルスによる赤血球凝集作用を受けない。
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