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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生24巻7号

1960年07月発行

雑誌目次

綜説

WHO環境衛生セミナーを聽いて

著者: 児玉威

ページ範囲:P.349 - P.358

 1959年10月21日から11月5日まで東京赤坂のアジア会館で開催されたWHO西太平洋地域セミナーは「環境衛生関係職員の教育訓練について」On Education and Training ofSanitation Personnelを標題とするもので英仏語を使用語としたが,元来研究所育ちの私にはこの方面の経験がなく,かつ外国語にも弱いので,全く素人のセミナー見聞記であることをまずおことわりしたい。詳細は「WHO環境衛生セミナー報告1)2)」を御覧願いたい。見聞記も舞台裏からのぞいたものの方がおもしろ味があるが,私には観覧席から素人の目で見たもののことしかわからない。WHO会議の演出にはどうも一定の型があるようで,どのような標題でどのような形式の討議が行われ,それがどのようなすじみちでどのようにまとめられ,どうゆう決議と勧告となつて結ばれたかが,会議の終るまでに適当に編集されて,参加者が帰国するまでには立派なお土産になつていることには感心する。参加者は帰国早々これを自国語にほん訳させれば,公式の報告書が自然にでき上るわけである。それにしても,これを作成する委員や事務局関係者の労苦はなみたいていのものでないと思われる。

世界に於ける佝僂病の歴史的観察(第Ⅱ編)—日本特に東北地方の佝僂病について

著者: 小原幸作

ページ範囲:P.359 - P.371

I.緒論
日本に於ける佝僂病(以下「佝」と略す)の歴史は欧米のそれに比すれば遙に日が浅く,明治初年西洋医学が輸入せられた当時には本邦には佝は存在しないものと内外の学者により唱えられ,一般にも斯く信じられていた。1)〜4)
 1888年(明治21年)に至り初めて落合氏5)が仙台に於て本症の1例を実験して臨床上の見地より佝の存在を立証し,1893年(明治26年)瀬川氏6)は仙台及び千葉に於て本症の各1例を,又同年三宅氏7)8)の府中に於ける1例及び佝性内飜脚の1例,翌1894年(明治27年)には神村氏9),1895年(明治28年)野田氏10)の各1例,1898年(明治31年)高松氏11),1901年(明治34年)木村氏12),平出氏13)14)等の報告が続出した。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・14

「公衆衛生活動の体系」をめぐつて

著者: 勝沼晴雄

ページ範囲:P.374 - P.379

はじめに
 公衆衛生学というものの姿をめぐつて,関係諸学者の間でも,また医学全体という基盤からも,種々の論議が交されている。医学の一領域の体系というような問題は,医学総論にも関連する問題ではあるが,公衆衛生学が世界的にも極めて若い医学の分野であるという意味で若干の考察を試み,御批判を仰ぎたい。

医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育・15

母性小児衛生

著者: 相沢龍

ページ範囲:P.380 - P.383

I.はしがき
 公衆衛生学の講義は臨床医学との関連性の点で3〜4年生に行うのが適切と考えられる項目が多いが,本学では衛生学は1年2学期から2年1学期,公衆衛生学は2年2学期から3年全期に行われるので,主題の母子衛生の講義は3年2〜3学期に7回(14時間)行つている。各項目毎の講義時間数には限度があるので,講義には講義要目・主要事項の要点・必要な統計資料等をかかげたプリントをあらかじめ学生に配布しておき,少い時間数を出来るだけ有効に利用し,かつ現実的な関心を深めるよう工夫しており,学生にはその日の講義内容をあらかじめ理解させ,その場で講義をよく理解させるように努めている。勿論講義をきいてはじめてプリントの真の内容の理解が可能である点は常に注意を与える。
 講義のはじめに先ず母子衛生の公衆衛生学的意義を強調する。小児は個体の成長発育の時期にあつて未完成の存在であり,殊に乳児の健康は種々の条件に影響され易く,従つて個々人の保健のためのCommunity Planのうち,小児衛生が如何に効果的かつ重要であるかを述べ,それ故に母性保護も又極めて重要な点を強調して各論に入る。

「医学生に対する衛生学公衆衛生学の教育」についてのアンケート

高橋英二教授の「老人衛生」を読んで

著者: 野瀬善勝

ページ範囲:P.384 - P.384

 高血圧症乃至脳卒中に就ては勿論のこと,老人病全般に亘る疫学的研究に特に御造詣が深く,又,医学生の教育に就ても格別に御熱心な高橋英二教授の「老人衛生」の講義内容乃至その基本的構想であるだけに,敬意と賛意を表することばかりで,更にこれを批判するというが如きものは見当りません.
 ただ外来患者にしても入院患者にしても,臨床医家としては老人病患者を取扱うことが圧倒的に多く,臨床の講義でもそのことに重点が置かれている現在の状態を考えて見た場合,やはり公衆衛生の講義で「母子衛生乃至小児衛生」,「学校保健」,「産業衛生」に次いで「老人衛生」の項目を設けるべきであると考え,私は,老人病に関する病理病因,臨床等一通りの知識が得られた第3学年生の終りにこれを取扱つております.従つて,講義内容は高橋教授の御指摘通り,

東田教授の「社会保障」を読んで

著者: 山本幹夫

ページ範囲:P.385 - P.385

 医学教育において,社会保障に関する問題を十分に教育すべきだとする御趣旨には賛成である。ただ,「医療問題や医療制度」が「社会保障」の範囲で教育されることには疑義がある。医療は教授も指摘されるように,医師たるものの本来の仕事であるから,これについては,別個に今後もつと十分に教育しておく必要がある。これが「社会保障」のわく内で論じられたり,「社会保障との関連に於て」論じられるのは不十分だとするのである。医療に関する問題は,衛生学,公衆衛生学の範囲では,公衆衛生総論に於て取扱われるのが適当だと思われる。
 保健婦活動などをもふくめた,保健活動が,医術の進歩に伴う,必然的な機能分化だとする考えにも異議があるが,詳細は述べない。保健活動は,公衆衛生学の本命だとも考えられるので,別途に教育する必要はないだろうか。特に各種集団や国民全体に対する保健活動における医師の立場については,この「保健活動」或いは「健康管理」において十分に教えておくべきである。保健活動の沿革や発展,その範囲や内容,医療や社会保障との関連,保健活動のすすめ方や効果などについても教えることが望まれる。

原著

生命表より見た小倉市民の健康(昭和30年)

著者: 坂田守

ページ範囲:P.386 - P.392

I.緒言
 或る地域の住民の健康度を知ることは,公衆衛生上,殊に衛生行政の重点的活動の立場から重要なことである。近年生命表の研究がさかんに行なわれて,それが健康度判定の指標として利用されている。最近の死亡率の低下は著しく,それと共に全国生命表も改善されつつある。おそらく地方都市の生命表も改善されつつあるであろう。小倉市の場合,従来生命表が作製されておらず,綜合的な面から見た小倉市民の健康度判定の資料に不足している。今回昭和30年の諸資料をもとに,簡略生命表を作製し,市民の健康度を推察すると共に,全国及び他都市との比較を試みた。
 けだし,一都市でも,全市域が等質でなく,市域によつて人口,住宅密度を異にし,地形,地勢を異にし,人口の年齢構成,主職業が異るものである。この様に,社会学的,医学的,経済学的,自然科学的,その他,種々の要素が異る市域を包含する小倉市全市を,或る地区別(例えば農業地区.住宅地区,商工地区等)に区分することをせず,比較的大きい行政区画を単位とする生命表で,その健康度を推察することは,必ずしも適当ではないが,市域を分割する資料のない現在,大局からみた健康度を推察し,他と比較することは差支えないと考える。

福井県下の1山間地方における赤痢保菌者調査成績

著者: 坪田功 ,   佐藤嘉津馬 ,   大脇達雄 ,   清水湛

ページ範囲:P.393 - P.397

I.まえがき
 抗生物質の発見以来,消化器伝染病中腸チフス患者は減少して来たが,赤痢患者は依然として相当数の発生を見ている。特に最近は軽度のものが多く,季節的にも夏季伝染病たる本来の姿より年中常在型に変化し,さらにまた抗生物質耐性菌の出現等により公衆衛生上新しき問題を提供している。
 特に保菌者は感染源として新しい流行に重大な役割をなし,厚生省1)の推定では年間600万が毎年いずれの時期にか保菌者になると発表され,藤田2),阿部3)によれば保菌者は年々増加する傾向にあるという。しかしながら保菌者の調査は法律上,経済上等の理由により爆発的流行地,都会地にてはなされているが,山村における報告は少ない2)。私共は数年来赤痢の多発を見た福井県下の一山村地区,勝山市鹿谷町(旧大野郡鹿谷村)の往民について保菌者の調査,治療を行なつたので,ここに報告する。

東京都江戸川区における被保護世帯員の結核検診ならびに患者管理の実態について(第1報)

著者: 佐藤智 ,   木野智慧光 ,   浅羽陽 ,   秋葉美恵子

ページ範囲:P.398 - P.400

I.緒言
 私共は昭和33年3月以来,東京都江戸川区における生活保護世帯員約4,700名(33年3月現在併給,単給を含む)の健康管理を行つている。
 一応管理を始めた昭和33年度の断面調査成績がまとまつたので,今回はこの成績を中心に報告したい。このような事業を始めた動機は,たまたま同区の福祉事務所の嘱託医をしている報告者らの1人(佐藤)が恵まれない生活保護層の現状を少くも医学の面で多少とも改善したいと考えたことにある。勿論この層に転落するに至つた要因は複雑で,単なる医学の面のみから解決されるものではないことは私共も十分承知しているが,何と云つてもこの層に転落する最大の原因は疾病と関連をもつていることであるから,私共は医師という立場から,少しずつでもこの問題を改善しようとして,この健康管理を一応5ヵ年計画で始めたのである。健康管理といえばすべての疾患に対するものが含まれる訳であるが,最も大きな比重を占める,そして既に管理方式の確立されている結核から始めることにした。この事業は江戸川区の福祉事務所,江戸川,小岩保健所,社会福祉協議会,区役所が主催となり,江戸川区医師会,結核予防会が後援している。

所謂若年者高血圧の疫学的研究—特にその両親の循環器所見との関係

著者: 新井宏朋 ,   多紀英樹 ,   佐藤泰義 ,   浦屋経宇 ,   川上秀一

ページ範囲:P.401 - P.403

 最近,脳卒中予防の高血圧集団検診が社会人に対し広くおこなわれるにおよんで,若年者にも血圧の異常亢進がまれならずみられる事が注目され,この所謂若年者高血圧の研究がなされるにいたつた1)〜6)。我々も1959年5月より千葉県下の2つの中学校で毎月1回在校生の血圧を測定し,血圧亢進者には眼底検査,心電図検査,尿蛋白検査等の各種検査を実施している4)。今回は更に,同校生徒の両親の循環器精密検査を実施し,所謂若年者高血圧者とその両親の循環器所見の関係につき2,3の知見をえたので報告する。

文献

医療関係者の職業病,他

著者: 小泉

ページ範囲:P.358 - P.358

 チェコスロバキアにおいて医療間係者にみられる職業病としてもつとも重要なのは結核であり,これに対して年齢,勤続年数,結核症に対する施設の型による解析がおこなわれている。とくに,病理解剖のしごとに高率にみられ,そのばあいの感染の機会について論じられている。伝染性ないし血清肝炎は,医師あるいは看護婦にみられる患者からの感染,また感染している組織や汚れた器具との接触による研究室勤務者にみられる感染として指摘されている。こういう感染症に対しては,諸技術の向上と個人に対する注意が重要であると強調されている。X線に対する曝露は,皮膚障害としても血液の変化としても,決して少ないものではなく,不注意とか無知が原因と考えられている。最近では皮膚疾患とくに湿疹とかアレルギー性の変化が,たとえば抗生物質に対する感受性として目立つている。諸技術の向上と関係者の訓練によつて,医療職業病の予防がおこなわれることの重要性が強調されている。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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