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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生23巻3号

1959年03月発行

雑誌目次

綜説

英国のPublic Health Nursing

著者: 関悌四郎

ページ範囲:P.173 - P.179

 英国の地方自治体で行われるHealth Serviceで,そこに働く主として婦人の仕事を総括的にこのように呼ぶものと考えていただきたい。必らずしもせまい意味の看護事業にかぎるわけではない。
 いうまでもなく,日本では保健所を中心として働く保健婦の仕事がこれに相当する。ここでは両者の比較を考えながら英国の事情を述べ,問題点をみてゆきたいのだが,はじめにP.H.Nursingの中のいろんな職種を簡単に述べる。

マラヤ連邦の公衆衛生

著者: 浦田純一

ページ範囲:P.187 - P.192

I.マラヤ連邦の概観
 昨年9月新たに独立したマラヤ連邦は既に古くから日本に馴染の地ではあるが,戦後久しく日本人の入国が禁止されていたことではあり,本論に入る前に参考までにその概観を述べることと致したい。
1)地勢
 アジア大陸の東南に突き出したマラヤ半島の南半部を占め,長さ約450哩,巾は最広部で約200哩を有する。面積は漸く本州の半分位である。主要山脈はこの半島を縦に,どちらかといえば西海岸に近く立つている。なお,その一支脈が東部三州の海岸に向つて走つている。従つて,北半部は山岳地帯で3,000呎以上の高原地帯もあるが,スランゴール州からは山岳も次第に低くなり,ジヨホール州の北部からは平地となつている。山岳地帯に続いて岡の多い平野が広けるが,この平野は数多くの河や峡谷で小さく区切られている。海岸平野の海に面するところは狭い帯状の湿地帯で境されている。

最近の人口問題

著者: 舘稔

ページ範囲:P.194 - P.198

 1.
 1958年ほど日本で数多くの国際会議が開かれた年は恐らくこれまでになかつたであろう。またこれ等の国際会議がほとんどすべて大なり小なり世界やアジアの人口問題に触れたこともこれまでになかつたことである。こうして今や世界の人口問題がその焦点をアジアにしぼつて,人口問題に対する国際協力がいよいよ本格的活動の段階に入つたことを痛感せざるを得ないのである,先ず,直接,間接にわたくしが関係をもつたこれ等の国際会議の印象を簡単に誌してみよう。これ等はやがて世界の人口問題史上必ずや特筆さるべき重要な記録に連なるとみられるからである。
(1)1958年7月28日−8月8日,国連・技術援助局,エカフエ,ユネスコおよび日本政府が組織して地域計画セミナーが東京,産経会館で開催された。エカフエ地域12カ国が専門家をこれに派遣した。近い将来に予想されるエカフエ地域諸国の爆発的人口増加が地域計画の基本的事実として注意を集中した。討論指導者としてこれに臨んだシカゴ大学社会学教授P. M. Hauser博士の造語によればこの地域は既に"過剰都市化,over-urbanized"の状態にある1)。すなわち,都市が必要とする以上の人口が都市に集積しているというほどの意味であろう。

ねずみの生態—特にドブネズミ群の動態について

著者: 長田泰博

ページ範囲:P.199 - P.204

 我々の研究所内のある建物に棲息しているドブネズミ(Rattus norvegicus)の生態を観察しているうちに,彼らがある程度群をなして生活していることに気がついた。そして一定の範囲内に幾つかの集団があり,その群の構成や勢力範囲の如きものにも,かなりの消長がみられる。又一方屋外飼育場内で,閉鎖的環境の下にあるドブネズミ集団が,どんな構成と動態とを示すかを観察しているが,そこに色々興味深い動きのあることも分つてきた。そこでこれら観察から得られた結果をまとめてみることにした。

各国の保健所

米国の保健所—母子衛生活動を中心として

著者: 船川幡夫

ページ範囲:P.180 - P.186

 米国に於ける保健所――といつて,さて何にあたるだろうと考えると一瞬戸惑う。日本でも都道府県の保健所あり,政令市のありで多少相異もある。米国のように広漠たる地域に,風俗習慣の異る多数の種族を擁した国で,しかも,州の独立性の強い国で,一律に,保健所はこんなものであると云い切るのは困難である。母子衛生を中心にして,公的の機関で,如何なる組織で,どのように行われているかを,短期間の滞在中に知り得たことがらをもととしてのべてみたい。

原著

鹿児島沖繩間定期船の船舶飲料水検査成績

著者: 前田弘近 ,   門松佐夫郎 ,   小川四郎

ページ範囲:P.205 - P.208

 現在鹿児島沖繩間には沖繩丸(1,579屯)及び那覇丸(1,072屯)の両貨客船が定期的に就航している。前者は1956年,後者は1954年共に尾道造船所の建造である。筆者らは船舶衛生保持上の見地から,これら船舶水槽の飲料水について検査を行つたので,その成績を報告する。

東京都内電々公社職員に於ける鉤虫感染の3年間に亘る疫学的考察

著者: 春田孝正 ,   矢島ふき

ページ範囲:P.209 - P.212

I.緒言
 都会における寄生虫の淫浸は年々低下しつつある様であるが,猶,無自覚の状態で保有しているものがあり,我々が先に報告した昭和30年度東京都内勤務電々公社員に於ける集団検便の結果でも,鉤虫4.9%,蛔虫8.4%の感染率を示している。
 我々は,引続き昭和31年度,32年度にも管内各局の集団検便を実施し,一応の成果を得,その綜合成績について疫学的考察を加えたので,茲に報告する。

眼底所見を主とする高血圧集団檢診方式の研究—第1報.一般社会集団における眼底有所見者の存在

著者: 新井宏朋

ページ範囲:P.213 - P.220

I.緒言
 高血圧,血管硬化の研究は近年卒中死が国民死因分類の第一位をしめるとともに,その数は増え研究内容も多岐にわたり詳細を極めている。高血圧,血管硬化の眼底所見についても現在までに多くの報告があり1)2)患者の病型,病期,予後の決定に眼底所見が重要な事は先人により既に認められている。しかし,これらの報告の多くは病院の入院,外来患者等の特別な環境にある個人を対象とした成績を集計したもので一般社会集団中の眼底有所見者の実態や,それに対する対策等の集団の健康管理を目的とした研究は非常に少い。
 私は高血圧,血管硬化の予防医学的研究をこの方面より実施しているので,ここに現在までの知見を報告する。

生徒を対象とした健康教育の内容に関する考察

著者: 大山昭男

ページ範囲:P.221 - P.224

緒言
 健康教育を行うにあたつて,限られた時間と機会に,より効果を挙げる為には,どの対象にはどうゆう内容を教育するのが最も適切であるかを予め知つておいて,夫々の対象に応じて,その対象が最も要求し最も期待している内容を要領よく解明してやるのが上策と言えよう。
 この意味に於いて,健康教育の対象として重要且つ適切な年令群と考えられている中学及び高校生徒を調査し,彼(女)等の健康管理,並びに健康教育をする場合には,如何なる内容を取上げるべきかについていささか知見を得たので報告する。

炭鉱労務者の高血圧に関する研究—第1報.血圧分布および高血圧者の出現状態について

著者: 曾山幸夫

ページ範囲:P.225 - P.227

 炭鉱は他産業に比し,作業場が数百メートルの地下である関係から特殊な気候を形成し,坑内深度が大なるにつれて高温多湿となり気圧も幾分上昇する。比ような環境下で労務者は重労働に従事しているので,酒類の常飲者も多い。故に炭鉱は高血圧発生の素地となつているように考えられる。
 著者は,今回九州中部に位置する三池鉱業所M鉱従業員を対象に血圧検診を行つたので,その成績を報告する。

文献

集団災害の精神医学的考察,他

著者: 芦沢

ページ範囲:P.179 - P.179

 精神医学は惨事が起る前に適当な計画と教育をすることにより,集団的恐怖を予防することができる。医療関係の専門職の人々はこの点大きな役割を荷つている。惨事が起つてからは状況をなるべく早く報道し,士気を鼓舞することが大切であり,リーダーシツプの確立が最も重要な事になる。リーダーは地域社会の中から出た方が概して人心は安定し,協力的になる。又,災害時には現場に移動精神科ともいうべきものがあつた方がずつとよい。精神症状を呈した人々を一カ所に集めたり,家に帰してしまつてからでは治療のチヤンスを逃してしまうことは第二次大戦当初の苦い経過からも明らかである。
 精神病の既往歴のある者や,情動不安定の者をより分けておき,災害が予知される場合は,前以つて避難させることはパーソナリティーの障害を予防するよい手段である。鎮静剤や精神安定剤の投与も悪くないが,個人個人の症状に応じて処方されるべきであつて,無差別に与えるのはよくない。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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