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綜説
公衆衛生最近一年間の進歩
著者: 田波幸男1 加倉井駿一2
所属機関: 1厚生省公衆衛生局保健所 2厚生省公衆衛生局結核予防課
ページ範囲:P.283 - P.286
文献購入ページに移動公衆衛生は近年急速に進歩したといわれているし,いろいろなデータを見てもたしかに進歩していることはまちがいない。ただ進歩しているのは公衆衛生だけではなく。他の分野の進歩もまたおどろくべきものがあるのだから,それだけでよい気持になつている訳にもいかない。このように進歩はしたといつても,公衆衛生の分野では,何か大きな発見や発明があつて,そのためには旧来の状況が面目を一新したというようなことは少ないようであつて,その進歩は連続的であり,飛躍はない。したがつて進歩が大きいとはいつても,それはある期間をおいて比較してみないことには進歩の程度がはつきりしない。その期間は少なくとも,5年くらいは必要のようであつて,昨年1年間の進歩ということになると中々判断がむずかしいことになるのではなかろうか。
それに最近に至つてはわが国の公衆衛生は新しいテーマというものは少なくなつた。例えば社会保障の面での年金制度又は児童手当制度の創設というようなものに相当するテーマは今の所あるまい。問題はすでに出つくしてしまつているので,現在はその一つ一つをどのようにして片付けて行くかといつた地固めの段階にあるようように思われる。たとえ新しい問題があつたとしても,現在はすでに実施されている諸施策の充実に意を用うべき時期であるように思われる。このような点も進歩といつたはつきりした面がとらえにくい理由でもあろう。
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