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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生24巻10号

1960年10月発行

雑誌目次

綜説

世界各国における成人病対策(その2)—ソ連

著者: 山形操六

ページ範囲:P.521 - P.525

I.衛生行政の組織・機構
 ソ連並びに連邦共和国の衛生行政上の特徴は全国民を対象とした広範囲の医学管理を計画し,その基礎となるべきものとして疾病の治療と予防とを総ゆる面で統合し,国の責任において国民の健康を守ろうとする点であろう。原則として高度の中央集権化の行政を実施して行くわけであるが,実際面では殆んど地方行政に任せる形式をとつている。以下の6項目に関して,それぞれ代表的機能の中心が存在している。
(1)企画・監督……保健省がこれに当つている。ソ連保健省が中心的役割を果しているが,他の15の共和国にも各々保健省があつて衛生行政の責任をとつている。

欧州における母子衛生

著者: 浅野一雄

ページ範囲:P.527 - P.533

 私は昨年10月から本年5月まで世界保健機構(W・H・O)のフェローとして,イギリス,オランダ,西ドイツ,スエーデン,ノルウエーなどの国々の母子保健活動を視察する機会を得た。しかし,この間わずか7カ月ほどの旅行で,これらの国々における母子保健の現状をすべて知ることは困難であるが,これらヨーロッパ諸国における活動のあり方を比較対照することにより,かなりわれわれにも参考になることがある様に思われた。勿論,人口規模においても,社会機構においても,わが国のそれとことなるヨーロッパ諸国の施策をそのままわが国にもちこむことには問題はあるが,彼等の長所は長所として,いかにわが国の現状にマッチした形でとり入れていくか真剣に考えてみたいと思う。たとえば,イギリス,オランダ,スエーデンなどにおける母子保健所の完備,妊婦のExercises and Relaxation(一応,妊婦体操と訳しておく)の普及,合理的な分娩方式,乳幼児保健指導の徹底など,わが国の母子衛生改善のため当然とりあげていかなければならないと思う。また,わが国の妊産婦死亡率がイギリス,オランダ,スエーデン,ノルウエーなどの死亡率にくらべて2倍ないし3倍以上も高率であるという事実は,わが国における妊産婦対策の貧困とともに,やはり社会的レベルの低さが問題であろう。

社会集団の構造と運動法則について—公衆衛生活動の基礎概念としての立場から

著者: 小林治一郎

ページ範囲:P.534 - P.546

 さきに私は,「大都市における地区衛生組織活動について」報告したなかで,「もともと本運動は,自発的な大衆運動である。したがつて衛生行政の枠内だけに留まることなく,実際の社会の,あるがままの状況の中で,客観的な基盤の上に立つて,促進する具体的な条件をさがしもとめ,大衆路線をとりながら,組織論の原則を,正しく適用してゆくよりほかに方法はない。そのためには,まずこれまでの組織論の成果を整理し,その原則を,本運動の場において適用し,内在的かつ流動的に展開することが,本運動にたずさわる者の共同の任務となるであろう1)」とのべた。
 そうした意図から,この小論を書くことになつたのであるが,衛生行政,公衆衛生のなかで,組織論的なものへの志向は,広くみられるところであり,組織論と明示した2)3)ものもすでにみられている。

船舶飲用水の汚染に関する検討

著者: 近藤黎子 ,   柳沢文徳

ページ範囲:P.547 - P.554

I.緒言
 飲用水に関する衛生細菌学的な研究のうち,その地域社会における実態の調査成績は,極めて多い。しかし船舶の飲用水は如何なる理由であるか分らぬが,この方面の細菌学的,化学的にみた実情を検討した成績は,ほとんどみあたらぬ状況で,僅かに東京検疫所の佐藤氏等1)の研究成績があるのみである。
 著者等は全日本海員組合が厚生問題として,船舶の飲用水の衛生問題に強い関心を持ち,衛生学的な見地より,その実情,あるいは改善の対策をおし進めるに際し,協力をして現在に至つているが,ここに,それらの調査研究した成績を総括的に報告する次第である。当然衛生学上問題にならなくてはならぬ点が多かつただけに,本研究によつて,この方面の関心が高まり,船舶飲用水の清浄化運動のもとになれば幸と考える次第である。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・17

衛生統計

著者: 吉岡博人

ページ範囲:P.555 - P.557

 「衛生統計」の講義は,大学を卒業して助手をしていた頃からはじめたように記億する。ざつと20年以上も講義をしていることになろう。そういう意味では,「医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育」の一部としての「衛生統計」の執筆は,きわめて易々たることに思われたが,いざ筆をとつて開きなおつてみると,けつして易々たることではない。しかし,ひき受けた以上,責任をはたさなければならぬので,平生から考えていることをのべて,大方のご批判を仰ぎたいとおもう。
 まず「衛生統計」の定義というか,その内容であるが,これが講義をする教授によつて,はなはだまちまちのようである。しかし,大別すると,2通りになると考えられる。一つは,「厚生の指標」の「国民衛生の動向」のような内容,いいかえると主として人口動態統計について説明するようなわが国のいき方と,今一つは主として衛生学に用いられる統計的研究方法を教えるいき方とがある。

原著

漁夫の循環器集団検診

著者: 阿部捨次郎

ページ範囲:P.559 - P.566

I.緒言
 輓近循環器動態の解明,循環器診療の劃期的発展は驚くべき成果を見るに反し,循環器集団検診の実態はその緒に着いた感で,僅かにScheele,Breslow,Chapman,Storz,笹本,大鈴,守,大野及び広瀬らの業績を見るに過ぎない。
 著者は漁夫の循環器集団検診を実施し,漁夫という特殊条件下の労働と健康の相互規定的関係を解明せんとした。

主要死因を除き得れば小倉市民の平均余命は幾年延びるか(昭和30年)

著者: 坂田守

ページ範囲:P.567 - P.574

I.緒言
 生命表はその国の,あるいは,ある地域住民の健康状態を,綜合的な見地から表わしたものであるが,死亡は総ての死因を一括して取り扱つてあるので,各死因別死亡との関係は不明である。ある死因が仮りにないもの,即ち,ある死因で死亡する者が全然ないものとした場合の生命表を作製するならば,その死因により,いかほど平均余命が短縮されているか,言いかえれば,平均余命にいかなる影響を与えているかを知ることが出来る。すべての死因についてこれを行えば,どの疾病が平均余命に重要な関係があり,いかなる年齢層に強く影響しているか知ることが出来る。
 余はさきに,昭和30年の小倉市簡略生命表を作製したが,それを利用して,今回更に小倉市における主要死因の平均余命におよぼす影響について検討してみた。

文献

自動車事故の医学的考察

著者: 根岸

ページ範囲:P.566 - P.566

 米国では1958年に37,000人が交通事故で死亡し,1,350,000人が傷害を受けているが,軽度の傷害を含めて470,000人の人が交通事故で損害を受けたことになり,全人口の10%が4年間に交通事故で何等かの傷害を受けることになる。交通事故の3大要因は,道路,車両,運転者と考えることができる。しかし,多くの場合運転者の医学的問題は無視され,道路,車両の改善がとりあげられている。著者はこの点に関して若干の考察を行なつた。営業用運転者は就職または採用時に十分な健康診断を受けねばならぬとし,45歳まで2年ごとに,以後は毎年定期検診をおこなう必要があるという。非営業運転者は3年ごと,45歳以後2年ごととしている。心疾患,糖尿病,精神神経疾患等の意識障害の突発する可能性のある疾患者などの除外を推め,若干の問診項目をあげている。性格として事故多発者に多いのは,(1)知能の低いもの,(2)若年者,(3)自己主義者,攻撃的性格,反社会性格,社会に対して無責任なもの等をあげている。また正常者の一時的な感情変動による事故,薬の効果,臨床医学的には視力,耳鼻咽喉科的項目,心血管系,物質代謝疾患,神経精神疾患,アルコール飲料などの関係について論じている。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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