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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生23巻10号

1959年10月発行

雑誌目次

特集 精神衛生(I)

精神衛生関係の団体の紹介

著者: 津田信夫

ページ範囲:P.585 - P.588

I.精神衛生に関する学術研究団体
 精神衛生に関する学術研究団体としては,日本精神神経学会をはじめ15の学会がある。昭和32年の国立精神衛生研究所資料によれば,それらの名称,所在地,代表者,発行機関誌等は別表のとおりである。

日本の精神衛生運動と民間運動との歴史

著者: 金子準二

ページ範囲:P.589 - P.597

 I.
 どの民族どの国でも病気に対して第一に考えたのは,その治療である。それから,その予防を工夫するのが常である。
 精神障害に対してもまたその治療の階段から予防の階段にまで上りつつある。

世界の精神衛生活動の動き

著者: 村松常雄

ページ範囲:P.598 - P.600

I.精神健康年について
 世界の動きとして,最初に特筆せねばならないことは,来年がWorld Mental Health Year(世界精神健康年)として国際的に企劃されていることである。
 その企劃の中心はLondonに本部を持つWorld Federation for Mental Health(世界精神健康連盟)で,同連盟は昭和23年ILO,UNESCO,WHO,UNICEF,その他のthe United Nationsの諸団体と協力するものとして創設せられ,現在世界42ヵ国,2属領に亘る106の精神衛生団体,並びに7つの国際団体,計113の団体をmember-associationとするもので,わが国の精神衛生会及び精神衛生連盟もこのmemberになつている。

精神衛生活動の動向

著者: 津田信夫

ページ範囲:P.601 - P.604

I.はじめに
 本年4月の世界保健デーのテーマは精神衛生であつたし,明年1960年は世界精神衛生連盟の主唱のもとに世界精神衛生年の行事が行なわれることになつている。
 WHO事務局長M. G. Candau博士は,「精神病及び精神的,情緒的原因をもつ社会的疾患(例えば不良化,アル中,麻薬中毒,自殺等々)は極めて多く,所謂世界中の身体的疾患がもしこのような精神的疾患程多いとすれば,世の中は大変さわぐであろう。しかし世間はこのことの重要性に気付いていない。しかも精神不健康者の数は世界的に増加している。しかし幸なことに,精神病や社会的疾患の正しい理解や予防や治療は進歩している。精神病院は格子も鍵もない開放的な病院にかわり,自発的入院はそれにより増えている。又心理的な要因によつておこる身体的な疾病や,一般的にはそれが精神不健康のあらわれであるとは未だ気づかれていない或種の反社会的行為について,その原因や診断治療の方法がわかつて来ている。

われわれの相談所の実際活動

著者: 竹谷政男

ページ範囲:P.605 - P.611

 われわれの相談所は昭和28年2月10日に現在地の大阪市内にある大阪府立の中央児童相談所と同一建物内に開所したのであります。
 精神科医出身の所長と保健婦長出身及び児童福祉司出身の2名のケース・ワーカー,それに事務吏員1名,傭人1名のメムバーで出発しました。翌年に心理専攻者1名を加えて全員6名の専従職員で構成されて来,極く最近になつて,この他にパート・タイムの医師2名,同じく心理専攻者2名の応援を得てケース・ワーカーは3名の専従職員と致しました。

報告

第12回WHO総会の概要

著者: 尾村偉久

ページ範囲:P.613 - P.617

 本年5月12日から5月29日迄,スイス国ジュネーブで開催された第12回WHO(世界保健機構)総会に日本政府首席代表として参会したので,その議事の概要を述べて,現在の世界の衛生問題の主要事項を知るよすがとなれば幸いと思う。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・6

衛生行政

著者: 野瀬善勝

ページ範囲:P.618 - P.620

(1)本学の衛生学公衆衛生学の教育は衛生学(大石)及び公衆衛生学(野瀬)の両講座により,衛生学は2年生に公衆衛生学は3〜4年生になされる。衛生行政は3年生の後期に8時間講義を行い,公衆衛生の講義には全てプリントを用いる。これには講義の要目と重要事項,必要な数値,統計図表,その他法規の抜萃等,内容を理解させるために必要であるが筆記させるには聊さか面倒な事柄が書いてある。従つて学生は筆記の労が少なく,講義を聞きながらその場で理解できる。毎回2時間の講義で特定の項目に区切りがつくように纒められている。
(2)衛生行政がお役所的な法律や規則ずくめの事務的にわずらわしい無味乾燥なものでなく,医学者の科学的な知識や技術の活用によつて,如何に多くの住民の健康と生命が守られて来たか。或は又,逆にその失敗例,若しくは現行保健所を中心とした我国衛生行政の長所と欠陥等,過去並に現在保健所長としての体験を豊富に織込んで,学生の公衆衛生に対する学術的な興味と魅力の涵養に努めている。従つて,勢い余つて脱線することが少なくない。脱線しても差し支えないようにプリントが用意されているともいえる。

「医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育」についてのアンケート

西川滇八,前田和甫氏の「ヨーロッパ各国の医科学生に対する衛生学公衆衛生学教育」に関連した討議

著者: 外山敏夫 ,   勝沼晴雄

ページ範囲:P.621 - P.622

 ヨーロッパ各国に於ける衛生学,公衆衛生学の教育は両氏の記事の如く,環境衛生に主力をおくものから,予防医学ないし社会医学に重きを置くものまで各様であるが,それは国の衛生水準と必ずしも一致しない事は確かで,むしろ教育内容はその大学所在の地域に関連したエコロジカルな特性によるか,又単なる伝統に左右されている場合もある。ユーゴースラビアの如く,ヨーロッパの中では衛生統計からみて水準の低い国でも,社会医学と環境衛生とにほぼ同じ位の力をそそいでいる場合もある。この国の医学教育を左右する大きな因子の1つは,戦後の医師不足を補充することであつた。戦争中に約4,000人の医師が失われ,ほぼ同数が生き残つたのみで,(そのうち半数は50歳以上)これが人口1,600万人の医療を担当していた。同時にこの国の主要衛生問題は発疹チフス,マラリア,結核,梅毒等であつたから,環境衛生の教育に於ける比重は大ならざるを得ない。一方故Stamper博士の如き熱情的公衆衛生先覚者によつて近代的な社会及び予防医学への前進も急速に併行しているため,教育内容も刻々と近代化されている。
 又英国では従来の小間物の集まりの如き公衆衛生教育を排して,理論的に首尾一貫したものを社会医学の名のもとに打立てる努力がなされた。

北博正教授の「環境衛生」(1)について

著者: 須川豊 ,   勝沼晴雄 ,   猿田南海雄

ページ範囲:P.622 - P.624

 近頃は講義をやつていないし,資料を集めて整理することもできないので,大学でどんな教育が行われているか知らない。公衆衛生学会で,講義内容が検討されはじめた頃からみれば,相当変つたことと思う。北教授のやつておられる内容の記述を拝見して,大変感銘した。全体の考え方として,臨床医をめざす学生に対して,興味をもたすことを前提として,臨床と関連させる努力を払われている点は誠に結構である。ただ細い内容が分らないし,北教授はこんなことはないと思うがあまり脱線しすぎると,学科としての系統が不明確になつて,それでなくとも雑学(?)と思われている公衆衛生学が,寄席のようになる恐れがある。最近の学生の気分は理解できないが,多少堅くとも学生をひきつける理想的情熱型のやり方もあろうと思う。「病気は治療するよりも予防」の高まいな理念,前進しつつある社会保障,その基礎をなす医療保障,経済との関連等これらのすべてに対して環境衛生が基礎である所以,それは都市計画であり,先代国民の誤れる認識,それが現代社会の悩みとむじゆんの原因であり,これを解決する方向は,指導者の考え方であり,その考えを推進する者は医学を学ぶ人々であることを,大い話す必要があると思う。赤痢,小児麻痺,結核,寄生虫,性病等すべての社会的疾病が環境衛生的基礎との関連から説かれることによつて,環境衛生,公衆衛生学が医学生の勉強の場において,そのあるべき地位を確保されると思う。

企画に感謝しつつ

著者: 安倍弘毅

ページ範囲:P.624 - P.626

 「医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育」のためになされたこの企画は,時期を得たものと感謝しながら拝見している。
 この教育のむつかしさは医学生が,あまり興味をもたない傾向があるということに原因があるにしても,吾々教育者としての努力如何にもかかわるものと考えるので,このシリーズを読みながら,斯界に於ける代表者等からモデルを見せて頂くという事で大いに示唆を与えられる。

原著

眼底所見を主とする高血圧集団検診方式の研究—(第4報)集団検診に適した眼底検査方式の研究

著者: 新井宏朋

ページ範囲:P.627 - P.632

I.緒論
 著者は第1報1)で一般社会集団中の成人に高血圧血管硬化の眼底所見を有する者が相当数ある事を報告し,第2報2),第3報3)で,これら眼底に病変のある者が従来の集団検診で汎く実施されている上膊血圧,尿蛋白,心電図検査では適確にふるい分け,且つ,程度分けする事の困難なことを報告し,卒中予防の集団検診では眼底検査を実施する必要があることを強調した。
 しかし,眼底検査が集団検診で眼科医以外にも汎く実施されるには診断的価値が適確な事以外に検査に特別の名人芸がいらない事,検査速度の早い事等の条件を満足する必要がある。従来のKeith Wagener4)やScheie5)の分類による精密眼底検査は検査手技や病的所見の判定に難かしい点があり,検査に時間を要するとされ,集団検診で多人数を一度に検査するには運用が困難と考えられてきた。

昭和32年栃木県下に流行したインフルエンザA/アジア/57の疫学的病源学的研究

著者: 塩沢満

ページ範囲:P.633 - P.646

I.緒言
 1957年4月支那大陸からの避難民によつてもたらされた香港に於ける,インフルエンザ(以下「イ」)A/アジア/57の流行はその後,フイリッピン,タイ,シンガポール等のアジア各地は勿論7月初めにはオランダ,英国,アメリカ大陸にまで,その猛威をふるい,文字通りのPandemieとなつた。
 我が国に「イ」A/アジア/57の侵襲を見たのは5月10日頃1)からで,東京,横浜,神戸などの大都市を中心として拡がつた。栃木県に於ては6月上旬より「イ」による学童の集団欠席が相次いで発生している。

煤塵による京浜工業地帯の大気汚染(第3報)—デポジットゲージによる降下煤塵量測定の再現性

著者: 氷見康二 ,   田中克 ,   尾崎良雄

ページ範囲:P.647 - P.653

I.緒言
 工業地帯の大気汚染状況を調査する場合,降下煤塵量の測定はその測定計器が比較的簡単でかつ人手を余り必要としないで,長期にわたつての汚染状況の大略を把握出来るところから古くから実施されており,現在においても主要な調査項目の1つにあげられている。
 しかしながらこの測定を実施するに当つては種々の煤塵受器がまちまちに用いられており,これらの測定値を評価する場合その再現性,捕集率等多くの問題が存在していると思われる。

文献

オンタリオ州における精神衛生,他

著者: 西川

ページ範囲:P.588 - P.588

 カナダにおける最大の州オンタリオの衛生部は412,582平方マイルに散らばる5,803,276人の住民を対象として活動している。ここの業務報告のうちで,精神衛生課に関する部分を抜いてみた。
 州衛生部に属する課の中では,精神衛生課が最も重要な課の一つとなつていて,業務の主たるものは,精神病の積極的な治療と予防とである。治療は州内各地に散在する病院や教護施設で行われており,入院治療を要しないような情緒的障害のみで,晝間たけ入室していればよい患者に対しては晝間のみ滞在する施設ができている。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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