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原著
奄美大島におけるハブ咬症の治療の現況と血清病について
著者: 沢井芳男1 牧野正顕1 館野功1 川村善治1 関口守正1 桜井靖久1 小此木丘2 田川稔3
所属機関: 1東大伝染病研究所 2群大病理学教室 3名瀬逓信診療所
ページ範囲:P.620 - P.627
文献購入ページに移動奄美大島におけるハブ咬症の治療の研究は1957年の現地調査以来続けられ1〜6),治療血清の精製と凍結乾燥7),血清以外の中和剤8〜16),投与方法7)等の研究が進められ,治療が強化された結果,現在ではハブ咬症による死,あるいは受傷後数日で起る広汎な壊死も最小限にくいとめられるようになった。ことに前者では受毒量が多いために最初から嘔吐,頻脈,血圧降下,チアノーゼ等の警戒すべき症状が発現するので,単に血清のみに頼らずに糖リンゲル等の点滴,アドレナリンあるいは副腎皮質ホルモン等の抗ショック剤,あるいは各種ビタミン及び強肝剤等の全身療法を最初の24時間に強力に続けることによりほとんど確実に死から救うことが可能になった。ただ受傷後数日で起ってくる広汎な壊死の発生機序にはまだ不明な点が残されているが,急性の局所の循環障害がとり除かれればひどい壊死が防止されるのではないかと思われるので,われわれの研究ももう一歩のところにきている。またこのようにして大部分のものが血清その他の療法により大事に至らずに治癒するようになると,次に問題となるのは血清病であろう。われわれの調査では血清注射による急性のアレルギーショックあるいはそれに伴う死には出会ったことはないが,ハブ咬傷そのものは2,3日で治癒したものの7日前後にやってくる血清病のためにかえって苦しんだ例すらあるからである。
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