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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生25巻3号

1961年03月発行

雑誌目次

総説

衛生行政研究序説(その1)

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.121 - P.133

I.序説
 今日われわれが公衆衛生Public Healthと呼ぶところのものは,これを歴史的にみれば18世紀末葉以降,第1次の産業革命によつて招来された人間の健康に関係のある各種の社会問題が直接の契機となつて勃興したものであるといえる。すなわち,まずEngland & Wales等において産業革命の進行とともに,人口の都市集中,工業の勃興による都市環境の悪化,悪疫の流行,不良住宅,労働者階級とくに婦人,幼少年の苛酷な労働条件等が社会問題化し,18世紀末から19世紀初頭に至る主として熱烈なvolunteer1)たちに支えられた揺藍期を経て,おおむね19世紀の中葉以降,一方においては予防医学2)をはじめとする近代諸科学の進歩,他方においては社会問題に対処する行政制度の発達を媒介として確立した公衆衛生は,20世紀に入るに及んで,公衆衛生学として,また公衆衛生行政として,さらに総合的な公衆衛生活動として輝かしい発展をみるに至つたのである。

英国における社会医学(その1)—その起源と発展について

著者: 黒子武道

ページ範囲:P.134 - P.138

 英国が社会医学の分野において指導的な地位に立っており,また社会医学が今日,英国において理論的にも実践的にも,一応その成果を挙げているものと一般に信ぜられている。
 従って英国における社会医学の概念形成や発展に導いた諸事情の検討は,社会医学の理解にとつて極めて有意義なことと思われる。

団地計画における公衆衛生学的諸問題

著者: 東田敏夫 ,   橋本美知子 ,   仲野俊子 ,   上林典子 ,   新田左内 ,   馬場英夫 ,   田中正好 ,   北田章

ページ範囲:P.140 - P.156

I.問題の所在
 近年における都市人口の増加はいちじるしく,他方,戦後の住宅難はなおもつづいており,これに対処して,都市,とくに大都市の周辺では,住宅の集団的建設が要請されている。
 1957年3月末現在のわが国における住宅事情は,戦前からの住宅数1,100万戸,戦後建設600万戸である。戦後建設分の70%,420万戸は民間の建設であり,公的建設は30%,180万戸にすぎず,(公営住宅65万,公庫住宅55万,厚生年金融資住宅50万,公団住宅10万戸),なお180万戸が不足しており,その大部分は大都市周辺にある。

栄養学の認識についての考察

著者: 佐伯镹

ページ範囲:P.157 - P.165

 栄養学は,独立した国立の研究機関が1920年,始めて創設されて以来40年註1,また独立した学会として1934年公認発足して以来25年註2を経て,今日では,学者間にその学的水準の高さがあまねく認められ,また世の人々の間にこの社会実生活への実益が信用を博している。
 栄養学のまとまつた書物としては,栄養学会公認以前(米国では1940年以前)のものには,G. Lusk1)のThe Elements of the Science of Nutrition(1906)や,R. H. Chittenden2)のThe Nutrition of Man(1907),H. C. Sherman3)のChemistry of Foodand Nutrition(1911),またL. B. Mendel4)のNutrition(1923)等の好著がある。この他同じ時代にE. V. McCollum5)のTheNewer Knowledge of Nutrition(1918)も現われたが,これは栄養学全般を系統的に取り扱つたものというには稍偏つたものの様に思える。また本邦の様に他の文明諸国より一歩先んじてこの学の独立が実現整備された国では,その独立後の科学的成果の上に立つて,整然とした体系をもつて書かれたものが出現したわけで,佐伯矩の栄養6)(1926)は本学認識のために不可欠な著書の一つであろう。

研究

旭川市におけるポリオの流行と防疫対策

著者: 野崎俊夫 ,   小野寺千代子

ページ範囲:P.167 - P.178

緒言
 欧米では早くからポリオの流行が頻発したためにその疫学的研究も進んでいるが,わが国では近年まで認むる程の流行が少く,従つて本病に対する関心は専ら臨床医学の面に限られていたといつてよい。しかるに終戦後より各地に本病の流行が続発し始めたために疫学的関心もにわかに増大した。われわれはポリオの疫学的研究を行うに当り,集団の感受性が流行の重要な因子となる事実を考慮し,今年(昭和35年)初頭から旭川市の乳幼児のポリオに対する感受性調査を進めて来たが,その途上今回の大流行に遭遇し,市内のみで100名をこえ,周辺町村を加えると160名に達する麻痺患者が発生し,北海道で最大の流行地となつた。この流行に際しわれわれは管轄保健所の防疫担当責任者として対策に従事すると共に,各方面の協力を得てその疫学調査を行なつた。集められた資料がぼう大なために,まだその全部を分析するに至つていないが,現在までに得た成績にもとづいて流行発生の要因,流行状況,実施した防疫対策とその効果について報告し,今後の参考に供したい。

原著

蟯虫症に関する研究(第4報)—Piperazin,Dithiazaninの単独,併用投与による蟯虫の駆除成績について

著者: 高橋克巳 ,   灘波豊愛 ,   阿部輝明

ページ範囲:P.179 - P.182

はじめに
 Dithiazaninは3-ethyl-2-〔5-(3-ethyl-2-benzothiazolinylidene)-1,3-pentadienyl〕benzothiazolium iodideの化学構造を有するチアン系色素の一種で,1957年McCowen等1)によつて初め動物の腸管内寄生虫に広範な駆虫作用がある事を報告され,続いてFrye等2)Swartzwelder等3)は人の腸管内寄生虫にも極めて強力な駆虫効果を発揮する事を認め,わが国でも国枝等4),森下(哲)等5),森下(薫)等6),小宮等7),長嶋等8),荒木等9)がこれを追認しているが,Dithiazaninが,従来の各種駆虫剤と異る処は,これが世界で初めての本格的広範囲駆虫剤(Broadspectrum Anthelmintic)として人の腸管内寄生虫の殆んどのものに強力な駆虫効果を呈し,特に従来適切な駆虫剤のなかつた糞線虫,鞭虫に特効的であり,近時関係者の注目を集めている。
 私共は従来,蟯虫症に関する研究において蟯虫の駆除にPiperazinを用いて報告10)11)しているが,今回Dithiazaninを使用し,Piperazinと各々単独または併用投与による蟯虫駆除効果を比較検討したので,以下その所見について述べる。

文献

特殊な職業におこる肺癌

著者: 西川

ページ範囲:P.138 - P.138

 カルフォルニア州における男子の肺癌死亡例について最近の国勢調査成績より職業別死亡率を求めて肺癌発生の多い職業を追求している。同時に死亡例の喫煙習慣についても調べたが,喫煙者群では非喫煙者群よりたしかに高率に発生しており,特に多量喫煙者に多発していることを確めている。職業別には,調理人と塗装工に多くて,他の職業者の1.5ないし2倍に達しており,この職業について喫煙するものでは,一般の非喫煙者群の5〜9倍にも達したという。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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