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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生24巻2号

1960年02月発行

雑誌目次

特集 公衆衛生從事者の諸問題

わが国の公衆衛生従事者の教育訓練等に関する問題点の考察

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.65 - P.72

I.緒言
 近代国家における行政の機能はさまざまの立場から把握されているが,一般にその基本的な要件としては,(1)職員Personnel,(2)予算Budget,(3)組織Organizationの3者をあげることができる。これらは行政のすべての分野に共通する不可欠の要件であるが,中でも関係職員の量と質とを計画的に確保することは,あらゆる行政の分野においてその効果的な運営を営むための最も根本的な要件であるといえる。
 このことは,多種多様の専門技術職員のティームワークによる活動をその本領とする衛生行政においては,とくに他の如何なる行政の分野にもましてその重要性が痛感されるのである1)

公衆衛生関係職員の教育訓練に関する主要参考文献リスト

著者: 橋本正己 ,   斎木敏生

ページ範囲:P.73 - P.85

 本表を作成するにあたつて文献等を求めた「範囲」は国内関係については,医学中央雑誌第91巻(昭和22年1月発行,昭和20年度以降の文献收載)から,第150巻(昭和34年12月22日号)までの「医学史」および「社会医学」の項を参照し,また日本内科小児科中央雑誌の第6巻(昭和30年6月15日)から第15巻(昭和34年11月15日)までの「衛生」の項を参照し,さらに国立公衆衛生院附属図書館および同院衛生行政学部所蔵のものについてこれを求めた。国外の場合については,今回は主として,WHO関係のもの,たとえば "Catalog of World Health Organization Publications, 1947〜1958" の参照および "Seminar On Education And Training of Sanitation Personnel, Tokyo, Japan, 21 October-5 November 1959" における文献等を收載した。同上図書館および学部所蔵のものについては,国内における場合と同様である。
 したがつて,今後さらに,許すかぎりのより広範な立場に立つて,さらに充実したリストの完成をこころみる必要があるであろう。

第3回米国医学協議会に出席して

著者: 川畑愛浩

ページ範囲:P.86 - P.91

 第3回の米国医学協議会の模様を「公衆衛生」にピントを合せて書いてもらいたいとの注文であるが,もともとこの協議会は医学教育全般に関する問題を取扱うためのものであり,会議の全般を通じて「公衆衛生」という言葉はただの一度も話されたことはなかつたのである。従つてこの報告は編集者の企図されたところとはおよそ遠いと思われるが,会議の大体の模様を述べてみることにする。
 医学教育協議会はウィスコンシン州マジソン市にあるウィスコンシン大学で1958年6月から7月にかけて3日間にわたり開かれた。参会者は共産圏を除く世界29ヵ国からおよそ100名の博士と肩書のつく人たちであつた。このうちアメリカ側から参加したのはおよそ30名で,そのなかにはフルブライト委員会のE.P.Lam女史及び終戦後我々にも顔なじみの深いOliver R.McCoy氏の顔も見えた。日本からは私の他に,松林久吉(慶応大学寄生虫),宮川ひよし(信州大学生理),中村恒雄(京都府立小児),寺田晴美(東大解剖)鳥居敏雄(北大内科),高木篤(鳥取大学細菌)及び荻原文次(ウィスコンシン大学)(以上いずれも音よみ)の7氏が参加した。参加した者の数のうえからは日本が一番多く,次にインドの5名,イギリス,フランス,コロンビヤのそれぞれ3名というところであつた。

随筆

公衆衛生従事者の教育について

著者: 橋本善彦 ,   戸田正三 ,   井上善十郎 ,   塚原国雄

ページ範囲:P.92 - P.98

I
 大へんむずかしい題を与えられたが,紙数も限られているので,ここでは神奈川県で過去8年間実施してきた「衛生行政従事者研修」の概略を紹介しながら,2,3考えているところをのべて責任を果させていただきたい。
 神奈川県でこの「衛生行政従事者研修」を大きくとりあげたのは昭和27年度からであるが,まず最初に,これを企画した動機,目的といつたものについて述べてみたい。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・10

老人衛生

著者: 高橋英次

ページ範囲:P.99 - P.101

 「老人衛生」についての分担をお引受したが,実際には小生の処では「老人衛生」という項目の講義を行つていない。講義は医学部1年の冬から第2学年末までの衛生学の時間を担当しているわけであるが,内容は所謂環境衛生と栄養及び食品衛生,それに産業衛生に若干ふれうる時間的余裕しかない。
 母子衛生乃至小児衛生に対して老人衛生の項目があつてよいわけであるが,「老人衛生」という項目を設けること自体についても多少の疑義がないわけではない。何故ならば所謂老人病は老年に達して発病することが多いとしても,実際にはその基礎が老年に達するまでの間において既に築かれていることが多いからである。例えば高血圧にしても脳卒中・心臓疾患にしても,若年時からの衣食住や生活習慣等の如き生活条件によつて漸進的に醸成される場合が多い。もちろん脳卒中や心臓疾患における発作の誘因となるものを防ぐことは老年においても必要であろう。しかし一旦硬化を来した動脈が又元の若い状態に戻ることは考えられない。少くとも現在の医学では甚だ困難である。高血圧は薬剤の使用によつて,一時的に血圧を下げることはできようが,生活がかなり規制されることとなつて,社会生活における活動能力もかなり阻害されるものと解釈しなければならない。

「医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育」についてのアンケート

衛生行政について

著者: 有薗初夫

ページ範囲:P.102 - P.102

 Winslowの定義に従えば「公衆衛生は組織されたCommunity即ち公共団体の努力によつて疾病の予防,寿命の延長,肉体的精神的効率の増進を図る学並びに技術」であるから,衛生行政を離れて公衆衛生はあり得ない。それは丁度臨床なくして臨床医学が成立たないと同じであろう。従つて野瀬教授が公衆衛生学教室を主宰しつつ,他面保健所長として自ら衛生行政活動の責に任じ,現実の問題を処理しつつ,その豊富な経験を教育と研究の面に生かしつつあることは極めて適切な行き方であると思われ,エネルギッシュな君にしてよく為し得るところと感嘆に堪えない。唯強いて一言いわしめるならば,研究,教育,行政の各分野に亘るこの様な多面的な活動は君にしてよくなし得るところであり,且秀れたスタッフを多数擁することによつて始めて可能なことであり,現段階において各教室直ちにこの様な活動に習うことは無理があろうと思われる。私はいつも衛生学公衆衛生学教育協議会の時に思うことであるが,衛生学公衆衛生学の講義並びに実習に関してあまりに多くの時間と労力とを標準化することになりはしないかを恐れる。各大学各教室の実情に応じ繁簡宜しきを得,その間自由選択の余地を残しておきたいものと考える。

原著

高血圧の統計学的観察(第4報)—成人の血圧について(その1)

著者: 古川三雄

ページ範囲:P.105 - P.107

I.はしがき
 わたくしは,さきに第2報1),第3報2)において,中学生の血圧について調査し,その統計学的観察をおこなつて報告したのであるが,第4報の本報告においては,同一地帯における40歳以上の成人のうち,平均血圧が標準以下のもの,標準範囲のもの,標準以上のもの各30名ずつを無選択的に抽出し,男女各90名ずつ合計180名について,血圧を測定し,身体的要素ならびに遺伝的要素と血圧との関係を調査し,統計学的考察を加えたので報告する。

眼底所見よりみた高血圧血管硬化の疫学

著者: 新井宏朋 ,   川上秀一 ,   佐藤泰義 ,   多紀英樹 ,   浦屋経宇 ,   野島清

ページ範囲:P.108 - P.112

I.緒言
 最近高血圧集団検診に眼底検査が取入れられ各所でその成績が発表されている。しかしその検査人員は未だに少数であり,被検者を集団別職業別年齢別性別血圧値別等に分類し,眼底所見より高血圧血管硬化の疫学を検討した報告は非常に少い。我々は各所で眼底所見を主とする高血圧集団検診を行い,その成績の一部は既に発表した1)〜6)が,今回はこれらの高血圧集団検診の成績より眼底所見の分布を集団別職業別年齢別に比較考察したので報告する。

集団検査用蟯虫検査器具の考察と2,3の測定成績についての吟味

著者: 川上吉昭 ,   針生敏雄 ,   阿部睦男 ,   白石真 ,   目黒勇平

ページ範囲:P.114 - P.116

 近年公衆衛生の発展と共に寄生虫病の予防対策が積極的に行われ,めざましい効果をあげている。しかし寄生虫の中でも蟯虫については,比較的等閑に付されているが,かなり蔓延を見ており最近の成績1)2)においても80%以上の寄生率を示している。この原因は蟯虫検査法に集団検査用として適当な方法がない事と,寄生率の高い割合に他の寄生虫の如き著明な害作用が少い事であろう。又駆虫に日数を要する事も1因と思考される。
 著者等は蟯虫予防対策の1つとして比較的手数のかからない集団検査用器具を試作し,2,3の集団に応用し従来行なわれている方法と比較検討した。

K県Y町で発生した有機燐製剤による集団中毒について(第1報発生状況及び疫学調査)

著者: 白戸三郎 ,   手中進 ,   浅田忠昌 ,   片平重次

ページ範囲:P.117 - P.119

I.はじめに
 昭和32年7月下旬,私たちの管内にある1キャンプ地で,滞在中の中学校生徒106名のうちから突然珍しい症状を呈する集団中毒が発生し,全力を尽した疫学調査の努力も徒労に帰し,原因食品と断定し得るものは遂に発見できなかつたが,臨床症状及び化学検査の成績からこの中毒は有機燐製剤が原因物質と判明した珍しい事件を私たちは経験したので,その経過について報告する。

神奈川県における珪肺発生の現況

著者: 近藤東郎 ,   須藤清二 ,   酒向睦 ,   伴野義郎 ,   大木千秋

ページ範囲:P.120 - P.124

 粉塵職業病として最もよく知られている珪肺の歴史は古い。故に本症の病理機転,発生状況については数多くの精細な研究がなされている1)。我国においては特に戦後,労働省の設置を契機として,珪肺発生の現況を知るべく巡回検診が各種産業労働者に対して行われた。このような資料を核とした5年有余の準備期間の後,昭和30年9月に至つて「珪肺等特別保護法」が施行されたわけである。
 著者等のうち近藤,大木は同法施行の当時偶々神奈川労働基準局に在籍しており,この法律の円滑なる運営を監守する立場にあつた。

1959年春分離されたA2インフルエンザウイルスについて

著者: 松山達夫

ページ範囲:P.125 - P.127

 アジアインフルエンザの流行に関しては,若干の報告1)〜10)を行つて来たが,群馬県に於ては昭和32年5月より流行し,ウイルス分離及びH-Itestで確認した結果では,翌年33年4月末が最後の発生であつた。
 本年4月末に至り,約1年ぶりに,アジア(A2)インフルエンザウイルスが分離され,引続き数ヵ所の流行が見られたが,これらのうち,高崎保健所管内で分離されたウイルスは血清学的にはA2型P相ウイルスでありながら,従来のA2ウイルスと若千異る性質を有する事が判明したので,流行の概況とウイルスの性質につき検討した結果を報告する。

文献

インフルエンザ・ワクチン接種;副作用の発生率と欠勤率にみられた変化,他

著者: 鈴木

ページ範囲:P.72 - P.72

 1957年から1958年にかけてアメリカはインフルエンザの全国的流行にみまわれた。この流行にあたつて,1957年9月の初めにワクチン接種を行つた事業場,10月にワクチン接種を行つた事業場,全く行わなかつた事業場の3つについての欠勤率のデータが得られた。
 1956年と比較して,1957年9月は3事業場共差がなかつたが,10月にはワクチン接種を行わなかつた事業場では前年比102%の増加,10月にワクチン接種を行つた事業場は96%増加,9月にワクチン接種を行つた事業場は65%増加であつた。11月,12月については3事業場とも前年と大差を示さなかつた。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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