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特集 高血圧の疫学
高血圧の疫学—日本の現状・農村の実状
著者: 吉田央1
所属機関: 1東京女子医科大学衛生学教室
ページ範囲:P.115 - P.118
文献購入ページに移動脳卒中による死亡の状況を訂正死亡率によつて都鄙別年代別に観察した吉岡らの論文1)によれば,明治末年から昭和10年まで都市は農村より常に高位であるが,都鄙の死亡率曲線の間隔は明治から大正,昭和となるにつれて次第に狭くなる傾向があることを指摘している。しかし,それ以後の死亡率については都鄙別の資料がないため明らかにしえないので,こころみに金の研究2)から都鄙の一例として東京を中心とする5つの県について,脳卒中訂正死亡率の年次的推移をみていくと,第1図のような死亡率曲線をえた。明治32年から昭和10年まではほぼ常に東京が高率をしめしているが,昭和22年になると東京と各県との死亡率曲線の位置は全く逆転して東京が低率となつている。ここにあげたのは男子の死亡率曲線であるが,女子の死亡率についてもほぼ同様のことがいいうる。ただし,女子の死亡率は各年次全国各府県とも,男子よりも明らかに低率である。戦時中は各県とも死亡率の低下をしめしているが,東京都の死亡率がより急激に減少しているのは,いかなる理由によるのであろうか。また,金は脳卒中の死亡率を職業別に観察して,昭和30年,男女総数の訂正死亡率の順位を,"農林,漁業従事者及び類似職業従事者"が第1位をしめ,第2位は"採鉱,採石従事者"であり,第8位の"管理的職業従事者"に次いで最下位が"事務従事者"であると述べている3)。
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