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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生26巻3号

1962年03月発行

雑誌目次

特集 ポリオの疫学(その2) 総説

腸管系ウイルスの生態学とポリオの流行について

著者: 甲野礼作

ページ範囲:P.113 - P.121

1.まえがき
 ポリウィルス1,2,3型(以下Pもしくは型に従いP1,P2, P3と略)エコーウイルス1〜28型(以下E1〜E28と略),コクサッキーウイルスA群1〜24型(以下CA 1〜CA 24と略)および同B群1〜6型(以下CB 1〜CB 6)などの合計60種以上のウイルスが,ヒトの腸管に感染増殖し,種々の性状が相似しているところから,腸管系ウイルス(Enterovirus)として一括されている。
 これらのウイルスは腸管の細胞を感染増殖の場としていて,しばしばヒトの屎便から分離されるがゆえに,腸管系ウイルス・フロラ(Entericvlral flora)といった概念が構成せられる。

わが国と諸外国とのポリオの疫学現象

著者: 松田心一

ページ範囲:P.122 - P.138

序論
 ポリオは,およそ1世紀前までは,世界でもまれな疾患と見られていたが,ここ50年来温帯地方において,主として都市を中心に,しばしば多発流行を起こすようになり,また時としては,周期的発生をくりかえす傾向を示し,それにつれて,次第に世界各地に侵襲し,現在では,その発生流行に,もとより地方的な差異が見られるにしても,それが熱帯地方であると,寒帯地方であるとを問わず,ひろく世界の各地,各国にその発生を見るに至っている。51),52)
 本病がどうしてこのような,全世界にわたる広範な侵染状態を呈するに至ったか,その事由と機序とを明らかにすることは,もとより難解なことではあるが,同時にまた,疫学上きわめて重要な課題でもある。

原著

ポリオ流行地における疫学的環境衛生学的調査

著者: 高桑栄松 ,   小林利夫 ,   小野昌憲 ,   小泉冽 ,   山田守英 ,   松宮英視

ページ範囲:P.139 - P.144

 最近ポリオの疫学的研究の進歩により,流行発生要因のうち環境的要因の有する意義の重要性が指摘されている。欧米1,2)では都市および農村における非衛生的状態などの環境衛生上の悪条件が乳幼児間に広範な不顕性感染を起こさせ,彼らは早期に免疫を獲得するに至ることが明らかにされ,また環境衛生の向上に伴いポリオが増加するといわれている。これはしかし諸要因間の相対的関係により,いろいろな相を描くことはけだし当然であって,地域によって必ずしも同一でないと考えられているが,わが国においてはこのような環境衛生学的観察はあまり報告がなく,特に同時にウイルス学的および血清学的に研究したものは少ないように思われる。昭和35年北海道においてはわが国ポリオ流行史上最大規模にまで進展した流行3)を経験したが,その際道内北部の1農村にも小流行が発生した。よってわれわれは流行地区の住民について病原ウイルスの集団的検索および血清中和抗体の測定をおこなうとともに,ポリオ流行地における環境衛生学的調査を実施した。

埼玉県下の一農村における生経ロポリオウイルスワクチン投与後のポリオウイルス分離成績

著者: 中野英一

ページ範囲:P.145 - P.148

 わが国のポリオの発生は,近年増加の傾向をたどり,1959年には2,917名にまで増加し,1960年には北海道夕張市における集団発生を含めて,年間5,606名という未曽有の大流行をみるに至った。
 このため,全国的にポリナの予防対策に大きな関心が払われ,1961年7月より8月にかけて行政措置として,全国一斉に生経口ポリオウイルスワクチン(以下生ワク)の投与が実施されたことは周知の事実である.しかしながら,この行政措置による生ワクの一斉投与は,極めて緊急に,しかも広範囲に実施されたため,投与の前後における全国的なポリナウイルスの分布状況,あるいはポリオ中和抗体の保有率など,今後わが国におけるポリオ対策に必要な基礎的資料が整備されないままに実施されたことは,極めて遺憾なことであった。

原著

高血圧管理における集団的眼底撮影の研究(第1報)

著者: 新井宏朋 ,   湊正 ,   川上秀一 ,   浦屋経宇 ,   水野武昭 ,   佐瀬広芳

ページ範囲:P.149 - P.155

はじめに
 最近,高血圧管理の集団検診技術として直像式電気検眼鏡による眠底検査がひろく採用され,さらに眼底検査を能率的に実施することな目的として眼底撮影の応用が義論されるにいたった。
 しかし,眼底写真撮影は臨床眼科領域においても,その実用は最近のことでまとまった研究も少ない。このため,その応用ともいうべき集団的眼底撮影の詳細なる研究は皆無の現状である。著者らは数年来,この方面の研究に従事してきたので,境在までの知見をもとにして,高血圧管理のために眼底撮影は必要かいなか? 必要とすれば,いかなる目的で,いかなる段階で,いかなる対象に対して,いかなる方法によって実施し,その評価はいかにすべきかなどについて報告する次第てある。

石油工場廃液中のフェノール性成分について

著者: 上住南八男 ,   長谷川伸一 ,   笠問一男 ,   野呂治典 ,   吉田克己

ページ範囲:P.156 - P.159

 産業活動の旺盛なところでは,これに起因する諸種の公害問題,ことに産業廃水に関連する問題がおこること近年とみに著しく,その事例は枚挙にいとまがない。
 産業廃水により河川その他公共用水の汚染をきたす工場は種々あるが,その工場の種類によって,排出される廃水の量も,その中に含有される物質の種類および濃度も,また汚染要素も種々雑多である。われわれがここにとりあげようとする問題は工場廃水中のフェノール性成分についてである。

降下煤塵量の測器による差異について(第1報)—1958年7月〜1960年6月間の成績/降下煤塵量の測器による差異について(第2報)—乾式法と湿式法の差異

著者: 斎藤功

ページ範囲:P.160 - P.165

1.序言
 現在降下煤塵量は各地の大気汚染度ないし煤塵量を推定する代表的資料の一つとされているが,その測定法には検討の余地が多い。降下煤塵計(Deposit gage)には,現在大別して英国規格煤塵計(British standard depositgage,以下支障なければBGと略記)と,各種の煤塵捕集瓶(Dust jar,以下支障なければDJと略記)などを用いる簡易煤塵計とがある.近年は特に空気塵埃の放射能の検査などに広表面の浅底水盤や,gummed paper,濾紙フィルターなども用いられるが,主として短時日間の集塵用で,いわゆる降下煤塵計としてはBGとDJが主である.BGは英国で1912年以後は基本的な改訂なしに用いられている1).2)。その口径については,12〜70cmの問では単位面積当たりの降塵量に大差が認められず,結局30cmを標準とするようになり3),1948年には精密な規格が定められた4)。英国以外でもある程度国際的に用いられ,英国ではその性能などについてもかなり検討されている5)。DJは米,独その他各国の研究者が大型広口瓶,シリンダーなどを適宜に使用するので,DJの統一された規格はないが,米国では口径4〜5吋,高さ8〜12吋,内容1ガロソ前後のガロソ瓶などが多く使われている6),7)

青森県岩木川流域の恙虫の調査(1.恙虫,2.リケッチァ分離,3.類似症患者)

著者: 木村毅 ,   東富彦

ページ範囲:P.166 - P.171

1.緒言
 恙虫病は秋田,山形,新潟の3県の河川洪水地帯に局在する地方病と考えられていたが,最近は日本全国各地に類似疾患があることが報告されている1)。われわれは青森県にも類似疾患があるだろうとの推測のもとに1959年から調査をして来たが,一応の成績がまとまったので報告する。

文献

DDVP蒸気による航空機殺虫法の予備実験

著者: 清水

ページ範囲:P.159 - P.159

 外来昆虫の飛行機内への侵入を防ぐために現在行なわれているエアゾル殺虫方法は効率がよくないので,これに代わる方法として1953年Quarterman,Sulivanらが換気装置に組み込んだリンデン蒸気発生器を用いて素晴らしい殺虫効果を得たとの報告をして以来,かなりたくさんの研究が行なわれて来たが,われわれが使用した薬剤はDDVPで,この総合研究の第一段階として1959年マイアミ国際空港の地上において,DC-6,DC-7の2機の商用機について実験した。被検体には家蝿を用いた。
 実験結果はエアゾル法に比べて極めて高い殺虫率を示し,DDVP 0.3μg/lが最も有効であった。物体表面におけるDDVPの残留量を調べるため,数々の実験の後で検体を不銹鋼,皮革,ビニールプラスチックなどに接触させて検討したが,プラスチックの表面において最も死亡率が高かった。人体に対する影響についてはこの実験に参加し,実験中機内に所定時間止まった数名の人々について,ほとんど悪影響を認めなかった。実験の結果は航空機内の殺虫には殺虫剤の蒸気を用いることが有利であることを示し,かつ現在用いられているエアゾル法よりも乗客,乗員に不快感を与えないことを示唆している。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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