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文献概要
原著
某精神病院における細菌性赤痢の長期持続観察
著者: 杉野俊一1
所属機関: 1九州大学第2内科
ページ範囲:P.413 - P.416
文献購入ページに移動細菌性赤痢の防疫についてはすでに常識化されている観があるが,それにもかかわらず今日もなお高度の罹患率をもって流行しつづけている事実は,防疫面においても,ひいては疫学の方法についても,なお検討すべき余地が残されていることを思わせる。
従来行なわれた赤痢の疫学的調査は,その大多数が一つの集団発生に際しての「流行調査」であり,時にある時期にある集団の感染状況を調べた「実態調査」の報告がみられる。しかしこれらはいずれも比較的短期間の調査であり,したがってすでに集団のなかに土着し潜行している赤痢が,どのようにして授受されてゆき,かつ流行をひき起こすかを知ることは困難である。この不顕性感染のメカニズムを探ることはことに現在のわが国では重要な疫学上の課題であり,それには一集団の長期にわたる持続的な調査が必要であると思われるが,この方法による報告例はほとんど見当たらない。1)2)
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