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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生25巻10号

1961年10月発行

雑誌目次

綜説

私的医療機関の公衆衛生活動—第4回医療保障自由集会より

著者: 東田敏夫 ,   羽田曄 ,   五木田和次郎 ,   巽庄司 ,   大原重之 ,   古林兆一 ,   井上俊

ページ範囲:P.541 - P.547

昭和35年10月,第14回日本公衆衛生学会(神戸)のさい,第4回医療保障自由集会は「私的医療機関の公衆衛生活動」を主題として,その現状を問題点について,話題提供者の報告と参会者による自由討議をおこなつた。本稿は当日の討議内容の要旨である。但し記事内容の責任は全て筆者にある。(東田)

New Suburb Town, Farsta

著者: 吉田寿三郎

ページ範囲:P.548 - P.554

 人口の増加,その都市集中,家族構成の変化,それに生活水準引上揚げの要請などが,絡みあつて,世界の何処もおよそ現代人の住うところでは,住宅建設計画に関するmicroplanningなり,都市建設計画に関するmacroplannigなりが今日の最も重要なかつ興味のある話題となつている。
 ことに,マンモス都市の簇出している日本では以上のいづれの点からもこの問題は緊急を要する状況にある。あまりことが差し迫つているとしばしばその場を湖塗しやすい。これも万止むをえない場合もあるが,なるべく悔を千載に残したくないことである。

人間工学の周辺

著者: 三浦豊彦

ページ範囲:P.555 - P.559

I.人間工学のあゆみ
 人間工学(human engineering)という言葉が最近よく使用されるようになつた。しかしよく考えるとわかつたようで,わかりにくい言葉でもある。
 この人間工学は第1次世界大戦の頃アメリカで研究がはじめられたが,第2次世界大戦中から戦後にかけての技術革新にのつて,古い時代とは性格もかわり,研究分野も拡大し,隣接した各種専門語学科との接触も大きくなつてきたと考えてよい。

―公衆衛生最近一年間の進歩―老人衛生

著者: 田中正四

ページ範囲:P.560 - P.562

1.まえがき
 ここにかかげた見出しは編集者の方からつけてきたものである。しかし以下に書くことは必ずしも一年間の歩みではない。これを最初に断つておく。それから老人衆生ということばであるが,老人,すなわち老齢者とは人口統計では65歳以上の人をいうが,今日「老人病」と称される疾患は,このような老齢者のみに問題とされるものではなく,たとえば癌などは女子では35歳,男子では40歳ぐらいから激増して,その年齢層の首位を占めている。他の脳卒中,心臓病についてもその間の事情が大同小異である。
 従つて最近では厚生省などでも,また学界でも「老人病」という表現をさけて「成人病」ということばを用いることが多くなつた。多くの職場でも脳卒中,癌,心臓病などの検診が40歳以上の年齢階級の人々に適用されている今日,老人院よりも成人病ということばが妥当であると考えられる。かく考えると老人衛生は「成人衛生」とする方が妥当であろう。

名誉会員をたずねて・1

藤原九十郞先生をたずねて

著者: 丸山博

ページ範囲:P.563 - P.567

 丸山 まず長崎医専時代のことからお伺いしたいと思いますが。当時の学校の様子,それから京大の衛生にはいるまでのことも。
 藤原 長崎での衛生の先生が吉永福太郎先生でこの方が京都から来ておられた。また京都松下禎二先生が長崎医専出身であつた。そんな関係から卒業後すぐ京大選科に入り松下教室で衛生--実際は微生物,免疫学を学ぶようになつたんです。ところが戸田正三先生が外国留学から帰られて(大正5年)松下先生の方は微生物学教室となり,新たに戸田先生によつて衛生学教室ができて(大正6年)その時助手にしてもらつて2年間戸田先生の下で指導を受けた。大正8年に京都市の衛生技師となり,水道課の上水試験も兼ねてやりまして,その間に京都市立衛生試験所を創設しまして,これが大正9年のはじめにできて初代所長ということになつたわけです。

原著

新らしい感染病Listeriosisについて

著者: 加藤久彌

ページ範囲:P.568 - P.572

 リステリア菌Listeria mon cytogenes(以下L菌と略す)によつて起こる疾病はわが国ではまだ広く知られていないように思われる。それはL菌が病原細菌として登場してきた年代が比較的新らしく,戦前には日本にはその発生がなかつたことにもよる。また欧米においても,L菌が人および動物にわたる広範な宿主域をもち,致死率の高い疾病の原因となることが知られるようになつたのは最近10数年のことである。
 しかしながら1948年田島47)が脳炎症状で死亡した山羊脳の病理組織学的所見かな本菌の日本に侵入していることを示唆して以来,北海道,東北地方に羊,山羊の同様の症例が続発し,ついに1951年旭2)によつて最初にL菌が分離同定されるに至つた。その後現在まで毎年,東北,北海道には家畜のL症が発生しており,ついに人体感染例も4例ではあるが,1958年以降発生するに至つた。この事実は,本菌が何らかのルートで日本にはいり,次第にその発生区域を拡大する傾向を示すものであり,今後わが国の畜産上はもちろん,公衆衛生上重大な影響をおよぼすものと考えられる。

結核患者家族に対する化学予防について

著者: 渡辺正男 ,   佐藤健象 ,   武田信子 ,   明珍ユリ ,   富田みつ

ページ範囲:P.575 - P.579

 結核治療の進歩ならびに予防対策の強化により亡国病とまでいわれた結核の死亡も最近ではわが国民死亡原因の第6位まで転落するなど著しい減少をみたのである。しかしながら昭和34年度の結核実態調査によると患者の新発生は依然として多く,結核の蔓延状況を年齢的にみると若年層の結核が減り中年層の結核が増えた。つまり初感染発病が減り,既感染発病が増えている。またいわゆる感染性の患者は低所得階層に多く,経済的社会的理由から受療率も低く,濃厚感染源となつて放置される傾向を示すと警告されている。結核実態調査によると感染源の半数以上は家族内感染であることから患者に対する受療促進のみならず,特に家族を含む検診の励行とツ反およびBCG接種の普及などによる予防措置が重要であるが,なお積極的予防対策として特に在宅患者の家族に対し化学療法剤によるいわゆる化学予防を行なうならば発病防止対策としてより強力な方法と考えられる。
 抗結核剤による化学予防については多くの報告1)〜9)があるが,いずれも価値あることを述べている。北本7)によると臨床的にはBCG接種および化学予防の効果を比較するに発病率をそれぞれ1/2および1/3に減少せしめるが,動物実験ではツ反陽転直後の予防内服は効果がないという。なおまた耐性菌による感染という問題もあるわけであるが,投与対象および方法の宣しきを得れば効果を挙げ得る点では一般に認められているところである。

臨床検査より観た「だに」とその公衆衛生学的意義

著者: 早川清

ページ範囲:P.580 - P.582

緒言
 終戦直後米の代用として粉食が盛んであつた頃食品に「だに」が付着しているのが発見せられ,食品衛生上問題視されたことがあつた。その後食糧事情の改善とともに一時忘れられていたこの「だに」も昨年夏秋ごろ唐辛しなど香味料に付着発育しているのが所々見出されまたまた食品衛生上世人の注意を喚起するようになつた。
 そもそも人体「だに」症としてその病的意義が認められたのはすでに久しく,1893年東京大学前身時代の外人教授スクリッパが三宅速博士とともに房州の一農夫で血尿を主徴とした患者の尿中に8脚の小動物を見出し,これを病原と考えNephrophagus sunguinalisとして報告したのに始まる。

L-リジン,DL-スレオニン補給学童発育実験

著者: 福井忠孝 ,   高尾朗 ,   村上剛 ,   斎藤克己 ,   富永冨貴代

ページ範囲:P.583 - P.586

I.はじめに
 近時 国民全般の食糧事情の好転に伴ない,広く学校給食も実施され,学童の体位は著明に改善されて来た1)が,未だ文化的恩恵に浴さない山間僻地では学童の体位は遠く全国平均に及ばない2)現状である。かかる地域では栄養状態は悪く,中でも蛋白質特に動物性蛋白質の摂取量は少なく23,従つて動物性蛋白質に多く含まれているリジン,トリプトファンメチオニン等のアミノ酸が制限因子と成り易く各種必須アミノ酸の効果的比率4)5)6)の均衡が崩れアミノ酸利用が悪くなる。
 そこでわれわれは徳島県山間学童を対象としてL-リジンおよびDL-スレオニンのアミノ酸を1年間補給し,身体発育におよぼす影響を検討した。

避妊薬の殺精子試験について—国家検定法と水野法との比較

著者: 山地幸雄 ,   石関忠一 ,   小嶋秩夫 ,   宰田和子

ページ範囲:P.587 - P.590

 現在わが国において製造販売が許可されている避妊薬は,膣内に精射された精子の運動を止める目的で,性交前に膣内に挿入される薬剤である1)。従つてその効力検定には殺精子試験が,欠くことのできない試験として行なわれる。
 避姙薬の殺精子試験法は1929年ごろよりBaker2),Brown-Gamble3),水野4),Gamble5)およびDavidson6)らにより,種々の方法が考案されたが,それらの原理は混合法すなわち薬剤稀釈液と精液とを混合して,その際の精子の運動停止を検鏡観察するか,あるいは接触法すなわち,薬剤と精液とをガラス器具を用いて接触させ,精液内の精子の運動停止を検鏡観察する方法かの,いずれかである。

鞭虫駆除剤の研究—第2報 1-Bromnaphol—(2),Tetrachlorethylene,Piperazine hydrate,Dithiazanine,4-Iodothymolによる駆虫効果の比較/第3報 駆虫効果判定の時期についての一考察

著者: 青野宏 ,   佐藤淳夫 ,   島谷敏男

ページ範囲:P.591 - P.598

 鞭虫駆除剤として,その有効性が確かめられたものは,Swartzwelder,他(1957)により報告されたDithiazanineがあるのみで,これまで使用されてきた種々の薬剤はいずれも主として,回虫鈎虫などの駆虫剤を鞭虫症に試用したもので,正確にその効果の追求がなされていない。われわれは前報において,Dithiazanineおよび4-Iodothymolを用いて,鞭虫に対する駆除効果を検討した結果,鈎虫駆除剤である4-Iodothymolが,Dithiazanineとほぼ同様の鞭虫駆除力を有することを知つた。またわれわれは,鈎虫症に対し1-Bromnaphthol(2)またはTetrachlorethyleneを使用して,その瀘便時にしばしば鞭虫虫体を採集することも経験しており,鞭虫に対しある程度駆除力があると考えられるので,これら薬剤を種々の量で投与し,また同時にDithiazanineの少量長期投与を試み,これら薬剤の駆除効果を比較検討した。以下にその成績を報告する。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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