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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生23巻12号

1959年12月発行

文献概要

特集 公害

大気汚染機構研究の現状

著者: 伊東彊自1

所属機関: 1気象研究所応用気象研究部

ページ範囲:P.722 - P.728

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I.大気汚染機構
 ひと口に大気汚染といつても,はつきりした定義でも与えないかぎり,きわめてばく然とした現象を考えなければならない。たとえば最近のように大気の放射能汚染がやかましい問題になつてくると,大気汚染の中に放射能ちりや放射能雨をとりあげないというわけにはいかなくなる。放射能性ちりの沈着に着目すると,北半球の中緯度地方に沈着が多いという緯度効果を無視できなくなるし,そうなれば当然,対流圏沈下,成層圏沈下も考えなければならず,大気大循環の問題を取り上げなければならなくなる。汚染源にしても,大きな工場からの煙だけでは片手落ちであるといわれ,家庭用の煙突に注目したのがごく近年のことと考えられていたのが,現在では大きな問題として自動車の排気ガスが浮かび上つてきているし,原水爆実験もりつぱな汚染源であるし,原子炉のいくつかはすでに事故をおこしており,広く注目されてきているところである。このほかにも宇宙じんなどというまだよく正体のつかめない大気汚染源があり,それによつて派生する可能性があるともみられる大規模な降水との関連も数年前からこの方面の学界の話題になつてきている。
 ここでは,これらの全体について展望するわけにはいかないが,簡約に総括するほど研究の形態がかたまつていないのが現状であるとみてよかろう。したがつて,いきおい問題となつているいくつかの研究におもに目をつけることになる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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