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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生23巻9号

1959年09月発行

雑誌目次

綜説

コミュニティ・オーガニゼーションの理論について—保健福祉地区組織活動を進めるために

著者: 牧賢一

ページ範囲:P.529 - P.534

I.保健福祉地区組織育成計画発足の意義
 厚生省は34年度の予算において“保健福祉地区組織育成強化費”なる新しい費目を組んだ。その金額は僅かに2800万円であるが,これをもつて“保健福祉地区育成中央協議会”なる新団体を結成して助成し,保健福祉地区組織活動の指導推進を行わせることになつた。このことは,わが国の保健衛生及び社会福祉の対策を進める上に次ぎの如き極めて重要な意義をもつものとして,われわれは,注目しなければならない。
 即ち,政府がこのような予算を組みその計画を発足せしめたことは,

育成協の社会的役割—保健福祉地区組織育成中央協議会

著者: 黒木利克

ページ範囲:P.535 - P.539

I. C. O. の世界的流行
 C. O. すなわち保健福祉のための地区組織活動(Community Organization for Health andWelfare)は,最近における世界的傾向である。昨年11月わが国で開催された国際社会事業会議においても「住民の保健福祉のための社会資源(social resourses)の活用」とか「地域社会における指導者(leadership)」というのがその重なるテーマであつたし,5年前カナダで開催された同会議では「保健福祉の個人及び地域社会における自立(self-help)」が唯一のテーマであつた。またその前々年インドで開催された同会議では「生活水準・地域開発(Community Development)地域センター」が主たるテーマであつた。
 更に保健福祉に関する最近の外国文献を見ても保健福祉のための地区組織活動に関するものが多い。

地区に於ける保健指導—綜合的な農村厚生指導

著者: 宮本璋

ページ範囲:P.540 - P.548

 私は昭和13年頃より農村厚生の諸問題に関心を持ち,農村に入り込んで色々仕事をして来た。戦後民主化の名に於いて,或は科学思想の普及面に於いて,農村の姿が種々に変貌しつつあるのを見るにつけ,戦前に農村に対して持つた親近の度合が更に深まつて来たのは当然でもあつたが,当東京医科歯科大学に於ける農村厚生医学研究所の設立もあり,今私共が初めて農村に入つた当時を振り返つて見て感慨無量でもある。私が農村に入つた初めは若気のいたりもあつて,健康診断をしたり,栄養の指導をしたり更には栄養源の自家自給を計画したりして随分夢を持つたりした。しかし実際に農村の隅々を歩き廻つて見ると,生半可な知識を振り廻した保健指導だけでは決して農村は良くならない事を知り,農村に山積する諸問題や根強い陋習を目のあたり見るにつけ,農村そのものの実体を多角的に把握しなければ,ほとんどの農村指導は空虚に等しいものだと言う事を痛感した。私が都会に育つた関係もあつたが実際農村に入れば入る程全ての問題の根底が極めて深いものであり,これの1つを解決するにも容易な事ではないと,時には絶望感にさえ襲われた事もしばしばあつた。こうして何年間かの歳月はまたたくうちに経過したが,現在考えて見るとその当時毎月一度は必ず何日間か農村に寝起きして自分の目で農村をよく見た事が今になつても非常に為になつていると考えるようになつた。

日本のガン運動のあり方と現状

著者: 遠山孝

ページ範囲:P.549 - P.554

I.協会設立までのいきさつ
 与えられた題はまことにかたいもので,果してこれからしたためる内容がこの表題にあてはまるか否か一寸心配ではあるが,対ガン運動に入りこんだ私の気持ちと今後のことについてえがいている夢を卒直にしたためてみます。
 おもえば昭和32年の9月,私の父が肝臓ガンで死んだ翌月かに,朝日新聞論説主幹笠信太郎氏が当時朝日新聞社の企画部長であつた私を自室に招いて
 「老人病研究の渡辺定博士と,厚生省の平山博士とが見えて"ガン制圧に対する運動"を朝日新聞社が取り上げて援助してくれないか?」との話があるが君はどう思うかと問われたのである。

放射能障害と血液—全国放射線取扱者血液所見について

著者: 日比野進 ,   塚本英世 ,   三浦基 ,   加賀好

ページ範囲:P.555 - P.562

I.緒論
 X線やラジウムを取扱う人々に放射線の障害が発生することは既に1911年V. Jagie他1)により報告され,又,1937年Hans Myerにより,Strahlentherapieの特別号 "Ehrenbuchder Röntogenologen und Radiologen aller Nationen" に169名の放射線による犠牲者の氏名が記載せられている。
 我が国に於ては,1922年斎藤氏の報告2)以来多くの報告がみられ,最近では後藤氏3)が全国放射線取扱者の調査を行つて,その重大性への認識を昻めた。

座談会

鉤虫対策をめぐる諸問題

著者: 小野田孝義 ,   岡田貫一 ,   大串茂 ,   大竹省吾 ,   小宮義孝 ,   佐々木孝 ,   星直利

ページ範囲:P.565 - P.575

 小野田 本日は寄生虫の専門で,また主として鉤虫を扱つていらつしやる近県の各保健所長さんの一部の方がたにお集まり頂きまして,私もそのなかの1人ですが,一応地元というような関係で,司会を承つた次第でございますが,どうかよろしくお願いいたします。
 なお本日で寄生虫学会が終つたわけで,お疲れのところを特に小宮先生のご出席をお願いして,お話をすすめたいと思います。いろいろ鉤虫にかんする実験,調査報告等に基きまして,私どもといたしましては,これを公衆衛生の面に,あるいは農村民の健康の保持,あるいはまた生産力の向上,あるいは行政上の実際の問題として,保健所事業にいろいろそういつた学問的の成果を活用し推進していかなくてはいけないと考えております。特に鉤虫,ならびに鉤虫症の問題は,専門家の間では近頃,相当に重要視されているように思いますし,また,このたびの学会を承つておりましても,やや鉤虫も減退しつつあるような傾向だとはいわれておりますが,一般にはまだまだ衛生行政の面でも保健所事業といたしましても関心がうすいのではないかと考えられる次第でございます。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・5

母性小児衛生

著者: 辻達彦

ページ範囲:P.577 - P.580

まえがき
 本学における衛生,公衆衛生学の講義は1年3学期に統計学,2年に衛生学及び寄生虫学,3年(全期)及び4年(1学期のみ)に公衆衛生学というように行われてきた。主題の母子衛生は3年の2学期に計4回(8時間)にわたつて行うことが多い。元来母子衛生は臨床との結びつきがつよいので3年乃至4年生に行うのが適切であると考えている。
 8時間位で母子衛生全般について講義することは出来ないので,臨床医としてたつひとの多い地方大学の実状から自づと重点的にテーマを選ぶ必要がある。広義の母子衛生の中には学校衛生,歯科衛生,精神衛生等もふくまれるのが常識であるが,これらについては執筆分担は別のものとして主題のなかから省いた。

原著

療養所よりみた集団検診

著者: 黒沢和夫

ページ範囲:P.581 - P.583

はじめに
 健康管理が徹底的に行なわれるようになつてから,結核の集団検診で発見されて入所する患者が多くなつてきた。現在ではかかる集検入所者が半分以上をしめている療養所が相当多いと思われる。私は集団検診によつて当所に入所してきた教員について若干の調査を行なつたのでその一部について記そうと思う。公衆衛生方面の方々に少しでも参考になれば幸である。

文献

職業性の癌—疫学的研究方法,他

著者: 鈴木

ページ範囲:P.539 - P.539

 企業体において職業性の癌を疫学的に研究するためには,すべての癌の記録(発生部位,組織学的所見,転移の有無,臨床所見等)が正確に長期間にわたつて集められる必要がある。企業の規模が10万人を越すような場合はともかく5年〜10年に及ぶ記録がないと分析不能のことが多い。この場合転移癌と原発癌を明瞭に区別すること,癌と他の良性腫瘍とを見分けることなど診断の正確さが常に確保されなければならない。
 ついで原発癌について,年×人数あたりの発生率を計算し,これを全人口についての発生率と比較する。この計算と比較の過程において,癌の発生率が一般とくらべて有意に低い時,および有意に高い時には次のような検討が必要である。すなわち統計全体を分解し一つ一つを確かめ,記録もれ,誤つた申告,診断の有無を明らかにする必要がある。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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