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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生26巻12号

1962年12月発行

綜説

乳癌の発生要因に関する研究—(1)胸部の発育,維持に関する栄養因子(成長ホルモンの素材)とその意義について

著者: 佐藤徳郎12 小川庄吉13 街風喜雄4 佐藤喜代子

所属機関: 1国立公衆衛生院 2日大医学部衛生教室 3東京ガス 4関東逓信病院産婦人科

ページ範囲:P.663 - P.674

文献概要

はじめに
 乳癌の罹患,死亡統計が整備されてくるにつれ,日本と西欧諸国の死亡率にいちじるしい差があり,しかも老齢になればなるほどその差が開くこと(1:10,瀬木ら1))が明らかにされた。従来日本婦人の授乳期間の長いことがその説明としてあげられたが,そうだとすれば日本の未婚婦人の老齢の乳癌死亡率は既婚授乳婦人の10倍程度の乳癌死亡率を示すべきであるが,実際には差があっても大きくなく1〜3),西欧で認められた産児の有無別の死亡率の差に近い。イギリスでは子供のある人を基準にすると,有夫子供のない人が20%未婚婦人が40%増を示している4)。授乳,子供の有無では日本と西欧の乳癌死亡率の大きな差を説明することは困難で,日本の未婚婦人にも作用している別の因子を導入しなければならない。
 人癌の発生要因を研究するにあたり,発生要因が作用しても発癌に至るのはその数%にすぎぬのが通例とされ5),氷山の上層部を形づくるようにみえる。このことを考慮に入れ,西欧の乳癌の多い地方の乳癌発生率を10万対70とし,素因を受けた15人の死亡のうちに1人が乳癌に至るとすると(60歳以上の高年齢では10万対200〜300となるが胃癌よりは少ない),平均寿命70年として毎年1人の乳痛が発生するときその周囲に1,050人の同様に素因を受けた人がいることになり,10万対70の集団の婦人は74%が素因を受けていることになる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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