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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生25巻12号

1961年12月発行

雑誌目次

綜説

スウェーデンの公衆衛生および医療制度

著者: 清水寛

ページ範囲:P.657 - P.663

 はしがき 最近スウェーデンからArthurEngelとAnn-Margret Lundgrenの共著Swedish Health and Medical Careが送られてきた。公衆衛生の曲がり角といわれたり,医療制度の改革が唱えられたりしている日本にとつて,いくらかでも役立てばと思い紹介することにした。

都道府県における成人病対策の現況

著者: 山形操六

ページ範囲:P.664 - P.672

I.はじめに
 成人病対策は公衆衛生上重要な施策の一つとなり,国においても着々と具体策が実施されるようになつた。
 すなわち,第1次悪性新生物実態調査(昭和33年度)第2次悪性新生物実態調査(昭和35年度),国立がんセンターの設置(昭和36年度),高血圧・心臓病を中心とする成人病基礎調査(昭和36年度)等。

社会医学研究の進め方—社会医学研究会自由討議

著者: 社会医学研究会

ページ範囲:P.673 - P.683

 座長(曾田) 始める時刻が予定より大分おくれましたので,第2の「明年度発表会の中心課題」もこの議題の中に含まれているものとお考えになつて,あわせて討議を願いたいと考えます。また,なるべく大勢の方にご意見を出していただきたいと考えますので,一回の発言は,2分というようにお願いいたします。
 社会医学研究の進め方ということにつきましては,昨日および本日にわたりまして,いろいろみなさんのご発表のうちにもにじみ出ておりましたように,いろいろの考え方が出てくると思います。これは研究者発表者の立場や,当面している問題の相違にもよるもので,皆様から自由なご発言を希望します。実は昨日会が済みました後にも,なるべく大勢の人が発言すること,なるべく若い人の発言を促すようにという希望が出てもおりましたので,一つぜひその主旨に沿うようにいたしたいと思います。それでは口火切りといいますか,あらかじめ多少ご連絡のついている方もありますので,お若いところで大谷さん,どうですか。

原著

若年者高血圧の疫学的研究(特に高血圧管理の立場から)—第Ⅰ報 若年高血圧者の精密検診成績/第Ⅱ報 若年者の血圧と両親の循環器所見との関係

著者: 多紀英樹

ページ範囲:P.684 - P.703

Ⅰ.緒言
 従来若年者の高血圧は主として症候性のものであり,高年者における本態性高血圧に匹敵する若年者高血圧は比較的稀なものであると考えられていた。これは本症が原因で臨床家を訪れるものが少数であつたからである。しかるに近年わが国において中枢神経系の血管損傷が国民死因の主位をしめ,高血圧に対する予防医学的な関心が高まり,一般社会人を対象とする血圧調査が広範に行なわれるにおよんで,若年者にみられる血圧亢進について注意が向けられるようになつてきた。その理由は,若年者高血圧の出現率が従来考えられていたよりもはるかに高率であることが次第に明らかになつたこと,およびそれが高年者の本態性高血圧の成因になんらかの関与があるのではないかと考えられたからで,このことが高血圧管理を何歳ぐらいから始めるべきであるかという問題を提起したからである。
 新井および著者1)らは高血圧・血管硬化の集団検診を行ない,40歳代においてすでに高血圧者の34.6%,正常血圧者の12.1%において眼底に細動脈硬化性の変化がみられることを指摘し,高血圧の管理を20歳代,30歳代の早期に実施する必要があることを示唆した。中沢2)はまだ環境の影響を十分に受けていない青少年においても高血圧多発地域においては若年者高血圧出現率が高いことを指摘し,佐々木3)らも脳卒中死亡率の高い東北地方の学童の血圧が全国平均に比べて有意の差をもつて高いことを報告している。

病原性大腸菌O-55による集団下痢症

著者: 田村利勝 ,   白石圭四郎 ,   秋葉亭 ,   富沢功

ページ範囲:P.704 - P.705

まえがき
 病原性大腸菌については近年多くの業績がみられ,特にKauffmannらにより血清学的分類がなされて以来,流行性乳幼児腸炎由来菌としてその病原性が脚光を浴びるに至つた。
 しかし北海道においては病原性大腸菌に関する報告は少なく華岡の大腸菌0-55による乳幼児下痢症の報告1)と,札幌市厚生病院(旧円山病院)に細菌性赤痢として入院した0-124による下痢症の報告2)3)4)をみるに過ぎない。

放射線手当の評価について—特殊環境手当の評価の試み

著者: 砂田毅 ,   木下正弘 ,   木下商策 ,   服部恵子 ,   加藤智雄

ページ範囲:P.706 - P.712


 医療技術の進歩と相まつて,社会保障の一環としての医療保険の拡大につれ,放射線を取り扱う医師・医療技術者はその数と取り扱い件数が増加し,また原子力の開発とともに原子力産業従事者・研究者・サービス業者も急激に増加してきた。そのため放射線環境がいわゆる労働環境の大きな一部門を占めるようになつた。この傾向は今後ますます大きくなつていくであろう。
 電離放射線がどんなに少量でも人間にとつて有害であるか否かの議論はさておき,あるlevel以上の量は有害であることは,科学的にすでに立証されてきた。放射線環境の下に働く職業人がそれ以外の人たちよりも,より多くの放射線の曝露を受けていることは確かな事実であり,さらにその上,大量被曝の危険も絶無ではない。この環境にある従事者に手当を支給して,これに報いているのが現状である。これを出発点にまで遡つて,果たして手当を支給することが妥当であるかどうかを論ずることは本文の主旨ではない。本来手当は労働需給の関係から,あるいは交渉によつて決まるのであるが,この場合は特殊作業であるという観点から,飽くまで放射線手当を支給して報いることが望ましいと考えられている現状を肯定することから出発する。この立場から放射線手当の支給額は,何を基準に算出すべきかに光を当ててみることにする。

紹介 ソ連医学トピックス

治療に役立つ人工"イオン"化空気

著者: 北上幸雄

ページ範囲:P.713 - P.715

 昔から高い山の谷間を流れる溪流のほとりや滝のかたわらに住む人には,長生きする者が多いといわれてきた。作者も仙人の住み家をそんなところを選んでたてている。ここには,高血圧や動脈硬化,喘息患者は少ないようだ。
 ここでは,その空気が少なからず決定的な役割りをもつている。誰でも感ずることは,こうした辺りでは空気もすがすがしく,息づかいも軽くなることである。

文献

第26回日本民族衛生学会,他

著者: 西川

ページ範囲:P.663 - P.663

 10月16日(日)東邦大学医学部大講堂において第26回日本民族衛生学会が開かれた。会長は同大学医学都衛生学会公衆衛生学教授横堀栄博士である。日本民族衛生学会は会員約340名のまとまりのよい学会であつて,前日まで開かれた日本公衆衛生学会とは対蹠的な存在である。歴史は古く昭和5年に永井潜東大教授によつて主唱された。
 一般演題は発育,遺伝,人口問題身体障害者,老人衛生等に関連する28題が発表された。シンポジウムは「日本人青少年の体位を向上させるにはどうすればよいか」という論題のもとに5名の発言者と2名の追加発表があつた。各演者とその課題は次の通りである。日本の体格の時代的推移については東邦大木村邦彦助教授(解剖学),最近の日本児童・生徒の体位の推移について公衆衛生院木村正文技官,栄養の成長におよぼす影響について公衆衛生院中川一郎部長,児童の身体発育と精神的因子との相関についてお茶の水女子大平井信義教授,10年後のわが国民の体位の予測について公衆衛生院曾田長宗次長である。追加は,米国二世の最近の研究について栄養大石原房雄教授,日本人の体位は果たして向上しているといえるかとの題で平田欽逸博士が発表した。一般演題よりシンポジウムまで質疑応答が活発で口演7分,追加討論1分の予定時間ははるかに超過して,学会が終了した時刻は予定より2時間近くも遅れて,暮れやすい秋空はとつぷりとくれて7時にならんとしていた。

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基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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