icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生24巻5号

1960年05月発行

雑誌目次

綜説

学校における保健教育

著者: 荷見秋次郎

ページ範囲:P.237 - P.244

I.学校における保健教育の意義と重要性
 学校における保健教育は,児童生徒等に対して,健康で安全な生活を営むことのできる能力(健康生活の実践力)を身につけるために行われるものである。
 この保健教育は,児童生徒に対して,健康で安全な生活を営むことのできる能力を身につけるためのあらゆる教育活動(教育作用)をいうのである。この学校における保健教育は,国民の健康を守り,育てるために重要欠くべからざるものであり,また国民の生産能率を高めるためにも重要なものであり,さらに,安全のために重要なものである。すなわち,心身ともに健康な国民の育成には,欠くことのできない重要な教育活動であるので,学校教育においてその重要性が認められ,学校教育において戦後逐次強化充実される方針がとられるようになつた。

学校における保健管理

著者: 湯浅謹而

ページ範囲:P.245 - P.253

 学校における保健管理はその制度的よりどころが学校保健法におかれている。また,学校そのものが自然発生的な所在ではなくて,そのありかたが学校教育法によつて規定されているのである。事実,昭和33年6月以降実施をみた学校保健法以前においては保健管理は「健康管理」と表現され,今なお学校保健関係法規の内に一部存在している。この保健管理という言葉や概念は,どうやらわが国にのみ存在しているのではないかとも思われる。学校における保健管理の内容の主要なものは戦前においては学校衛生の名の下にあつた。そして戦後の占領下においては,アメリカの強い指導下にあつて,学校衛生の内容は次のような表現とわくの内におかれたのである。即ち,(1)健康に適した学校環境Healthful School Environment,(2)健康に適した学校生活Healthful School Living,(3)学校保健事業School Health Serviceの3つの領域である。そして,これは概略現行の保健管理(以前の健康管理)にあたつている。なお,学校における保健活動としては以上の他に(4)保健教育(以前の健康教育)Health Educationがあつて,(以上の(1)(2)(3)(4)とこれらのための組織及びその運営を加えて学校保健計画,School Health Programと称していた。)(註,中等学校保健計画実施要領文部省試案,昭和25年刊参照)。

座談会

野辺地先生を囲んで—疫学の樹立・公衆衛生院の創立

著者: 野辺地慶三 ,   曾田長宗 ,   岡田貫一 ,   橋本正己 ,   柳沢謙 ,   重松逸造 ,   染谷四郎 ,   山下章 ,   岡田博 ,   西川滇八

ページ範囲:P.254 - P.269

 疫学の権威である野辺地先生が,5月に古稀を迎えられる。この学における先生の研鑚のあとを振返ることは,同時に日本の疫学の樹立および公衆衛生院の創設の歴史を跡づけることであると言つても言い過ぎではない。本誌で座談会を企画した所以である。

資料

学校給食の実施状況

ページ範囲:P.271 - P.272

 わが国の学校給食は,現在「学校給食法(昭和29年法律第160号)」,「夜間課程を置く高等学校における学校給食に関する法律(昭和31年法律第157号)」,および「盲学校,聾学校及び養護学校の幼稚園及び高等部における学校給食に関する法律(昭和32年法律第118号)」等に基いて実施されている。すなわち,小学校,中学校,盲学校,聾学校,養護学校,夜間の高等学校等において学校給食が実施されている。
 この学校給食は,児童生徒等の心身の健全な発達を図り,国民の食生活の改善に寄与するために行われるものである。そして,学校では,学校の教育の目的を実現するために,次のような目標の達成に努めることが必要である。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・13

学校保健

著者: 村江通之

ページ範囲:P.273 - P.278

学校保健とか,学校衛生とか,健康教育とか,或いは保健体育とか体育保健とかいう一連の言葉群は厳密にいえば,恐らくそれぞれの個有の意味をもつておることであろうと思うが,これらを明確に区別して説明出来る人は,現在の日本にはないと考える。また若し,これらの間に明らかな劃線を引くことを要求する人があるとしたら,この人はこれらの言葉を実際には理解しておらない人ではなかろうか!
 今日まで日本においては,これらの一連の言葉群がもつ大切な意義に関する研究は,ほとんど手をつけられないで,取りのこされておるといつても間違いではない。これは明治の初め現在の如き学制の基本が制定されて以来,先般の敗戦の日まで,この分野を担当して来た人達のあいまいな態度や,その指導監督にあたられた当局の,この仕事の発展への親切で真面目な指導の不足が,原因しておるのではなかろうかとおもう。この指導能力の不足は当局の不勉強の賜と,それからくる後継者の養成のコースの確立が,なかつたことであると考えさせられるのである。

原著

都市型保健所における乳児指導についての検討

著者: 仲村英一 ,   田所助三

ページ範囲:P.281 - P.283

I.緒言
 保健所における母子衛生活動は近年とみに活溌となり同時に種々の問題を提供しているが,都会においては人口の転出入のはげしさに伴う対象把握の困難性,地区住民の高度の異質性,社会階層の複雑性等女々会特有の問題をかかえ他の業務同様いわゆる限られた予算と人員をもつて母子衛生活動を行う場合も重点的かつ効果的にしなければ,到底所期の目的を達し得ないこと自明である。
 筆者らは国立公衆衛生院第10回正規医学科の夏期保健所臨地訓練の際,東京都渋谷保健所において乳児指導の実態を調査し,保健所自体はフルに活動していても,受ける側として地区の乳児が量的,質的にどの位カバーされているか,またどんな点を重点的に行つて保健所独自の分野とすべきかについて若干の検討を行つたのでここに報告する。

鼠族駆除の実際—岐阜県羽島郡に於ける鼠族駆除概況

著者: 長尾長男 ,   松井元司 ,   北川定謙 ,   岩田俊一 ,   林峯男 ,   田中和夫 ,   松野淑

ページ範囲:P.284 - P.286

I.緒言
 鼠族の駆除は蚊蠅退治と共に毎年全国的に行われており,その手段方法等に就いても既に言い尽された感があるが,その実効という点では労及び貨多くして功少しのそしりを免れない。又一時的には成功しても数年の中には結局旧に戻つて,さじを投げてしまうという例が多い。我々は昭和29年以来引続き,岐阜県羽島郡に於て鼠族の一斉駆除を実施して来たが,相応の成果を挙げたものと思うので,その概略を報告する。

有機燐製剤による集団中毒について(第2報)—臨床症状及び治療経過

著者: 白戸三郎 ,   手中進 ,   浅田忠昌 ,   片平重次

ページ範囲:P.287 - P.288

 第1報において私たちは発生状況及び疫学調査についてのべたので,今回は発生患者の臨床症状及び治療経過について報告する。

文献

スモール・プラント メディカルサービス,他

著者: 芦沢

ページ範囲:P.269 - P.269

 著者はコネティカット州ハートフオードのスモール・プラント メディカル・サービスの指導医。1956年の統計によればコネティカット州には500人以上雇用の製造工場は127,500人未満は約2,400である。ハートフオードの中小7工場が連合してスモール・プラント メディカール・サービスを始めたのは1946年であるが,10年間に災害の度数率,重篤率,病欠や災害による失日数,欠勤率等は数十%から90%も減少を示すという飛躍的な改善をみた。このサービスの仕組みは工場が連合して1人のフルタイムの医師を招へいし,工場幹部との協議により,医師の毎週巡回診療の計画を必要度に応じてたてる。現在著者は毎日3ないし4の工場を巡回する。もちろん各工場には看護婦がいて指示に従つて活動する,というもので,単に診療だけでなく,家庭医や専門医への紹介,採用,配置がえの際の健康診断,健康の問題についての工場職長らとの協議,工場内定期的の衛生巡視等も行う。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら