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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生26巻12号

1962年12月発行

雑誌目次

第3回社会医学研究会講演:続

医療保険の統合をめぐる諸問題(シンポジウム)

著者: 関悌四郎 ,   近藤文二 ,   仲田良夫 ,   中村正文

ページ範囲:P.647 - P.657

 司会 現在のわが国の医療をめぐる問題の多くが医療保険の不統一に起因しているということはしばしば論じられているところであります。ところで医療保険の統合ということを考えるにあたつて,そこにどんな問題があり,今日どのような過程にあるか,そういうことを検討するためにこのシンポジウムを開くのであります。本日の演者として壇上にお見えになる3人の先生方は,今までこの社会医学研究会と直接には関係のなかった方々ですが,とくにお願いをして来ていただいたのであります。演者の先生方は医療担当者の側の方ではありませんが,今日のシンポジウムでは,演者のお話をおききして,それで問題についての知見を得るというにとどまらず,さらに医療を担当する側の立場から,皆さんの平素のお考えを述べていただいて,両者の見解をさらにすすめることができたなら幸いであると思っております。

統計からみた医療保険格差(続)

著者: 中村文子

ページ範囲:P.659 - P.661

 ここでは,各種医療保険のなかから,各階層を代表するものとして,政府健保・組合健保・日雇健保および国保の4種をとりあげ,1955年度から60年度にわたって,医療給付面現象を統計的に観察した。

医療保険の統合と保険医

著者: 稲田素臣

ページ範囲:P.661 - P.662

 医療保険の統合という問題も,それだけでは問題が尨大すぎて,とてもここでは扱い切れない。
 しかし,まず誰が何のために統合の必要を感じたかということを考えてみると,時間的には,昭和23年7月に公表されたいわゆるワンデル勧告がある。単独法が8も9もあり,所管省が7も8もある。こんなことでは日本の医療保険のつかみようがない,そう感じるのは当然といえよう。ワンデルとは狙いが多少異なるが,日経連も昭和28年に,「各種社会保険の整理統合案」を発表した。内容は,①法律の一本化,②行政機構の統合,③保険料納入,給付窓口の一本化,④各種手続の一元化,⑤給付内容の統合整理を実現すべしというものである。要するに主眼点は,行政が①能率的で,②経済的で,③把握しやすいものでなければならぬということにある。しかしそれだけではもち論いけないので,「全国民について給付と負担の公平および所得再配分の観点から,これを総合調整する必要がある」(昭37.4社保審中間報告…問題点より)ということになっている。

綜説

乳癌の発生要因に関する研究—(1)胸部の発育,維持に関する栄養因子(成長ホルモンの素材)とその意義について

著者: 佐藤徳郎 ,   小川庄吉 ,   街風喜雄 ,   佐藤喜代子

ページ範囲:P.663 - P.674

はじめに
 乳癌の罹患,死亡統計が整備されてくるにつれ,日本と西欧諸国の死亡率にいちじるしい差があり,しかも老齢になればなるほどその差が開くこと(1:10,瀬木ら1))が明らかにされた。従来日本婦人の授乳期間の長いことがその説明としてあげられたが,そうだとすれば日本の未婚婦人の老齢の乳癌死亡率は既婚授乳婦人の10倍程度の乳癌死亡率を示すべきであるが,実際には差があっても大きくなく1〜3),西欧で認められた産児の有無別の死亡率の差に近い。イギリスでは子供のある人を基準にすると,有夫子供のない人が20%未婚婦人が40%増を示している4)。授乳,子供の有無では日本と西欧の乳癌死亡率の大きな差を説明することは困難で,日本の未婚婦人にも作用している別の因子を導入しなければならない。
 人癌の発生要因を研究するにあたり,発生要因が作用しても発癌に至るのはその数%にすぎぬのが通例とされ5),氷山の上層部を形づくるようにみえる。このことを考慮に入れ,西欧の乳癌の多い地方の乳癌発生率を10万対70とし,素因を受けた15人の死亡のうちに1人が乳癌に至るとすると(60歳以上の高年齢では10万対200〜300となるが胃癌よりは少ない),平均寿命70年として毎年1人の乳痛が発生するときその周囲に1,050人の同様に素因を受けた人がいることになり,10万対70の集団の婦人は74%が素因を受けていることになる。

有機リン中毒解毒薬としてのOxime

著者: 保刈成男

ページ範囲:P.675 - P.682

はじめに
 農薬工業のめざましい進展にともなって,ParathionやTEPPなど有機リン剤が殺虫剤として頻用されるにおよんで,これらによる偶発あるいは故意の中毒事故が増加し,そのため有効的確な解毒薬の出現が要望されるようになった。
 これら有機リン剤の動物にたいする毒性は,主として体内のCholinesterase(ChE)の阻害にもとずくA etylcholine(Ach)の過剰蓄積によるものとされ,したがって中毒の治療には,作用拮抗という点で主にアトロピンが使用されてきた。しかしアトロピンは,Achの作用のうちムスカリン様作用には有効だが,ニコチン様作用には拮抗せず,またAlkylphosphateによる中枢神経刺激ないし麻痺作用(振顫,痙攣など)にたいしてもあまり有効でない。

ガン(悪性新生物)の死亡率

著者: 水島治夫

ページ範囲:P.683 - P.686

I.粗死亡率と純死亡率
 人口が老化し,老人が多くなるとガンによる死亡数が多くなるが,人口の老化だけがその原因なれば,分母の老人人口も多くなるのであるから,ガン死亡の率は高くならないはずである。ところがガンの死亡率は,総数でも,年齢別でも近年上昇傾向を示している。普通にはガンの死亡率といえば,年間のガン死亡数を該当人口で割ったものである。便宜上次の記号を用いれば,
 x:年齢

血液事業の現状,とくに供血源対策について

著者: 小玉知己

ページ範囲:P.687 - P.691

I.輸血事業の形態
 医療ことに外科的手術に使用される血液量は,例えば胃癌で胃全剔手術を行なった場合には平均2,881ccの輸血が必要であり,最近よく行なわれる肺区域切除術や人工心肺による心臓手術等には6,000cc以上にもおよぶ輸血がなされることがある,このように医療を行なう上に血液は欠くことができないものであり,血液の利用は毎年増加の一途をたどっていることはご承知のとおりである。
 血液はもち論新鮮なものほど輸血には好都合であるが,大量の血液を一時に集めることは困難でもあるので,血液に保存液を加えこれをびん中に貯臓しておき,いわゆる保存血液として利用する方法が増々普及している。

公衆衛生最近の進歩

寄生虫病

著者: 大島智夫

ページ範囲:P.692 - P.696

 最近における本邦の寄生虫学の進歩については,各寄生虫別に詳細な業績が亀谷1)により編集出版されているので,この限られた紙面では,公衆衛生に関係のある重要なテーマについてのみ,できるだけ最新の資料によって,その進歩発展の跡をたどってみることにする。

文献

セービン経ロポリオ生ワクチンによる新生児の免疫,他

著者: 清水

ページ範囲:P.657 - P.658

 1960年12月より1961年6月にわたりアトランタ・グラデイ記念病院において正常分娩を終えた直後の母親105人を選び,その子に対してセービン生ワクチンの経口投与実験を行った。ワクチンはⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型を実験計画に従い,それぞれ単独,もしくは混合して,大多数は生後2〜3日の間に投与された。母子の抗体は静脈または子においては出生直後の臍帯より採取された。血液により測定された。また,子の便中に排泄されたビールスも追及され,哺乳と免疫の関係も検討された。Ⅰ型ワクチンを生後数日目に投与されたものは75%の免疫を得た。また母体の高い免疫と哺乳は共に新生児の便中へのビールスの排泄を抑制することを認めた。新生児に対する生ワクチンの投与は高い免疫効果があり,決して危険のない簡単な方法であるから,国際的に正しい方法として承認されるだろう。なおアメリカ合衆国では新生児は学童よりも掌握し易い年齢層でもある。

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基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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