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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生24巻12号

1960年12月発行

雑誌目次

綜説

世界各国における成人病対策(その3)—デンマーク

著者: 山形操六

ページ範囲:P.641 - P.643

 ヨーロッパの各国はそれぞれ特徴のある衛生行政機構のもとにこ施策を行なつているが,私共の眼からみると,人口の少ない国が国民の1人1人に行き届いた行政をやつているように見受けられ羨しく感じる点が少なくない。既に医療保障,社会保障の完備を誇つているので,日本がこのような状態を実現させるのにはあと何年かかるのだろうかと嘆息が出るくらいであるが,しかし実際によく観察すると,彼等は彼等で多くの悩みを持ち行政のおよばない方面になお努力している姿が伺われる。われわれも同じ過程をふんで行くのか,あるいはまた日本の特殊事情が新たな領域を開発して行くものだろうか等と考えをめぐらして行くと,楽しい希望が生じるものである。これらの先進諸国の現状を充分理解した上で,新たな構想のもとに必ずや斬新な諸施策があみだせるのではなかろうかと私はひそかに自信を持つことが出来た。それがどんなものかは即答は出来ないが,9千万の人口をかかえ,小さな国土で多くの人達が競い合つてお互におのれをみがき合うことは,やはりいずれの分野においても必要なことと思う。
 老人に対する思いやりが世界第一といわれているデンマークについて概説をしてみよう。

ノルウエーの結核対策

著者: 清水寛

ページ範囲:P.644 - P.651

オスローを訪ねて
 1960年4月3日,私は早朝のSASでストックホルムのブロマ空港から,オスローのフォルネブ空港へ飛んだ。スエーデンに来てから早くも2カ月は過ぎた,雪に閉ざされていやになるほど夜の長いあの冬は去つて,北欧にも春がやつて来たのである。その春の訪れとともに,私の旅心はしきりに動き,ノルウエーの首都オスローへの旅行を思い立つたのだつた。
 緑の下萠とクロツカスの花。フォルネブからオスローへの道は,どこの国もそうであるように美しい道であつた。両側に立ちならぶ家々の明るいたたずまいが先ず眼に入る。

中小企業における衛生管理の協同化について

著者: 東田敏夫

ページ範囲:P.652 - P.658

I.中小企業の衛生事情
 わが国の産業労働者2,000万のうち,1,200万即ち全労働者の60%は29人以下の小企業の従業員で占めており,労働基準法による衛生管理者が設置されない50人未満の事業場で就業する労働者は全労働者の70%に及ぶであろう(第1表)。
 労働基準監督年報によると,経営規模が小さい企業体ほど,労働基準法違反率が高く,違反事項には,安全衛生関係,とくに危害防止および環境衛生上必要な処置や健康診断の実施をおこたつている事例が多い(第2表)。

新都市造成と保健・医療・福祉サービスの総合計画—新しい型のHealth Center構想

著者: 朝倉新太郎

ページ範囲:P.659 - P.663

はじめに
 現在,保健所のあり方をふくめて,わが国の保健と医療の体系をどう整備するかということが各方面で論議されている。有用な議論を積み重ねて,冷えきつた保健と医療の関係があるべき姿に立ち返えることを何人といえども渇望するものであるが,議論が議論倒れに終らないためには,当面可能な範囲で,当事者相互の話し合いと協同行動を通じ,1つ1つ論理の正しさと,たしかさを検証するという,実証的態度がもつと重視されねばなるまい。その意味で,日本医師会のいう地域社会活動や共同利用施設,保健所の型別再編成,社会福祉協議会が主唱する保健と福祉の地区組織育成,保健所と国保の共同保健計画など,めいめいの思惑は別として,それ自体たしかに前向きの姿勢であり,真剣にとりくむべきプログラムといえよう。特に,大規模な団地や,ここで紹介するNew Townの如く,すべての面にわたつて新しい生活設計が可能なCommunityにおいては,大胆に,意欲的な保健と医療と福祉の総合計画をたて,これを推進する必要性と,またそれを可能にする条件があるのではあるまいか。

わが国における病院の公衆衛生活動の現況

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.664 - P.672

はじめに
 本報告は,昭和34年度厚生科学研究「病院における公衆衛生と医療の連繋方式に関する研究」第一報の概要であり,すでに第10回日本病院学会に発表したものであるが,社会医学研究会の会員にもご参考になるものと思い,あえて再度報告させて頂くものである。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・18

環境衛生(Ⅱ)—空気・衣服・住居・公害

著者: 安倍三史

ページ範囲:P.673 - P.676

 本学では,空気・衣服・住居の講義は衛生学が(一昨年までは公衆衛生学が担当),公害は公衆衛生学が担当しています。ここには私がこれまで2年と3年の学生に試みた講義内容を述べます。
 衛生学公衆衛生学で学生を教育する思想は,北博正教授が環境衛生Ⅰ(公衆衛生第23巻第6号)で述べられたことに同意します。

原著

群馬県沼田市の住民検診に関する報告

著者: 高橋一美

ページ範囲:P.677 - P.682

I.沼田市の地勢
 沼田市は群馬県の東北,上越国境に近い利根川上流地域にあり平均標高1,130m,南北約23km,東西約6kmの細長い山間の1盆地である(第1図)。地域的には沼田地区,利南地区,池田地区,薄根地区,川田地区の5地域に分れ,沼田地区はほぼ中央の台地に存在する市街地であり,他地区は農村および山間地である。
 総人口約43,000人で各地区別の人口は第1表のごとく,沼田地区が約半数をしめ,他地区はほぼ同数で約4分の1となつている。沼田市は昭和29年4月町村合併促進法により旧沼田町と近隣の農村が合併したもので,その産業別世帯数をみるとその性格が明らかである(第2表)。すなわち沼田地区においては農業世帯は僅か7%にみたないが,他地区は70%をしめており,沼田市街地は近郊農村を背景として成立している。

高血圧,血管硬化の眼底所見に関する疫学的研究—特に眼底所見と性,年齢,血圧との関係について

著者: 川上秀一

ページ範囲:P.683 - P.704

I.緒言
 最近におけるわが国の国民死因順位は,脳卒中,癌,心臓病などの所謂成人病による死因が上位を占めている事から,これらによる死亡の減少をめざす研究が,次第に活発になつて来ている。
 この中でも昭和26年以来首位を占める"中枢神経系の血管損傷"には特に重点がおかれ,脳卒中死亡の前段階とみなされる高血圧については,一般国民の強い関心が集まつている。

放射性同位元素投与患者屍体の処理について

著者: 砂田毅 ,   木下正弘 ,   木下商策 ,   服部恵子

ページ範囲:P.705 - P.706

I.はじめに
 人類が原子力を開放して以来,医学方面においてもその恩恵を受ける機会が多くなつてきた。殊に多種多様の人工放射性同位元素が入手できるようになつてからは,これらの生体におよぼす効果を利用して,種々の疾患の診断および治療に広く用いられるようになつた。放射性同位元素(以下RIと記す)を生体内に治療の目的で投与するのは一般に悪性腫瘍患者であることが多く,またこれ等の患者の致命率は概して高い。従つて治療途上でRIが体内に残存したままで死亡する可能性は否定できない。死亡すれば代謝は停止し,残存RIの減少は物理的崩壊にのみ依存する。投与されるRIは物理的半減期の短いものが用いられているが,かなり大量のRIを投与された患者が突然あるいは比較的早期に死亡した場合は体内残存RI量は無視できない。次に医療上しばしば用いられるRIの種類と用量を概観してみよう。

文献

事故の原因と予防/果して精薄児の出生に季節的変動があるか?

著者: 有賀

ページ範囲:P.676 - P.676

 どこの国でも事故死亡は近年次第に増加している。合衆国のペシシルシルヴアニア州においては1958年に5,056人が事故により死亡している。事故による死亡のうちで自動車によるものは人口10万対16.2,それ以外の事故は29.3という数値を示している。合衆国の衛生統計によると毎年10人中3人が大きな事故にあろうと推測しているが,その通りならペンシルヴアニア州では333万人が事故にあうことになる。そこでペンシルヴアニア州においては衛生局に交通事故と交通以外の事故を取扱う二つの課が設けられていて,事故の原因を探るとともに,その予防に当つている。
 事故発生の原因を追求するには病院の報告を利用していて,致命的なものとそうでないものとを比較検討している。この結果によると事故は若年および老年に致命的なものが多く,また男は女より,黒人は白人より高く,切刺傷の事故で生命を失うことは殆んどない。また道路以外の事故発生場所は主に家庭ということになつた。事故の原因としては,身体的,感覚的または精神的な欠陥が認められるものが多いが,その傾向は必ずしも一定ではなく身体的または感情的諸条件が突然交さくしたような時におこることが多い。

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基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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