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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生23巻6号

1959年06月発行

雑誌目次

綜説

英国における大気汚染問題(その1)

著者: 坂部弘之

ページ範囲:P.353 - P.363

I.はしがき
 著者は英国の大気汚染問題を研究するためWHOのフエローとして1958年1月より4カ月間ロンドンに滞在した。本稿はその時までの英国における大気汚染問題の発展とその当時における問題について概略をのべたもので,その後の発展については触れていない。なおAlkaliActとその運営についてはまた別の機会にゆずることにした。

保健所活動の合理化に関する研究

著者: 橋本正己 ,   重松逸造 ,   林路彰 ,   岡田菊枝

ページ範囲:P.364 - P.377

I.緒言
 保健所は,衛生行政ないし公衆衛生の第一線機関として,その活動はわが国の公衆衛生活動の根幹をなすものであり,また,近年国民皆保険を中核とする医療保障制度の進展に伴い,その健全な発展の基盤ともいうべき重大な使命を負うものである。
 しかしながら,保健所活動の現状は,昭和32年4月行政管理庁による「保健所に関する公衆衛生行政監察結果報告」の中にも強く指摘をされているように「脆弱な実施態勢のもとに,不相応に広汎な事務を無統制に負わされている」のであつて,このような現状を打開して,科学的行政として保健所の管理,運営を推進するためには,まずその活動の実態を客観的,数量的に把握して,科学的な根拠に基づいてその運営の合理化を図ることが焦眉の急である。

う歯の予防の2〜3について

著者: 丹羽輝男

ページ範囲:P.387 - P.392

I.歯科衛生と「う歯」
1,歯科衛生の意義と内容
 「う歯」の予防は歯科衛生の重要なる一分野である。歯科衛生は口腔衛生ともいわれている。またDental hygiene,Oral hygine,PublicHealth Dentistry,Dentistry in PublicHealth,Dental health,Oral health等の語があるが,これ等は同一視されている。
 斉藤博士は公衆衛生歯科緒論(1949)において「身体の一器官としての歯を通じての全身の衛生という」定義を下している,従つて歯科衛生というのが妥当であろう。

今後の保健所活動をめぐる諸問題

保健所活動の現状と問題点に関する考察

著者: 竹村宏之

ページ範囲:P.378 - P.381

1.序論
 戦後十年余を経て,わが国の公衆衛生の発展はめざましいものがある。1例を示せば,結核死亡率の激減が挙げられる。それに伴つて,社会環境の複雑化その他により,衛生に対する要求はぼう大なものになつてきた。しかし,わが国ではこれらの仕事の非常に大きな部分が保健所に負わされているのであつて,年々増大する要求量の下に,あえいでいる感が深い。しかし,始めからこのような状態に保健所があつたのではない。設立当初はその要求に対して妥当な形で建てられたのであるが,年々の情勢の変化によつて,現状では運営管理上かなりの矛盾を含んでおり,保健所運営について再検討が望まれるようになつてきた。
 衛生のプログラムには,原則的に,1)質的,内容的に,どのプログラムが必要であるかの考察,2)量的,方法論的考察の2方向があり,この両者は保健所活動全般に同時に与えられなければならない。これを具体的に示せば次の 5項目になる。すなわち,a)問題の探知b)行うべき業務量の測定c)行いうる業務量の測定次でb)とc)との間のギヤツプを,d)業務の重点指向によつて満すべきであり,更にそれらと平行して,e)地区組織活動の活用を図らなければならない。

医療と公衆衛生の結びつきを中心に

著者: 塚本宏

ページ範囲:P.382 - P.386

 昭和22年の「新保健所法」以来,10年余の経験をもつ保健所の活動が,今日,1つの転換期に直面していることは,多くの公衆衛生関係者の認めるところであり,保健所のあり方をめぐつて,各方面から活溌な論議がかわされ,一応出つくしたかの感さえあるとも云われている。これらは,その観点或は立場から,次の2つに大別されてよいと思われる。即ち,1つは,保健所のもつ組織,人員,予算,設備,業務などの諸条件を前提として,保健所をいかに効率的に運営していくか,云いかえれば,保健所の管理と能率の問題であり,他は,保健所の現状に立脚しながらも,あくまでそれに捉らわれず,保健所をめぐる社会情勢の動きに即応したあり方を検討し,将来のあるべき姿を求めようとするものである。以下,後者の立場から,とくに2年後に約束されている国民皆保険の完成を大きな背景とする保健所のあり方を考えてみよう。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・2

環境衛生(1)—空気・衣服・住居・公害

著者: 北博正

ページ範囲:P.393 - P.395

 本学医学部の衛生学公衆衛生学の教育は衛生学及び公衆衛生学の両講座により,1年から4年まで引続き行われ,表題の項目は2年の前半,週1回2時間,計約16回をあてており,1年の統計学(方法論),人口学,優生学に続いて,いわゆる狭義の衛生学の一部として登場するわけである。しかし,現在の医学生は進学課程入学の当初から,大部分が臨床医をめざし,すでに専攻科目まで一応きめている者も珍しくないので,このような項目について,あまり興味をもたない傾向がある。
 そこで教育効果をできるだけあげるためには,工夫を要する。私は学生の大部分が将来,臨床医になるという前提のもとに,教育内容をできるだけ臨床と関連させ,また臨床医になつても役に立つような話題をえらぶよう努力している。即ち研究者としての立場と教育者としての立場を使いわけなければならないことは厄介なことであるが,public health mindedの臨床医を育てることを第一義的に考える教師としての責任を果したいと考えている。

原著

全地域住民の鉤虫感染率の推測について

著者: 矢島ふき

ページ範囲:P.397 - P.398

I.はじめに
 戦後我国の農村衛生の問題として,寄生虫特に鉤虫感染の重要性が指摘され,地方自治体または青年・婦人団体等による地区組織活動が,少しずつ展開されていることは誠に喜ばしい。農村地域の鉤虫予防対策を行うに当つては,まず第1に地域の鉤虫感染状況を把握することが必要で,このことなしには予防対策の必要性を見極めることさえも出来ない。また事業計画,予算措置等を適切に行う上の重要な基礎資料として欠くことが出来ない。そしてこの段階では個々人の感染の有無は必ずしも明らかでなくともよい。この様な時には一部の住民を抽き出して標本とし,この検便を行つて,全地域住民の鉤虫感染状況を推測することが出来れば非常に便利である。ここで如何なる標本を抽き出したらよいか問題となつてくる。統計学の教える方法に従うならば,全住民の名簿を作つて,一定の抽き取りの比率で,機械的にとり出す方法や,全住民を職業別(生活型別)に分けて,それぞれの群から,前と同様にとり出す方法等,種々考えられる。然し無組織の住民に対してこの様な検査方法は机上の企画として優れていても,農村という社会の実態に即してみるならば,殆んど実行困難な方法である。

問題児に関する調査

著者: 大山昭男

ページ範囲:P.399 - P.402

I.緒言
 問題児対策は今日学校保健の課題としてのみならず,公衆衛生上の重要な分野を有するにも不拘,その施策は未だ極めて消極的であつて,衛生行政の進展を阻む大きな障害ともなつている。対策の隘路として種々の理由が挙げられるが,既に最初から解決し難いと言う先入感に支配されて,再検討の努力と機会に恵まれずに取残されているかの感さえある。全国的にも問題児の実数を確実に把握した調査は極めて少い。
 かかる意味から,小規模ではあるが,山村を主とする岐阜県内の一郡について,義務教育課程者内に於ける問題児の数を調査したので報告する。

握りめしによるブドウ球菌食中毒

著者: 辺野喜正夫 ,   善養寺浩 ,   北村久寿久 ,   鈴木昭

ページ範囲:P.403 - P.405

 ブドウ球菌による食中毒の原因となる主な食品として,第1に乳製品(クリーム,乳菓子類)があげられるが,わが国においては,食生活が欧米と異るために,魚肉ねり製品(カマボコ,サツマアゲ等),食饀,ウグイスマメ,豆腐,ミツマメ,等もしばしば原因となつている。しかし古くからわが国で携行食品として常用されている握りめしによる食中毒例については,まだ報告されていない。
 握りめしは他の原因食品に比べて,菌の増殖には比較的不利な食品といえるが,原因菌の濃厚な汚染や保存の不適切な場合は,中毒を起し得るものであることを経験した。

高血圧の統計学的観察(第1報)—平均血圧について

著者: 古川三雄

ページ範囲:P.406 - P.407

I.はしがき
 高血圧の統計学的観察をおこなうにあたり,まず,平均血圧について考えてみたい。平均血圧については,血圧研究者の間で,常に問題になつてきたところであるが,統計学的には,とくに縮期圧,弛期圧との関係において,平均血圧が,これらを代表出来るかどうかということは重要な課題である。
 人によつては,縮期圧は標準血圧より低いが,弛期圧は標準血圧より高いとか,弛期圧は標準血圧より低いが,縮期圧は標準血圧より高いというように,いろいろの型が見られるのであるが,これを,果して高血圧にいれるべきかどうかは慎重に検討されなければならない。

文献

大学における職業衛生,他

著者: 西川

ページ範囲:P.386 - P.386

 医科学生に対する衛生学,公衆衛生学の教育はいかにあるべきかということが,現在この「公衆衛生」誌上に連載されている。職業衛生を除外するわけにはいかないと思うのは筆者のみではないと思うが,職業衛生の展示場ともいうべきものが提示された。それは綜合大学であつて,筆者はミネソタ大学における職業性疾患の発生状況を公けにした。大きな大学構内には殆んど一般事業場と同様の規模に匹敵するほどの工場をもつているし,また作業の内容も大学ほど多岐にわたるところはないからである。造兵部門での鉛中毒,微粒子測定にたずさわる研究者のベンゾールばく露,印刷工場における鉛と有機溶剤による障害,営繕課には熔鉱炉の排ガスがあり,地下の車庫には一酸化炭素がある。ジエツト・エンジンやジエツト用燃料の研究部では強大な騒音を発している。実験室によつては水銀を多量に使い,四塩化炭素の誤用をしたり,駆虫用の有機燐剤を使つたりしている。軒なみに研究室をたずねると,火傷や災害の予防,環境衛生,放射線による障害予防,建築物の安全管理が必要なことが見出されている。わが国の大学がミネソタ大学より保健管理に留意しているとは思えない。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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