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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生27巻1号

1963年01月発行

雑誌目次

特集 公衆衛生今後の方向 巻頭言

新年にあたつて

著者: 野辺地慶三

ページ範囲:P.1 - P.2

 新年は過ぎた日を願み,来る歳月の計をなす時である。私は本誌についての過去の思い出1つと,公衆衛生界の将来への祈願1つとを述べて新年の言葉としたい。

公衆衛生今後の課題

著者: 安倍三史

ページ範囲:P.3 - P.4

 これは公衆衛生学に対する私の夢である。私はこの夢を追って遅いがこつこつと遙かなる道を歩みつづけている。

公衆衛生今後の課題

著者: 辻義人

ページ範囲:P.5 - P.6

 公衆衛生は黄昏かという議論が5年ばかり前に論ぜられた。この発端はP氏なる一保健所勤務医師の手紙であった。それには「現在の公衆衛生には,若い医師をつなぐ魅力がほとんどないと思います。待遇は低いし,雑務ばかり多くて成果に安心と自信が持てませんから生き甲斐はありませんし,技術的にも設備も仕事の内容も低いので専門技術者の働き場所としてはまことに魅力の乏しい場所です。云々」(公衆衛生21巻1号)ということであった。この手紙に対して各界の人から回答の手紙の形で多くの意見が述べられたのであった。
 私は医師を養成する医科大学において公衆衛生を講ずるものとして,改めて医学教育と公衆衛生について種々考えさせられたのであった。

公衆衛生今後の課題

著者: 村江通之

ページ範囲:P.7 - P.9

 敗戦後第一番に気がついたことは,日本人の社会には公衆衛生の常識が確立しておらず,その程度の非常に低いことであった。よって当局はいち早くアメリカ占領軍の専門家の指導のもとに,これが対策樹立へとふみきったのであった。そうしてあれからすでに17年目を迎えたのである。この間非常に遅々とはしておるが,敗戦当時に比較すれば,大きな進展を見たと申しても過言ではない。
 しかし今日の日本の公衆衛生の確立状態は,世界の先進国と比較するに,あらゆる面でこれでよいというべきところまで来ておるものはない。この原因に関しては,甚だ大きな疑問を持たなければならぬ。

公衆衛生今後の課題

著者: 福井忠孝

ページ範囲:P.10 - P.11

 戦後のわが国公衆衛生の発達は顕著なものがあり,国民皆保険の段階となり一段と進歩発展しなければならない時機にある。したがって今後の公衆衛生は新機軸を開く必要がある。
 過去15年間を全国的にみて地域差が人間のあらゆる面で著しくなってきた。公衆衛生の分野においても生活条件の相違が疾病罹患,死亡,出生,子供の発育等に著しい地域差を生ずるに至った。その状態は恰も日本人の人間改造実験を行なっているようなものである。戦後ビタミン剤の発達とともに強化食品の発達はわが国民食の欠陥であるビタミン欠乏をおぎない,各種薬剤並びに予防接種の発達は結核を始めとし伝染性疾患に効果をあらわしており,さらにアミノ酸剤の利用は蛋白質の栄養価を高め,発育と健康の増進が期待されている。

都市衛生行政今後のあり方

著者: 小林彰

ページ範囲:P.12 - P.13

 保健所が現行の保健所法によって,戦後初めて新らしい行政形態の息吹きを吹き込まれた時,すでに都市型の保健所構想と農村型のそれとが異なって考えられたことは周知の通りである。杉並の保健所を昼夜兼行してモデル保健所に改築し,いわゆる新しい保健所のあり方について講習が行われたとき,その指導書の中にもこの区別は明かに示されていた。この2つの型は机上において考えるときは明かに考え易いけれど,実際に当って個々の保健所をみると,必ずしも簡単に型づけを定めにくい。都市といい,農村といっても実際の住民のあり方の姿はそう簡単に形成づけられるものではないからである。厚生省がその後保健所の型について種々変更を加えているのも当然であろう。
 私がここに都市の衛生行政について申し述べるに当って,敢えて保健所の問題から言及するのは,都市といわず,農村といわず,今後の衛生行政の扇の要めは保健所に在るからである。そして都市といわず,農村といわず,すべての衛生行政は,保健所を通じて実践され,それを通じて情報が把握されなければならない。衛生行政はここに一つの重要なポイントをもっている。

衛生研究所今後のあり方

著者: 児玉威

ページ範囲:P.14 - P.15

 地方衛生研究所今後のあり方については国の考えも地研側の考えもまだ固まっていない。従ってここで述べることは私個人の考えであることをおことわりしたい。1.地研の成り立ち昭和23年4月厚生省3局長の通達によって,従来各都道府県にあった細菌検査所・衛生試験所等を整理統合し,総括試験研究機関として発足したもので,現在46都道府県・5大市および川崎・仙台の総計53ヵ所に設置されている。2.地研の現状地研の内部組織や機能については地方衛生研究設置要綱に一応の型が示されているが,これをどのようなかたちで整備するかは,各地方自治体の自主性にゆだねられているため,その規模や内部組織は各地まちまちである。全国地研多年熱望の地研関係法案の制定を促進するには,これを裏付けるに足る確実な資料の作成が先決と思われるので,昭和33年度全国地研実態調査が行なわれ,その結果が多くの角度から分析された。3.地研の3大業務,地研は府県(市)における公衆衛生上の試験検査および調査研究の中心としての役割をもつもので,その主要任務は次の3つとされている。(1)衛生行政上または公衆衛生上必要な各種の試験検査,(2)衛生行政上または公衆衛生向上のため必要な調査研究,(3)保健所検査室等の検査技術者の教育訓練。4.病院検査と公衆衛生検査業務は病院検査業務と公衆衛生検査業務に2大別される。

今後の保健所事業

著者: 清水寛

ページ範囲:P.16 - P.20

Prologue
 「公衆衛生の目的は,人間の健康の保持増進にある」とは,一般の定説のようであるが,これを実践してゆく最も重要な機関として,保健所は本来大変にだいじな役割を有っているわけである。また保健所を設置する都道府県や政令市は,人間の健康の保持増進について,保健所のスタッフと同じように,大きな責任を負うている筈である。
 他方,保健所活動の方法は,医学・公衆衛生学などの進歩と無関係ではあり得ない。生命尊重の学問の進歩にこともなって,その実践活動も,日に月に新たに,改良され強化されなければならない。人員,設備,予算,事業,いずれの面においても。

保健所事業に期待するもの

著者: 石垣純二

ページ範囲:P.21 - P.24

愛される保健所を
 現在の保健所事業に何を期待するかと問われれば,もち論私は「地区の人々に愛される保健所事業,地区の人々が本当に喜んでいる保健所事業」というものを期待するわけです。そうなると,例えば型別保健所とか共同保健計画というような,現在厚生省保健所課の打ち出している保健所事業のあり方の,根本性格というものは大変立派であるし,またこれは是非実行してもらわなければ困ると思うのです。しかし,果して型別保健所とか,共同保健計画というものを,現在の保健所の在り方の上に乗せることができるかどうか,考えてみると私にはまず不可能ではないかと思われます。

名誉会員を訪ねて・7

古屋芳雄先生に聞く

ページ範囲:P.25 - P.33

留学を目的に千葉医大助敦授に就任
 編集部 順序といたしまして,東大をご卒業になった頃からお話を伺いたいと思います。
 古屋 これはあなた方が,将来公衆衛生学の発達史をお作りにこなろうという考え方を持っていらして,これに私が,どんな方面で,またどの程度の役割を演じたかを話せという意味か,それとも,そういう難しい意味でなく,ただ私の公衆衛生学者としてこの回顧という意味で話したらいいのですか。

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アジアの保健—東南アジアの人口問題と衛生事情

著者: 東田敏夫

ページ範囲:P.34 - P.43

はじめに
 私は,去る3月から2カ月余り,東南アジアの諸国を視察する機会を得た。ひとくちに,東南アジアといっても,風俗習慣から,政治経済の事情まで,さまざまであり,わずかな観察から,これをものがたることは容易なことではない。
 まず,平均気温25℃以上という熱帯地域の暑熱の人間の生理,とくに労働生活にたいする負担は無理できない。またこの地域に特殊なモンスーンは,はげしい雨をともない,多雨地域をつくり,これが主な産業である米作農業の基盤となっている。また植民地時代以来,治水事業のおくれのために,雨期には,しばしば田畑,家屋の流失をくりかえし,アジアの貧困の一因となっている。

公衆衛生教育制度の将来について

著者: 野辺地慶三 ,   原島進 ,   秋谷七郎 ,   越智勇一 ,   勝沼晴雄 ,   北博正 ,   小林行雄 ,   榊原悠紀田郎 ,   広瀬孝六郎 ,   柳沢利喜雄 ,   湯槇ます

ページ範囲:P.44 - P.48

 公衆衛生活動における人の問題の重要性にかんがみ,厚生省では昭和36年8月,つぎの11名の学識経験者を公衆衛生教育制度調査委員に委囑し(委員長野辺地慶三博士),以来同調査会(昭和36年9月公衆衛生教育制度研究協議会と改称)は,50回に及ぶ会合をもつて調査審議の結果,昭和37年10月末報告書がまとまり,過般野辺地委員長から西村厚生大臣に答申された.以下は本報告書のうち前文および医師に関する部分である.

戸田正三先生の面影—御一周忌にあたつて

著者: 川畑愛義

ページ範囲:P.49 - P.51

1
 わが国の衛生学ならびに公衆衛生学の先達の一人であられた前金沢大学の学長戸田正三先生は,1961年11月20日,金沢大学医学部付属病院で肺癌のため死去せられた。
 先生の学界における研究業績あるいはその活躍の趣きは,すでにおおかたの周知のところで,他の雑誌等においても追悼の紹介がなされているが,本誌にはまだそのようなことがないので,末弟の一人として潜越ながら「学校保健」を中心として先生の思い出を記録してみたいと思う。

文献

アジアインフルエンザ—大きな閉鎖集団に於ける孤立的流行について,他

著者:

ページ範囲:P.6 - P.6

 1960年2月,単一の建物の中でアジアインフルエンザの集発団生があり,約1カ月間に64人(23%の発病率)1日最高16人罹患した。このことは,1958年と1959年の2回にわたり単価と多価のワクチンの予防接種を行っていたので,全く予想もしていなかったことである。本論文はこの流行の患者を抽出してその発生状況や患者の血清学的検査(血球凝集阻止現象,中和抗体,補体結合反応)およびウイルスの分離等について具体的に述べている。
 すなわち血清学的面では急性期と回復期の患者血清をとり,抗体価産生の程度を検討し,すでに予防接種を受けている接種群(80%)とそうでない非接種群(20%)との抗体価産生度の差違を明らかにした。そして非接種者がインフルエンザ流行に重要な役割をはたしていることがわかった。したがって予防接種は少くも80%以上の人が受けなければこの程度の集団免疫としては意義が少く,20%程度の人が受けないでいると,その人はもちろん,抗体価の充分ある人も罹患すると述べている。またワクチン自体にも問題があり,充分病気から守るための抗体価はどの程度あったらよいか,また高い抗体価をもっている人も保菌者提示となりうるという問題等を最後に著者は提示している。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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