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特集 食中毒 原著
東京都下大島に発生(昭和34年)せるアジを原因食とする食中毒の調査成績—特に病原性好塩細菌を対象として
著者: 柳沢文徳1 田中香磨1 天明黎子1 広瀬周二1 山口三重1
所属機関: 1東京医科歯科大学医学部柳沢研究室
ページ範囲:P.355 - P.360
文献購入ページに移動魚介類に原因する食中毒のうち,同一魚種で,一定の地域内に多発している食中毒であるにもかかわらず,原因不明に陥つている事例が極めて多い。この疫学的考察は柳沢1が既に総括しているので,省略するが,昭和34年夏〜秋にかけて,静岡県,千葉県,伊豆七島にわたり,アジの生食による食中毒が多発し,アジによるいわゆる原因不明食中毒が発生した。この中毒の疫学的,病因的調査は,厚生省,東京都において,詳細に検討されたが,病因に関しては,検体が入手出来ぬという結果,不明に陥つた。本中毒発生末期に厚生省食品衛生調査会で,本中毒の病因につき検討されたが,多くの意見があり,統一をみなかつた。この席上柳沢は,病原性好塩細菌がmarine bacteriaに関係が深いことから,その菌との関連を推定して発言し,児玉は神奈川県のアジによる集団中毒事例より,病原性好塩細菌を検出した経験から,この流行性を思わせるアジ中毒も病原性好塩細菌であろうと論じた。また松井は宮崎県日向市に発生せるアジ中毒で,病原性好塩細菌を宮崎県衛研の稲田等2)が分離したことを報告して,病原性好塩細菌との関係につき示唆を与えた。いまここに当時を回顧すると,中毒の探知がおくれ,いずれの場合も検体を入手することができなかつたことに,病因判明ができなかつたのである。
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