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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生21巻6号

1957年06月発行

雑誌目次

綜説

結核患者の食餌に就いて

著者: 春木秀次郞

ページ範囲:P.1 - P.7

 健康者に対する食餌は食慾,空腹感,収入,嗜好等に従つて食物の量や質が選ばれている。然し病人の場合には各々の病状によつて食物の種類や量を定める事が重要な意味を持つことになる。病人は各器官の機能の外,新陳代謝,栄養状態が病気の種類とその程度によつて多かれ少かれ障害を受け変化している。故に食物の種類,量の選択にはこのような正常と異つた状態に順応するようにし,これによつて病体の負担を軽くし同時に健康の恢復を助けるようにしなければならない。

淨化装置の原理と実際

著者: 岩戸武雄

ページ範囲:P.8 - P.14

1.まえがき
 予防衛生の根幹は汚染原と人とを完全に遮断してしまうことである。
 汚染原が糞便である場合,これと人との隔絶は当然なことであり,極めて重要なことであるが,その方法論並に実際の現状は日暮れて途なお遠き憾み深きものがある。

赤痢問題の徹底的検討

著者: 平山雄

ページ範囲:P.15 - P.20

1.はじめに
 「万策つきた」という言葉が,割合簡単に使われているが,その「万策」に近い防疫関係者の奔命にかかわらず,わが国の赤痢は年々猖獗を極めている……。
 これは,新潟県衛生研究所篠川至所長の言(日本臨床13巻7号,昭和30年7月)であるが,既に2年を経た今日でも,事態は少しも好転していない。後世の歴史家はいかにこれを記述し批判するであろうか。それを考える時,改めて赤痢,疫痢問題解決に新鮮な意慾を燃やし,あるべき対策の姿について徹底的検討を行う必要性を痛感する。

原著

ストロンチウム90の將来の蓄積

著者: 檜山義夫

ページ範囲:P.21 - P.26

(1)はしがき
 原水爆の爆発や原子炉廃棄物の核分裂生産物中,ストロンチウム90(Sr90)が寿命が長く(半滅期28年)生産も多いので,これによる地球表面の汚染の環境衛生上の問題は,現在の汚染より将来をどう推論するかという点で,多くの議論を生している。筆者は,第3回国連放射能科学委員会に提出した論旨に,さらに二,三の別の推算法を加えて,ここに批判を乞う次第である。

Piperazine製剤に依る蛔虫治療効果について

著者: 森下薫 ,   西村猛 ,   南風原助泰

ページ範囲:P.27 - P.31

I.前言
 近来Piperazineが蟯虫に対し卓効があるとして脚光をを浴びているが,これを蛔虫に始めて試みたのはFAYARD(1949)で,Piperazine hexahydrate 3.5gm(=1.5gm Piperazine)を2回投与し,服用者の70-95%に排虫を見たと報じた。但氏は卵数計算は元より,後検便を行つていないので,効果を詳細にする所迄行つていないが,これに依つて本剤が駆蛔虫効力をもつていることが明かになつた。続いてMOURIQAND等(1951)も亦同様の製剤を以つて行つた試験で同様の効力を認めたが,効果についての観察に尚不充分なものがあつた。その後TURPIN等(1951),CAVIER(1953),WHITE等(1953)SIMS(1953,54),GOODWIN等(1954),0'BRIEN(1954),REARDEN(1954),BROWN等(1954,55),DUNN(1955),HANNA等(1955),SWARTZWELDER等(1955),HOEKENGA(1955),ATCHLEY等(1956)の実験があり,我国でも若干の報告が既に出されて居る(松林等,1956;岩田1955;神保,1956;三谷等,1956;守屋等,1555;伊藤等,1956等)。これらの諸成績はいずれも本剤の駆蛔虫効力を確認し,且つ副作用も少なく,その優秀性を強調している。

座談会

医学校に於ける衛生・公衆衛生教育のあり方

著者: 北博正 ,   野辺地慶三 ,   聖成稔 ,   曾田長宗 ,   上田喜一 ,   豊川行平

ページ範囲:P.32 - P.45

公衆衛生教育の理念
 豊川  今日は医学校における公衆衛生教育というものが,どのようにあるべきかという問題を皆様にお話して頂きたいと思うのです。ということは,医学生というものはもともと臨床家になる人が大部分であるわけなんで,そういう処で,今行われている公衆衛生の講義というものが,今のままでいいかどうか大分問題があると思います。だからまず最初に,公衆衛生教育というものの理念といいますか,そういうものについて少し皆様方の御意見をお伺いしたいと思います。その点どうでしようか,野辺地先生,先生のご意見を一つお聞かせ願いたいと思います。
 野辺地  今,豊川さんからお話がありましたが,医科大学の卒業生というものは,大部分将来は臨床家になる方々で,公衆衛生の専門家,あるいは大学の先生,衛生技術家になるのは,ごくその一部分でございますね。ですから,やはり,将来臨床家になる人の公衆衛生,あるいは予防医学に対する理解というものがどうあるべきかということを教えるべきだと思うのです。ですから,所謂,Public health mindの臨床家が出来るように教育すべきだと思うのです。

統計のページ

地域と疾病

著者: 上田耕三

ページ範囲:P.46 - P.51

 われわれの住むこの国土は,それぞれの特徴によつて,いくつかの地域に分けることができる。その最も端的な例は都市と農村の区分である。この両者ではその景観がいちじるしく違うばかりでなく,生活様式,生活環境,労働型態,産業構造などに多くの違いがある。われわれが扱う公衆衛生や社会福祉の分野にみられる諸々の問題にも,このような差異が反映されていることはいうまでもない。われわれが社会的なつながりをもつ諸問題を扱う際に十分注意しなければならない事柄である。しかし,都市と農村の区分は必ずしも容易ではない。とくにこの区分によつて,ある事象を統計的に観察しようとする場合には,その区分自体に技術的な多くの問題が生ずる。一般に行政上の地域区分にしたがつて,市の区域を市部,市以外の郡の区域を郡部といい,この区分によつて都市的な地域と農村的な地域とを分ける方法がとられている。ところが近年,多くの新市の誕生や町村合併が行われるようになつた結果,市部といつても農村的な地帯がかなり含まれるようになつたためこの区分が疑問視されるようになつた。これを救う一つの方法は,ある地域をその人口の大いさによつていくつかの階級に分かつ方法である。この方法でも,例えば人口の分布はまばらだが面積が広いためにサイズの大きい所と,逆に人口ちよう密だが面積が狭いためにサイズの小さい所とが混り合つて,いずれがより都市的であるかという点になると仲々難かしいのはもちろんである。

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WHOニユース

著者: 曾田長宗

ページ範囲:P.52 - P.54

WHOの動き
 WHOも,本1957年に,第10回世界保健総会を開催するに到り,世界各国間における衛生関係の国際条約や協定の取り決め,各専門分野における調査,研究,行政措置などに関する情報交換や,共同討議,専門家や留学生の交換,各国間の技術的援助,などに大きな成果を挙げている。
 公衆衛生分野における国際協力の必要は,各国においても,いよいよ強く認識され,英米などにおいては,早くより国際衛生を担当する専門的部局が政府部内に設けられている状況である。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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