icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生26巻6号

1962年06月発行

文献概要

特集 コレラ・パラコレラの疫学 流行史

世界のコレラ

著者: 松田心一1

所属機関: 1国立公衆衛生院疫学部

ページ範囲:P.313 - P.319

文献購入ページに移動
1.序説
 紀元前5世紀のころ,Thucydidesはアテネ人の間に流行した疫病の記載をしているが,それによると,腸の内容物が純水様(like pure water)に流れ出たとあるので,これがおそらく真性コレラの記録として,もっとも古いものであろうとされている。1)
 もともと,コレラという病名は,語源学的にはギリシャ語で胆汁疾患という意味に解釈されていて,ギリシャの古い書物のなかには,胆汁様排泄物を出す病気の記載もみられるが,この言葉が初めて用いられたのは,Hippocratesの書物である。しかし彼が,はじめて"コレラXoλερa"として記載した病気は,現在のコレラとは異なるものであろうと考えられている。また,同時代のインドの古い医学書にみられるコレラ様の疾患も,もとよりたしかなものでないとされている。7世紀のころ,インドの医師Súsrutaが,下痢,嘔吐その他の臨床症状が,コレラとそっくりな病気の記載をしているが,しかし,それが,現在のアジアコレラのような流行の形をとったという記録はなにもないのである。その後,はるか後世にはいって,16世紀以後のインドのコレラは,最も早いゴア州の流行をはじめとして,数世紀にわたる流行について,すべて多くの欧州人たち,すなわちオランダ人,フランス人,イギリス人の学者たちによって詳細に記載報告せられていることは周知のとおりである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら