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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生22巻2号

1958年02月発行

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綜説

疫学調査について

著者: 乗木秀夫

ページ範囲:P.65 - P.69

 現在,疫学調査について,方法論的な検討が真面目にとり上げられて来ているが,考えてみるとちよつと変な感がする。確かに,方法論として,一つの現象を如何なる方法をもつて解釈してゆくかと云う面もある。現在,広く用いられているマスターテーブル,一次発生に対する潜伏期の算出,曝露時の推定,家族集積性の検討などは,疫学調査に対する方法論的前進であろう。しかし一方,その結果を導き出すためには,その方法で充分であつたかどうかと云う意味の方法論的検討もあると思う。本題目の疫学調査については,この後者の問題を取上げる。その理由は,現在の疫学調査が,既に多くの報告がある伝染病から,新しく開拓しなければならない非伝染性或は慢性の疾患にまで,進展しつつあるので時には思わぬ誤りをおかすことがあると考えるから。
 一体,疫学と云う言葉,統計と云う言葉,数字で表わすと云うこと,これ等は全く混同されてしまう。疫学とは何か,私自身疫学的研究と云う言葉を耳にするとき,統計的研究とか,数的検討とかにおきかえてみて,おかしくないと云う疑問に感ずることがある。或る集団発生或は多発事例の調査で,その病原的部門を取り去り,その臨床的部門を除いたあとの雑とした資料を漠として寄せ集めたものが,疫学部門に取上げられているかの如き錯覚に落入ることすらある。

ポリオの病原体とワクチン

著者: 竹森信之

ページ範囲:P.70 - P.75

 急性灰白髄炎(Poliomyelitis)または小児麻痺(infantile paralysis)は18世紀の後半頃から明らかに認められていたが,最初の系統的記載は1840年にHeine(1891)によつてなされた。その後Medinは始めて1887年にストツクホルムに起つた流行(患者44名)について報告した。Wickmanは1905年のスエーデンの流行を調査してポリオが人から人へ伝染することを証明した。1909年Landsteiner & Popper1)はポリオ死亡例の脊髄乳剤を猿に接種し発症せしめることに成功した。このように適当の実験動物の発見によつてポリオの病原体がウイルスであることが証明された。それ以後ポリオの研究には猿が用いられていたが,1939年にArmstrong2)はLANSING型ポリオウイルス株を脳内接種でコツトンラツト(cotton rat)とマウスにつけることに成功した。しかしポリオウイルスには血清学的に明らかに異る三型3)があつて,脳内接種で三型とも猿を発症せしめるがコツトンラツトとマウスにかかるのは二型(Lansing型)のみであり,従つて実験はなかなか不便であつて研究の進歩がおくれていた。

ポリオの臨床

著者: 山田尚達

ページ範囲:P.76 - P.82

緒論
 1838年Heineが始めて本症の医学的記載を行つて以来Medin(1887)を始め諸家の研究により,その臨床像の全貌が次第に明らかとなつた。殊にWickmannは1905〜1906年Swedenにおける本症の流行に際し多数の症例を観察し,これを8病型に分類している。本稿においては本症の臨床について全般的な概説を試みることとする。

航空医学の現状と將来

著者: 大島正光

ページ範囲:P.99 - P.104

 Wright兄弟が始めて航空機を飛ばすことに成功したのが1903年であつて,それから現在までにわずか50数年を経過しているに過ぎない。時代はこの記念すべき時からプロペラ機,ジエツト機,ロケツト機と経過して人工衛星(Earth Satellite,artificial Satellite)が生物を乗せて我々の頭上を飛ぶ時代となつた。わずか50数年の進歩を考えたならば正におどろきの目を見はらざるを得ないであろう。処が航空医学の歴史はさらに先にさかのぼる。1783年6月5日にフランスのAnnonayがMontgolfiére気球を始めて飛ばし,ついで同年9月19日に羊,にわとり,鴨などを気球にのせて飛ばしたのが,航空医学の研究の誕生日とされている。その後1875年Crocé-Spinelli,Sivel,Tissandierが8,790mまで気球で上昇して,Tissandierのみが生き残つた事件は,航空医学の研究の大きな刺激を全欧州に与えたといわれている。航空医学の研究の足跡は,技術の進歩の道程によつて大体の過程を知ることが出来る。その意味から航空機の記録の年代変化をうかがつて見よう。航空機の記録の中でも重要なものは,高度の記録と速度の記録とであろう。

問題点を訊く

ポリオ対策について

著者: 宮入正人 ,   佐竹繁男

ページ範囲:P.83 - P.86

 編集部 下の表は最近のポリオの流行例ですが,このような流行が目立つて多くなつて来ましたね。
 宮入 Endemic型からEpidemic型へと流行の型が変化しているようです。1870年代北ヨーロツパで,1880年代にはヨーロツパの他の地域で,1890年代アメリカでもそれまでの常在性,散発酌な発生が所謂流行の型に変つたのですが,日本でも昭和13年(1938年)頃から変つて来ているようです。もつと流行の様相がはつきり変つて来たのは昭和24年(1949年)宮崎市,北海道,八戸市(I型)の流行以来でしよう。勿論都会と農村とでは趣がちがいますね。例えば東京の如き最近は患者数もずつと減つて全く散発的です。もつともこのような状態の後には又必ず多発する時期が来るでしよう。

座談会

Polioの疫学調査方法の検討—流行時現地における取材方法

著者: 山下章 ,   宮入正人 ,   平山雄 ,   乗木秀夫 ,   小原菊夫 ,   高橋繁 ,   岡田貫一 ,   松田心一 ,   金子義徳 ,   佐竹繁男 ,   佐々木建夫 ,   高野武一 ,   甲野礼作 ,   曾田長宗 ,   磯貝元 ,   野辺地慶三

ページ範囲:P.87 - P.97

Polio疫学調査おぼえ書
―流行発生時現地で資料を如何にしてとるか―
方法論的には:Retrospective主としてmorbidity Study調査目的:1)伝播経路(伝染源)2)診断の確定(臨床的,病原学的)3)流行発生機転(HostAgent,Environment)
Population中のめじるし(臨床的,病原学的):麻痺型患者,非麻痺型患者,不全型患者,不顕性感染者,非感染者

原著

慶応病院の人間ドツクに入院した人々の寄生虫検査並にMGL法の検討

著者: 問川迪典 ,   伊從茂

ページ範囲:P.105 - P.109

 我々は,慶応病院の所謂人間ドツクに入つた人々の寄生虫検査を行い,併せてMGL法の蠕虫卵,原虫チステの検出能力について,一検討を試みた。

ロート胸児に於ける二,三の知見

著者: 佐藤千春

ページ範囲:P.111 - P.113

1.はじめ
 昭和26〜30年の5年間,筆者は群馬県碓氷郡に於ける乳幼児検診に際し発見したロート胸児について観察を続け,下記の如き2,3の知見を得たので報告する。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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