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綜説
国民皆保険と公衆衛生
著者: 黒木利克1
所属機関: 1厚生省大臣官房企画室
ページ範囲:P.262 - P.264
文献購入ページに移動昭和32年・33年の両年にかけて,医療の国民皆保険の推進という既定方針は,各種の面で逐次具体化された。すなわち,全国民に対する医療保険の適用を目途とする国民健康保険全国普及計画は,32年度を初年度として実施に移され,医療保険の普及率(適用人口の総人口に対する比率)は,31年度末69.7%,32年度末74.6%と,年年上昇してきた。33年に入ると,全国46都道府県のうち100%の普及を示す県が7つを数えるに至り,すでに90%を越える普及率を示している県も2,3に止まらない。また,市町村の国民健康保険実施義務,国民皆保険態勢確立のための国の責任の明示(療養給付費の2割を全市町村につき一律に負担すること,療養給付費の5分に相当する調整交付金を新たに設けること)等を内容とする新国民健康保険法および同法施行法が,33年12月,第31回国会でようやく成立し,国民皆保険推進の基盤が確立されるに至つた。もとより,全国に国民健康保険を普及し,あらゆる地域の住民を名実ともに疾病の脅威から守ることは,必ずしも容易でなく,給付水準の向上や保険財政の均衡の確保という問題点の解決には,多大の努力を要するであろうが,上に述べた所から察せられるように,国民皆保険の推進は,着々進みつつあるといえるのである。
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