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特集 公衆衞生とノイローゼ 綜説
小兒のノイローゼ
著者: 高木四郎1
所属機関: 1国立精神衛生研究所児童精神衛生部
ページ範囲:P.12 - P.16
文献購入ページに移動思春期以前の小児にはノイローゼはまれなものであると一般に考えられている。しかし,実際には小児にも,ノイローゼ,あるいはこれと近縁の状態はさほど,珍しくはないといつてよい。筆者の経験によつても,成人に比較すれば,もちろん少いけれども,まれというほど少いとは考えられない。小児にノイローゼが珍しいと考えられているのは,従来,精神科医が小児(精神薄弱児やテンカン児は別として)に接する機会が少かつたこと,平素小児を扱つている小児科医その他に精神医学的素養が乏しかつたことによるのではあるまいかと思われる。児童精神医学がもつと発達して,精神科医が小児に接するようになり,また小児科医・保健所員等,小児を扱う人たちがこの問題に関心を抱くようになれば,小児のノイローゼはもつともつと多く見出されるであろうと想像される。
小児のノイローゼが取上げられることが少かつたのは,一つにはそれが成人のノイローゼに比べて特殊性を持ち,訴えや病像に異る点が多いためと思われる。小児はその精神が未発達,未分化であるために,成人のように自己の精神状態を内省し,これを言語的に発表し訴えることができない。いわんや,成人のごとく,みずから医師を訪れるなどということはない。訴えの内容からいうと,身体的な訴えが多く,そのため,しばしば身体疾患と誤診される。
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