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原著
含嗽—咽頭溶連菌の消長を中心にして
著者: 木村光雄1 田中外喜1 奥村武1 佐藤信義1 富永良橘1 金子健太郎1
所属機関: 1九州大学医学部第一内科教室
ページ範囲:P.75 - P.81
文献購入ページに移動昭和29年秋,福岡県築上郡において,主として小児の間に発疹性,或いは無疹性の腎炎が多発し1),更に昭和30年秋にも,福岡,徳島その他の各県において,同様の症状を呈する腎炎の流行がみられ,いわゆる「奇病」とされていたが,我々は,昭和30年12月2日,「溶連菌感染による流行性腎炎」と診定2),更に昭和32年4月,第31回日本伝染病学会における交見演説において,昭和29年から3ヵ年間の経験にもとづいて,本症の概要を述べた3)。この腎炎が溶連菌によつて惹起されることは,いまや明確にされているにもかかわらず,本症の予防については,遺憾乍ら未だ殆んど研究がなされていないようである。
さて,この溶連菌によつて惹起される疾病としては,猩紅熱をはじめ,扁桃炎,口夾炎,肺炎,中耳炎,リンパ腺炎の他,疔,癤,膿痂疹,蜂窩織炎,産褥熱,敗血症など,幾多の疾病が挙げられている。この溶連菌の感染様式としては,種々の経路が考えられるが,これ等疾病時には,その病型の如何にかかわらず,殆んどの患者はその咽頭部に溶連菌を保持しており,これがいわゆる空気感染,即ち飛沫感染,塵埃感染によつて,広くその周囲を汚染し,大多数は先ず鼻咽腔に侵入し,ここで定着,増殖して,発病限界値を越え,或いは他の部位への自家感染を起して発病する。
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