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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生24巻1号

1960年01月発行

雑誌目次

特集 保健所管理

保健所における営業関係業務の管理

著者: 渡辺宏

ページ範囲:P.13 - P.23

I.緒言
 昭和22年現在の保健所法が成立し,新しい時代の新しい保健所が生れたが,その際加わつた営業関係業務は,それまでの健康相談所的性格の保健所に,行政庁としての性格を附与し,それ以後の保健所のあり方に大きな変容を来した。
 其の後,保健所にはあらゆる衛生関係の業務が加重され,地方に於ける衛生の中心的機関として大きく成長して来た事は,周知の事実であるが,所謂営業関係の業務は,営業者の激増,と場の新設及びと殺頭数の増加等に伴い急激にその業務量を増加しているにもかかわらず,依然として従来の様式と方法とに依り運用され,加うるに職員数も之に比例して増加せず,為に法の命ずる処とはおよそかけ離れた業務の実施率を示している。

綜説

わが国の衛生行政の推移とその特質

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.1 - P.12

I.緒言
 わが国における衛生行政は,その濫觴を医制発布(1874)に求めるとして,すでに85年を経過しており,その歴史は決して新しいものではない。また,衛生行政の指導理念やその具体的な諸施策,諸制度などは,それぞれの時代の社会的,経済的な諸条件の深い影響を受けながら発展したものであり,この意味で明治の開国以来約1世紀のわが国の歴史がその後進性や国際情勢下における特殊な立地条件のためにはげしい変化を含んでいるのと軌を一にして,衛生行政の推移もきわめて変化に富んだ質的内容を有するものといえる。とくに,第二次世界大戦後におけるわが国の政治,経済,社会,教育などあらゆる領域における民主主義の線に添つた根本的な改革は,当然のことながら衛生行政の分野にも基本的な改革をもたらし,その後10余年の間における公衆衛生の進歩発達は,史上にも余り類例がないといつても過言ではないと思われるほどである。
 しかしながら,一方において昭和27年講和条約の発効とともに,あらゆる分野における占領政策の是正や反動的な流れの影響により,衛生行政の分野においても種々の意味における後退が憂慮されていることは事実であり,さらに他方において国民皆保険の方式による医療保障や国民年金による所得保障など,一連の社会保障制度が新しく日程に上つており,このような社会的条件を背景として衛生行政もまた時代の要請に応じた新しい段階に止揚されるべき時期に直面しているといえる。

第2回保健所管理セミナー

1.結核予防—未発見の結核患者を効率的に発見する方法—発見患者の受療を促進する具体的方策

著者: 加倉井駿一 ,   田中明夫 ,   重松逸造 ,   橋本正己 ,   石田宗治 ,   佐藤嘉津馬 ,   中原玄典 ,   渡辺宏 ,   松浦道博

ページ範囲:P.24 - P.39

発題講義の要旨
田中明夫講師―わが国の結核の現状―
 資料(結核の現状・厚生省公衆衛生局結核予防課)について,主として昭和33年度における結核実態調査を中心として,わが国の結核の現状について説明(本稿末尾参照)。

2.母子衛生—未熟児対策—妊産婦保健指導—母子健康センターの運営

著者: 松尾正雄 ,   船川幡夫 ,   林路彰 ,   橋本正己 ,   丹下宗一 ,   長沼誠喜 ,   樋口田鶴 ,   西部行雄 ,   三浦清

ページ範囲:P.40 - P.44

 松尾講師 母子衛生の動向中より今後とりあげて行かねばならぬ問題を中心に申し述べたい。母子衛生についてまだまだやらねばならぬことが沢山ある。まず,乳児死亡率についてみると年々下降しており,昭和22年頃出生1000につき76であつたものが,今年は34〜35で順調なカーブであるが,外国に比し高くこの程度でよいとはいえない。米国26,カナダ31,デンマーク25,英国25で改善の余地がある。この率の中で今後とりくんで行かねばならぬ問題は,各乳児を月齢別にみて平均して下降していないことである。月齢の高いものは改善されているが,新生児など月齢の若いものは改善されていない。その結果乳児死亡中の新生児死亡の率は,段々高くなり約57%を示している。原因的にみて出生後の肺炎,下痢腸炎,伝染病については改善されたが,出生前,出生直後のものは殆んど改善されていない。先天的,出生時の原因に今後の重点を向けたい。従つて妊産婦対策が結論として出てくる。先天的な対策を行政的にとりあげることには学問的にいろいろの問題あり,医学とタイアップして行きたい。妊産婦対策として妊産婦の死亡は外国に比し高く,20年前には米英に比し低かつたが,今日では日本のみ妊産婦の死亡が高く,出生1万に対し17で,その前後を低迷している。
 妊産婦死亡の原因としては妊娠中毒,子宮外妊娠,出血が3大原因である。

3.成人病対策—成人病対策における保健所の役割

著者: 矢野尚二 ,   山形操六 ,   松田心一 ,   宮入正人 ,   平山雄 ,   橋本正己 ,   辻正治 ,   和田元震 ,   長谷川豊男 ,   塩沢満 ,   掃部俊造

ページ範囲:P.45 - P.51

発題講義の要旨
 山形操六講師 成人病の定義:成人病とはadult diseasesの直訳である。老化現象に伴つて現われる疾病であるが,老人性難聴などはこれに入れない。
 現在死因順の最も高い脳卒中,ガン,心臓病などをとりあげている。老人病といわず成人病という理由は,(1)癌は40〜50歳の死亡が最も多い。この年齢層に焦点をあわさねばならぬが,これらの年齢は老人とはいえない。(2)将来公衆衛生の進歩とともにこの疾病を予防する対策はさらに低い年齢層から開始されねばならなくなるであろう。(3)対社会的にも成人病対策を大きくつかむ方が老人病対策という表現よりもよい。

4.保健婦事業—保健所保健婦と市町村保健婦の効果的な協力態勢—家庭訪問の効果的な計画健

著者: 金子光 ,   永野貞 ,   岡田菊枝 ,   橋本正己 ,   窪川亘 ,   山内正人 ,   小栗史郎 ,   加藤東二郎 ,   小糸賢太郎

ページ範囲:P.51 - P.54

 金子講師 市町村保健婦と保健所保健婦との関係について。
 これは,今さら新しい問題ではないが,今もなお懸案が重り続いている。この問題の解決には,過去の歴史をふり返らねばならぬと思う。

5.環境衛生

著者: 高野武悦 ,   大橋文雄 ,   橋本正己 ,   田中正一郎 ,   松井武夫 ,   辻勝流 ,   本間達二 ,   助川信彦 ,   田島文雄 ,   佐々木健夫

ページ範囲:P.55 - P.59

 座長 このセミナーは全体で3時間であるが,前半に環境衛生課および,水道課の関係をやり,後半に食品関係を討議したい。まず環境衛生課の田中技官からお願いする。
 田中講師 環境衛生課の主な仕事としては,まず第1の問題として清掃事業がある。御承知のように農村における肥料としてのし尿の需要が急激に減つてきたため,し尿を收集しても後始末が充分できない現状で,し尿処理施設も全般的にゆきわたつていない。

原著

出生体重とその後の発育に関する研究

著者: 宇留野勝正 ,   岡田芳子 ,   三須昌保

ページ範囲:P.60 - P.62

I.まえがき
 身長や体重の発育の程度の劣等なるものが単純に所謂虚弱小児として取扱われることがしばしばあり,保健指導の実際にあたつてもその発育不良の原因を究明することは必要なことである。
 Ylppö1)によると未熟児の発育遅延は出生第1年には著しいが,身長も体重も出生後数年で正常になるとし,久慈,砂田2)等も身長は3年,体重は5年で正常になると言つている。しかしIllingworth3)は1〜12年の小児で対照児は66%が標準以上の体重であつたのに未熟児(2750g以下)では14%に過ぎなかつたとし,斎藤,辻4)等の観察でも未熟児の体重発育の遅延は小学校時代までつづくと報告している。更にT. Brander5)は7〜15年の未熟児で身長,体重は標準に比し,男児では11歳迄劣り,女児では13歳でまだ劣つていたと称している。

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再び研究書の出版について

著者: 金原一郎

ページ範囲:P.63 - P.63

 待望の所 安夫博士の「脳腫瘍」がいよいよ出版されることになつた。A4判974頁・挿図874個・図表157個・18,000円の大冊である。一冊18,000円と云うと日本では最高価の書籍であり,医学書として勿論前例のない豪華版である。もつとも外国の医学書では一冊30,000円や50,000円のものは,そんなに珍らしいことではない。Schmolka:Cytodiagnostik B5判161頁で12,000円に較べれば,まだ安い方である。最近入荷したものではMoellendorff Mikroskop. Anatomie Bd. 4 Teit 4. 31,800円Lubarsch:Handbuch Bd. 13 Teil 3. 29,800円の如きがある。
 それでも研究者にとつては必読書なので,高い本だとこぼしながら買い求めざるを得ないのである。この4月医学書院で開催した外国医書展示会でLubarsch:Handbuch(既刊分だけ562,660円)Bergmann:Handbuch(既刊分だけ248,680円)なと陳列まもなく売切れてしまつた。私が毎度申し上げる言葉であるが(良いものは必ず売れる,必要は高価のものを買わしめる)と云う学術書の鉄則がここでも如実に示されている。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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