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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生26巻7号

1962年07月発行

雑誌目次

綜説

界面活性剤について—特に中性洗剤ABSを中心として(1)

著者: 柳沢文徳

ページ範囲:P.365 - P.377

はじめに
 わが国において,界面活性剤(後に定義する物質)であるABSの生体におよぼす影響に関する研究がきわめて少なく,また毒性に関する研究の外国文献紹介が見当たらぬのに私は驚いた。もちろん系統的に調査したわけではないが,非イオン系の2,3の活性剤およびカチオン活性剤は第4級アンモニウム塩である逆性石鹸を中心とした文献は容易に見出しえたが,アニオン活性剤とくにABSについてはほとんど見当たらぬ。
 ABSは昭和26年に輸入され,洗剤として普及し,次で昭和31年に野菜・果物・食器の使用として始まり,昭和33年よりこの方面の使用は急速にのびたわけであり,また洗浄用としても広く利用され,必然的に飲用水にも侵入する可能性があるのにもかかわらず,当時経口からの影響,皮膚への影響,上・下水道問題などの研究が,日本において皮膚科領域を除き何ら研究がない。

地区診断における条件分析の論理と定式化

著者: 小林治一郎

ページ範囲:P.378 - P.389

1.問題の所在
 公衆衛生活動ないし社会医学的な活動を行なうに当たって,自然科学的な方法のほかに,社会科学的な方法が用いられねばならないことはいうまでもない。そして公衆衛生活動あるいは社会医学的な活動に適用されうる社会科学的な方法ということについては,多くの人たちが深い関心を有し,今後多くの研究がなされなければならない。この小論も,そうした立場にたつものである。
 最近「地区診断」という技法と学問的体系ができつつある。これは広くいろいろな職種の人たちの活動に適用可能なものであるが,現在では主として保健婦たちが,地域社会を対象として,集団的な保健活動を行なおうとするとき,採用されている方法である。それが「保健婦のための技術1)」とされ,「地区診断について保健婦が熱狂2)」しているといわれるほど,保健婦たちは広く関心を有している。

大気汚染防止対策について

著者: 小山正栄

ページ範囲:P.390 - P.392

はしがき
 法を制定する場合,その目的を明らかにし,また,社会的要求と世論の動向を見極めることが,大切であることは,しまさら申し述べるまでもない。このことは,立法作業に従事するものの常識であろう。
 ところで,このたび提案された「ばい煙の排出の規制等に関する法律案」は少なくともこの常識にそっているかどうか?

名誉会員を訪ねて・4

近藤正二先生にきく

ページ範囲:P.393 - P.404

金がないので都落ち
 編集部先生 きょうはお忙しいところをありがとうございます。
 近藤 どうも恐れ入ります。

公衆衛生最近の進歩

産業衛生—転換期に立つ労働衛生管理

著者: 土屋健三郎

ページ範囲:P.405 - P.411

はじめに
 産業衛生という言葉は,恐らくIndustrial hygieneまたはGewerbe Hygieneという英語やドイツ語の訳であろう。現今,Industrial hygieneといえばむしろ,衛生工学,すなわち労働環境を人間に適合させるためのengineeringを意味するので,医学その他を包含する大きな意味での産業衛生はIndustrial healthと表現したほうが適当であろう。また,最近では工場以外のオフィスや農業などを含めてOccupational health(労働衛生,またはあまり使用されていない邦語ではあるが職業衛生)といったほうがよいように思われる,英語でIndustrial healthという言葉を用いてあっても,それは工場以外の労働職場,または働く人すべてを含むものであることを明記している1)。このように言葉の表現方法や内容が変化して来たこと自体が,最近この方面の学問や技術が進展して来たことを如実に示している。一方産業以外の職場,たとえば,事務作業なども機械化オートメーション化などによって,あたかも産業職場の様相を呈して来たことにもよる。
 ところで,日本における労働衛生または産業衛生は,先進諸外国に比較すると,その歴史も浅いし,従って,行政的にも,学問的にも若いものであるといえよう。

原著

某精神病院における細菌性赤痢の長期持続観察

著者: 杉野俊一

ページ範囲:P.413 - P.416

1.緒言
 細菌性赤痢の防疫についてはすでに常識化されている観があるが,それにもかかわらず今日もなお高度の罹患率をもって流行しつづけている事実は,防疫面においても,ひいては疫学の方法についても,なお検討すべき余地が残されていることを思わせる。
 従来行なわれた赤痢の疫学的調査は,その大多数が一つの集団発生に際しての「流行調査」であり,時にある時期にある集団の感染状況を調べた「実態調査」の報告がみられる。しかしこれらはいずれも比較的短期間の調査であり,したがってすでに集団のなかに土着し潜行している赤痢が,どのようにして授受されてゆき,かつ流行をひき起こすかを知ることは困難である。この不顕性感染のメカニズムを探ることはことに現在のわが国では重要な疫学上の課題であり,それには一集団の長期にわたる持続的な調査が必要であると思われるが,この方法による報告例はほとんど見当たらない。1)2)

紹介

最近のソ連医学の研究課題—保健サービスの充実をはかる

著者: 北上幸雄

ページ範囲:P.417 - P.418

 ソ連医学の中心は,予防医学にその中心がおかれているが,国民の健康に奉仕する医学研究および医療制度の発展は,国民生活の重要な福祉面としてとり上げられている。
 「薬品の投与とナトリウムでの患者の治療をふくむ,すべての市民への無料の医料サービスは,社会の消費基金の負担で実施される可能性をつくること」はその命題のひとつである。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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