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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生21巻3号

1957年03月発行

雑誌目次

アンケート

公衆衛生は黄昏か?(2)

著者: 山口正義 ,   小沢竜 ,   曾田長宗 ,   林塩 ,   園田真人 ,   土屋忠良

ページ範囲:P.16 - P.28

 昨秋,P先生から本誌に寄せられた公衆衛生の危機を訴える手紙については,既に本誌1月号に公衆衛生関係要路の回答を掲載したが,其後,山口公衆衛生局長,小沢医務局長,曾田公衆衛生院次長,林看護協会長からの回答を得,更に1月号所載の諸先生に対する数通の意見が寄せられたのでここに掲載する。引続き読者諸賢からの御意見を期待する。

綜説

発疹チフス対策進展の跡を顧みて

著者: 番場伸一

ページ範囲:P.1 - P.6

戰後の伝染病流行史(1)
 戦後10年を過ぎ,各分野に於て一応の反省がなされている時,防疫の面でも過去10年の歩みをふり返り,資料としてまとめ上げるべく準備が始められた。即ち厚生省防疫課に於て,32年度予算に資料編纂委員会設置の費用が認められ,具体的にその第一歩をふみ出す事となつた。この際,本誌に於ても「戦後の伝染病流行史」として,当時の担当者の記録を掲載する事とした。各疾病毎に,数回に亘つて連載し,尚引続いて「食中毒」についても紙面をさく予定である。
 資料編纂の一助ともなれば幸である。

結核治療指針の改正の要点

著者: 松本隆夫

ページ範囲:P.7 - P.15

1.まえがき
(今までの改正経過)
 近年まで大気・安静・栄養療法を主とし,特定の病型に対して人工気胸療法やごく一部に胸廓整形術が行われる他には,殆んど積極的な治療法のなかつた結核症に対して,1943年S. A. Waksmanによりストレプトマイシンが発見され,更に同年Rosdahlが合成したパラアミノサリチル酸がLehmannによつて結核菌の発育阻止に効果を有することが見出されて1944年臨床的に結核治療剤として応用されて以来,結核治療学は一大転換を来して,我が国においても輝かしい成果を収めて来た。これらの化学療法についての研究進歩とともに,また一方では外科的治療も一段と進展し,化学療法による病巣の制圧下に,新しく登場した閉鎖循環式麻酔法を利用して,病巣を一挙に取り去る肺葉切除術,肺区域切除術,肺部分切除術等が次々と行われるようになり,従来難治とされた結核症も,早期にその適切な治療を行うならば,数年を出でずして治癒し社会復帰も可能とされるに至つたのである。このような日進月歩の結核治療の進歩に対して,わが社会保険においてはどういう足どりを示して来たかをまずふりかえつて見よう。
 まず昭和24年6月には社会保険医療においてストレプトマイシン(以下「SM」と記す)の使用が認められ,その点数計算法が示され,同年9月点数表中に増設告示された。昭和26年4月には,厚生省ははじめて「実地医家に対する結核の治療指針」なるものを設定した。

原著

砒素混入醤油中毒事件の疫学的觀察—特に醤油中毒と断定するまでの経過に就て

著者: 野瀬善勝

ページ範囲:P.29 - P.43

I.緒言
 昭和30年12月下旬から昭和31年1月中旬にかけて,宇部市並にその周辺に発生した約400名の顔面浮腫と食思不振を主徴とする原因不明の感冒様疾患は,意外にも砒素の混入せる醤油の集団中毒であつた。今回は本事件認知以来1週間を出でずして原因も判明し,患者も漸次恢復し,1名の死亡者も出さずして解決し得た事は不幸中の幸であつた。然し乍ら,森永粉乳事件1)2)に相次いで起つた砒素中毒事件であり,日本人の食生活上欠く事のできない醤油,而もこれまで衛生的に比較的安全な食品と見做されていた醤油の中に砒素が混入していただけに社会に大きな衝動を与え,新な食品衛生上の問題を惹起するに至つた。蓋し,自然界に於ける砒素の存在と食品衛生法の盲点と相俟つて,将来と雖も類似の事件が発生するかも知れないと云う社会的不安があるからである。
 私は,宇部保健所長として,或は臨時防疫対策本部長として,本事件の当初よりこれが原因の究明と対策に関与した。而して,本中毒事件の臨床的観察は水田教授3)等によつて詳細な報告がなされているので,本篇では重複を避けて,特に本事件の認知からその原因が砒素混入醤油の中毒であることを確認発表する迄の行政的立場から見た逐日的経過に就て,若干の疫学的考察を試み,当面の責任者としての反省と将来に資したいと思う。

東京都における転入人口の日本脳炎流行に及ぼす影響について(第1報)

著者: 小原菊夫 ,   池田和雄 ,   岩崎綾子 ,   田中和義

ページ範囲:P.44 - P.47

緒言
 日本脳炎流行に影響を与える因子として,本病々毒や,媒介者と見なされている蚊の問題,あるいは気象の面や各個人の応受性の面など,種々の観点から多くの研究がなされているが,われわれは,本病の発生率が地域によつてことなる誘因の一つとして,本病の流行地ないしは非流行地からの転入人口の変動が,何らかの影響を及ぼすのではないか,と考え二,三の観察を試みたので,その結果を報告する。

先天性股関節脱臼集団檢診用レ線間接撮影装置の考案

著者: 水野宏 ,   森田穰

ページ範囲:P.47 - P.49

1.緒言
 先天性股関節脱臼(以下先天股脱)は極めて頻度の高い疾患である。横山・小寺1)は生後7日以内の新生児608名において0.5%,竹沢2)は生後50日以内の乳児1440名において0.4%発見したと報告しているが,神中3)は赤ちやんコンクールに参加した700名の健康乳児中6名(0.9%),白石・志貿は健康乳児394名中4名(1.0%)に発見している。
 教室の鈴木等4)は愛知県蒲郡保健所管内全域にわたつて巡回検診を実施し,6×6版レ線写真を撮影した結果,2才未満の乳幼児1224名中20名(1.6%)にのぼる脱臼患児を発見した。この地域は先天股脱の特に多い地域とも考えられるが,それにしても予想外の高率で,巡回検診によつて一般乳児に余さずレ線撮影を実施すれば,どの地域でも従来よりさらに高率に発見されるのではないかと考えられる。

攪乱予防装置を附した屎尿槽の消化機能に関する研究

著者: 田波潤一郎 ,   長島恒義 ,   北原漠 ,   平沼博 ,   寺島一郎 ,   中村和義

ページ範囲:P.49 - P.53

緒言
 消化槽の連続投入に於ける安全化の問題で,常に困難を感ずる点は,生屎尿の順次添加による病原体及び寄生虫卵の混和拡散による早期逸脱である。
 この点は細長い筒状のタンクに於てその長軸の略中央部から徐々に生屎尿を投入し,上方から脱離液を,下方から消化汚泥を常に一定の比率を以て排出して行けばほぼ解決される問題であるが,実際問題としてはこの条件を充すほどの細長い消化槽は経済的に,又加温その他の設計上の点から不可能である。

兵庫県の一農村に於ける寄生虫(特に鉤虫)に関する調査報告

著者: 中西靖郎 ,   吉田幸雄 ,   青野宏 ,   大塚昭男 ,   海老原進 ,   森木隆

ページ範囲:P.54 - P.58

緒言
 近年の兵庫県に於ける腸管内寄生虫,殊に鉤虫に就ては県の南部では浜野忠彦(1952)が武庫地区に於て,栗林海男(1951〜1955)が神戸市内の某工場従業員及び県下有馬郡・神崎郡に於ての報告がある。又戦前の調査であり,未発表であるが,宮田が行つた兵庫県全般に亘る成績がある。県下の鉤虫二種類に関し,考察したのは栗林で氏に依るとツビニ鉤虫の方がアメリカ鉤虫より圧倒的に優位を占めている。
 著者等は1956年5月に先ず兵庫県川西市東谷小学校の検便を実施し,学童に相当数の鉤虫保有者が見出されたので引続き,同年7月から8月にかけて同市東谷地区及黒川地区について調査を行つたのでここにその成績を報告する。

長野県下一農村に於ける井水の細菌学的研究—特に汚染指標としての腸球菌に関する検討

著者: 柳沢君子 ,   須田正男 ,   宮林晃 ,   木村康正 ,   竹内端弥 ,   渡辺益夫

ページ範囲:P.58 - P.61

 近年公衆衛生の発展に伴い,町村に於ても飲料水の供給施設として簡易水道が設置される様になつたが,全国的にみる時は未だその数は僅少で依然として井水は飲料水としての重要な位置を保つており,赤痢の流行がこれ等井水により伝播される事が多い状況である。飲料水の衛生学的な検査を実施する際,細菌学的検査特に大腸菌群検査は糞便汚染の有無を判定する上に欠く事の出来ない項目であり,厚生省編纂飲料水検査指針1)に於ても特に重点が置かれている所である。柳沢教授2)は飲料水検査指針に従つて千葉県学校井水808件について調査を行われ,化学検査は大腸菌群検査に比較して汚染の指標としては適切でないと述べられている。
 最近欧米に於て腸球菌の選択培地に関する研究が進み腸球菌の検索が容易になり,検出率が高くなると共に,プールの水,河水,下水等に対して従来汚染指標として使用されていた大腸菌群,大腸菌の補助又は代りのものとして腸球菌が使用できるものではないかと考えられる様になり,Walter Morris等3)は井水に於て大腸菌群及び大腸菌のM.P.N.値と腸球菌のM.P.N.値との比較検討を行つている。

平塚市港小学校に発生したブドウ球菌性食中毒のフアージ型別による檢索

著者: 羽深泰雄 ,   米山磐 ,   中平百合子 ,   宮本泰

ページ範囲:P.63 - P.67

緒言
 ブドウ球菌は,諸種化膿性疾患の病原体や食中毒の原因菌として,臨床上,疫学上重要な役割を演じているにもかかわらず,その種類は多様であり,未だ広く利用され得るような適当な型別方法が見出されなかつたため,ブドウ球菌による疾病の原因究明は,困難な問題とされていた。しかるに近年,バクテリオフアージによるブドウ球菌の型別が行われるようになり,臨床上,疫学上この問題の解決に有力な手がかりが得られるようになつて来た。ブドウ球菌のフアージによる型別法は,古くから研究されており,Fisk1)2)3)により一応体系化され,Wilson and Atkinson4),Wahl,5)6)7)8)Blair9),Williams10),Jacnson11)等によつて実用化の研究が進められて来た。我々は,英国のType Culture CollectionからWilliams等のブドウ球菌型別フアージを入手することが出来,これを,たまたまブドウ球菌による集団食中毒の原因検索に利用する機会を得たが,その結果,以下にのべることく,フアージ型別によつて,原因食から検出されたブドウ球菌が,患者の便から検出されたブドウ球菌及びその原因食製造業者の咽頭から検出されたブドウ球菌と全く同一のものであつたと云う興味ある成績を得ることが出来たので,2,3の知見とともにここに報告する。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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