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綜説
技術革新と医師及び医療
著者: 暉峻義等1
所属機関: 1労働科学研究所
ページ範囲:P.425 - P.432
文献購入ページに移動過去40〜50年の間に,日本の医学は科学的医学としての基礎をきずき上げた。特に第2次世界大戦の後においては,物理科学の画期的な進歩や,これに関連する生産技術の画期的な発達によつて,医術もまた驚くべき進歩を見ることになつた。人々はかような科学および技術の進歩と,それに伴つて改善されてゆく生産技術の発達,またこれに密接に関係してわれわれの社会生活にせまつてきた社会経済並びに国民経済の変革や教育制度の改革,人々の人生感,社会感の変化をひつくるめて,これを技術革新の時代と呼んでいる。われわれはかかる意味において,今,現に社会革新の渦巻の中に立つているのである。
医学や医術の側について考えると,先ず最も著しい現象は,科学的医学が,公衆衛生制度を発達させたことであろう。医学や医術にたずさわる人は勿論,一般の人々もこの新らしく生まれた公衆衛生の思想や制度に対して異常な関心と期待とを持つている。しかし公衆衛生とその制度とは,決して突然にわれわれの社会の中に生み出されたのではない。それは科学的医学と医術との発展の中に生み出され,そしてそれを前提として発展をとげ続けているのである。しかしこの新らしく成育している公衆衛生制度は,これが実際にわれわれの社会に広く行われるについては,ただ科学的医学や医術だけによつているのではない。むしろそれはわれわれの時代に生きている全部の人間の社会感や生活感の変革の結果であるとみるべきであろう。
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