icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生26巻4号

1962年04月発行

雑誌目次

特集 都市計画 随想

都市計画と公害問題

著者: 曾我幸夫

ページ範囲:P.173 - P.175

 最近都市においては,いわゆる公害の問題がやかましくなってきている。特に大都市において強い。騒音,振動,煤煙,有害ガス,汚水廃水,汚物,粉塵,悪臭というように,人が集まり,工業が盛んになり,工場が建ち並んでくると全くやりきれない状態になって,衛生当局に持ち込まれる問題が近年に特に多くなってきている。これも,しかし根本的には都市計画のいたらなさによることが多い。
 当市における最近の苦情をまとめてみると,第1表のごとくなる。

都市計画と公衆衛生

著者: 小林陽太郎

ページ範囲:P.176 - P.182

両者の関連
 都市計画と公衆衛生との関連について記せという編集部のすすめに従って,本来この問題の専門家ではないが,両方の分野に関連を持つ立場にあるものとして,資料を参照しながら記すしだいである。
 都市計画の定義をその法律によりみれば,大正8年制定の同法に「都市計画とは交通・衛生・保安・防空・経済等に関して永久に公共の安寧を維持し又は福利を増進するための重要施設の計画にして市又は主務大臣の指定する町村の区域内に於て又は区域外に於て執行すべきものをいう」とある。すでに42年以前の定義であって,根本的改正はその間に行なわれていないから,いかに古いものであるかがわかる。また一方公衆衛生の定義をWHO(世界保健機構World Health Organization)の憲法においてみると「健康とは無病息災であるというばかりではなく,身体的に,心理的に,社会的に幸福な状態をいう」とあり,その健康を社会的基盤において維持・開発することがその目的であると記されている。こういう原理的な見方をすると,両者には共通点,共同の目標があることが明瞭であるが,現実の姿においては,非常に関連の少ない状態にあるといわなくてはならない。極端な表現をすることをあえてするならば,今日までのわが国の都市計画は区画整理と道路行政を中心として来たといっても過言ではないであろうし,一方公衆衛生は伝染病予防行政におもなる力を尽して来たといっても許されるであろう。

ニュータウンの計画と生活環境

著者: 日笠端

ページ範囲:P.183 - P.190

はしがき
 最近,わが国でもニュータウンということばが好んで用いられている。これは日本だけではない。ヨーロッパの諸国においては,かつて新しい住宅地をつくると田園都市と呼ぶのを好んだように,最近の新しい大規模団地にはNewあるいはNeuという字を配しているものが多い。NewTownというのは厳密にいうと,英国においてNew Towns Act, 1946に基づいて建設されている15の都市を指すのである。そして,これらはいわゆる衛星都市であって生産施設をもつ独立都市とすることを建前としている。しかし,本文では単に新しい大規模な住宅地計画という広い意味で,英国での見聞を中心に話を進めたいと思う。私は公衆衛生の専門ではないけれど,生活環境とくに開発密度の問題については関心をもっているので,なるべくこのような点に触れたいと思う。何かお役に立てば幸いである。

都市公害の実態

著者: 大野達二 ,   小林茂

ページ範囲:P.191 - P.202

1.まえがき
 「都市公害」という言葉の概念は,明確に確立されているわけではない。しかし私どもは,都市行政上,これを次のとおり3大別して考えている。
 第1は,騒音および振動である。音響が発生する原理としての振動はもちろん,騒音問題の一部に含まれているものであるが,公害の一種としての振動は,いわゆる身体に感ずる振動であって,これも通常騒音問題と関連して発生するものである。

英国の新都市

著者: 駒田栄

ページ範囲:P.204 - P.213

1.はしがき
 東京都は本年2月で1000万都市となり,世界史上はじめてのマンモス人口をかかえた大都市が出現したのであるが,なお,年間約30万ずつ増加しているこの状態が続けば,近い将来1,500万都市になるといわれる。しかもこれらの人口増加の7割までが社会増で,住宅問題交通問題,衛生問題などの行政上の対象になる人たちばかりだとすれば早急に対策をたてで何とか打解しなければならぬ曲り角にきているといわれる。都では昭和32年から10カ年計画で,首都圏整備委員会をつくり次のような基本方針のもとに打開策を講じているといわれている。(1)区部や隣接の既存市街地では,人口増加の原因となる工場学校の新増設制限,(2)その外側に約幅10キロのグリーンベルト地帯をつくる,(3)その外側に工業衛生都市をつくる。これらは構想であり,現在まだ実行の段階にはほど遠いもののようである。人口数では常にかなえの軽重を論ぜられるロンドンで,すでにこれら3案とも計画され実施され,ほぼ完成している英国のいわゆる新しい都市づくりの概要をみなおしてみたい。私は英国の新都市を見ていないので,専問の誌上で報告されたもの,あるいは新都市の計画書,その他近着の2,3の資料から抜萃して書いてみるが,多少数字のくい違いだの,計画とその後実施上変更されたものなどの相違のあることをあらかじめお断わりしておきたい。

都市計画と水道計画

著者: 寺岡初

ページ範囲:P.214 - P.221

まえがき
 現在わが国の都市には多くの問題点があるが,早急に解決をせまられているものは何か,問題点の一つ水道施設はどのように計画されているか,また特に立ち遅れのはなはだしい下水道施設の促進はいかにすべきか,などについて述べていくことにする。

都市圏拡大過程における近郊自治体の経営機能をめぐる問題

著者: 東田敏夫

ページ範囲:P.222 - P.230

1.問題の所在
 1960年の国勢調査の結果によると,東京都人口968万,大阪府人口555万であり,過去5年間における人口増加はそれぞれ104万,88万におよんでいる。また1961年度の厚生白書によると,6大府県の人口はますます増加を続け,とくに京浜,阪神を中心とする2大都市圏に全国人口の2/3が集中しているという。これらは,いうまでもなくわが国の資本主義経済の独占過程における産業化の進行,大都市圏における第2次第3次産業の集約,拡大と農山村の低開発地域よりの労働力の移入,集中によるものである。
 このような都市人口膨張の過程をややくわしく検討すると,都市内部における人口密度の加重と市内人口,とくに中間層の郊外転出(人口の遠心的運動)をみとめるとともに,都市近郊あるいは衛星地域における都市化の進行による都市圏の拡大の過程にほかならない。

都市住宅団地の医療保健施設設置計画—大阪千里丘陵住宅地建設の場合の一提案

著者: 吉武泰水 ,   浦良一

ページ範囲:P.231 - P.236

住宅団地と医療施設
 1.戦後東京,大阪をはじめとする大都市には,住宅団地が建設されていったが,当初は,住宅団地の規模も小さく,しかも市街地内に多くは建設されたので,診療所,病院などの医療施設は教育施設がそうであったように,周辺の既存施設利用にたよればよかったので問題とはならなかった。しかし最近はその規模も1,000戸以上の団地が多く,しかも都市の近郊地域となり,しだいに衛星都市建設化の動きがみられるようになってきた。そこで医療施設も住宅団地内に新しく建設する必要が生じ,団地診療所の問題が論ぜられるようになってきた。今ここで述べようとするものもその一つで,大団地建設の場合の医療施設設置計画についてである。
 2.住宅団地の医療施設設置計画立案にあたっては,次のようなことが問題となる。

千里ニュータウン医療圏計画の実施に伴う諸問題

著者: 朝倉新太郎 ,   百々英明

ページ範囲:P.237 - P.242

はじめに
 千里ニュー・タウンにおける保健医療組織の構想については,本誌吉武教授の論文をはじめ,すでにいくつかの報告1〜3)がなされている。千里ニュー・タウンの企画全体としてみても,その規模と内容において,わが国の都市計画上画期的なものといわれているが,とりわけこの保健医療施設の組織と運営に関する計画は,全く新しい分野を開拓するものとして広く注目をあびているところである。
 さて,保健医療組織の計画も,いわゆる青写真を作るだけのことであれば,都市計画に含まれる他の諸計画に比べて,施設の立地条件や構造に特別の配慮が要るとはいえ,その道の専門家にとって技術的に格別困難なことではあるまい。保健医療サービスの需要を量および質の面にわたって推定すること,それを基礎にして各種保健医療施設の配置を考えること,個々の施設を設計することなどは,道路計画において,交通量を予測し,幹線と支線の組み合わせ,路面の巾や舗装をどうするかを決めるのと,本質もあまり変わったところはあるまい。よしんばその保健医療計画に機能面で新機軸を出すため,たとえば予防と治療の統合,病院と診療所の機能分化,病院のオープンシステム,Group Practiceなどのideaを盛り込むにしても,青写真の段階ではある程度自由に構想をえがくことが可能である。

原著

離島・僻地—対馬—の医療・保健衛生の実態—(第1,2報)

著者: 相沢竜 ,   原田圭八郎 ,   南明範 ,   三浦創

ページ範囲:P.243 - P.250

はじめに
 3世紀中ごろの日本列島の有様を伝えた魏志倭人伝1)には,当時の対馬国が印象的に描写されている。「初めて一海をわたる千余里,対馬国に至る。……居る所絶島,方四百余里可り,土地は山険しく,道路は禽鹿の径の如し,千余戸有り。良田無く海物を食して自活し,船に乗りて南北に市糴す」と。このように表現された対馬は,現在も依然離島僻地として,医療保健衛生の面で多くの問題を内蔵している。国民皆保険の進展に伴い,無医地問題は大きな社会問題となりつつあるが,著者らは1960年夏長崎大学対馬綜合学術調査の一部として対馬の医療保健衛生の実態調査を担当したので,その成績の概要を報告する。

文献

事故の予防と看護/公衆衛生行政と公衆衛生法規との関連性

著者: 有賀

ページ範囲:P.182 - P.182

 近年小児および壮年者の事故死亡は他の一般的疾患より増えて来た。事故を予防するということは,伝染性疾患を予防することよりはより多くの個人的の知識と行動に依存しなければならない。
 過去における事故予防対策はもつばら環境要素を主として来たが,知識の発展にしたがい,環境要素の観察も続けなければならないことはもちろんであるが,そのほか人間側の条件も注意する必要があるようになった。また今日の事故の大部分は家庭において起こり,年齢別にみると2/3は65歳以上がしめ,小児がこれに続く。多くの研究によると小児の事故は大部分予防することが可能であるといっている。ディートリッヒは小児事故の予防は"Learn andlive"であるといっている。一方また学校などにおいても,安全教育プログラムを押しすすめるべきである。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら