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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生27巻4号

1963年04月発行

雑誌目次

特集 新会計年度の抱負

成人病センターを設立

著者: 伊吹皎三

ページ範囲:P.193 - P.194

 国の所得倍増計画に先立って,本県では昭35和年の暮に「県経済長期計画」を立案発表し,最終年度の昭和42年迄に,全国平均1人当りの所得の75〜80%に低迷している本県民所得を,少くとも90%まで引上げるべく,鋭意努力中で,今年はその3年目に当る。この中には衛生計画として,上水道,し尿塵芥処理,公害問題,母子衛生,栄養対策,無区地区解消,成人病,結核,精神病,伝染病対策等が折込まれている。
 最近衛生予算は著しい伸びを見せて居るが,その主なるものは,結核精神病等の法改正によるものである。然し一方,衛生研究所の拡充,母子衛生関係事業の拡大,簡易水道の県費補助,沿岸無医地区巡回診療船の建造等多額の県費投入が原因となっている。

住みよい郷土をつくるために

著者: 村中俊明

ページ範囲:P.194 - P.195

はじめに
 思いがけない雪害におそわれて1月23日から上野〜新潟間の直通列車は止まつています。もう2週間余りになります。2月2日,雪では初めての災害救助法の発動が,しかも知事の判断で行われました。今5,000人の自衛隊員が幹線道路の開通に全力をあげています。今日までに5万人を下らない消防隊員が除雪に動員されました。毎日100本を越える列車が雪棄てに動いています。豪雪地帯の市や町や村ではまだ2階の窓から出入りしています。我慢強い雪国の住民は今歯を喰いしばって未曽有の災難に耐えています。この災害が東京に起きていたらどうでしよう。間のびのした国の対応策がもどかしくてなりません。
 昨2月8日知事査定が終って今新年度予算案が整理されています。これが2月,県会で討議され最終決定を見ることになるわけです。したがって以下申述べる事項は中間的なものであることを御了解いただきたい。

大阪市に於ける昭和38年度の計画

著者: 広島英夫

ページ範囲:P.195 - P.197

 昭和38年度の抱負を述べるに当って第一にあげたいのは,大阪市教育委員会と共に2年前から検討してきた小児保健センターの建設である。現在,保健所では乳幼児健康診査,3才児健康診査,学校では定期健康診断が行なわれているが,その事後措置は徹底していない。これらの乳幼児,児童生徒の一斉健康診査を効果あらしめるためには,事後措置としての諸検査や処置をより高次の医療機関によって行なう必要がある。しかしわが国ではかかる小児専門の,小児外科,小児眼科等々各科を備えた医療機関はないのである。
 次に小児を取り扱う場合には,常に教育的配慮がされねばならない。ことに弱視,難聽,肢体不自由,言語障害,喘息などは,治療というよりはむしろ長期にわたる教育訓練が主である。しかし,既存の病院形態の中ではこれの実現は困難と言わねばならない。

38年度の予算編成と抱負

著者: 須川豊

ページ範囲:P.197 - P.198

 昨年11月,兵庫県へ赴任して,直ちに38年度予算編成に当面した。知事選挙が11月下旬にあったので,経常経費の算定が,財政当局で行なわれることからはじまった。従来のやり方は,各部の重要施策の決定を行ない,それに伴なって,予算をきめるので,知事が当選されて,12月中旬になって重要施策の審議が行なわれた。
 赴任早々であったので,従前からの継続や,いきさつのある事業も多いので,各課のプランに従って方針を樹立した。事業を行なうための基盤である保健所の整備,古い建物で困っている衛生研究所の新築などの他に,「衛生行政の浸透施策」などを一つの柱として「衛生行政の基礎確立」という題目が特異なものとして最初に掲げられていた。衛生行政の浸透というのは,保健所の仕事が民衆生活の中にとけこむ方途を講ずることであって,真に民衆に喜ばれる施策として浮かび上り,気持と行動の両面から協力してもらうために,保健所が地域の人々と相談したり,計画したり,教育する費用を要求するので,予算としては,困難な性質のものである。幸い昨年度予算化された実績があったが,具体的の方法は,種々の事情でまだ充分に行なわれていなかった。

福祉計画の第一歩

著者: 北野博一

ページ範囲:P.198 - P.200

 昭和38年度厚生省予算の内容についての説明を1月21日,22日の両日にわたって全国衛生主管部長を集めてなされたが,増加率は前年度に比して21.7%と大層順調な伸び率である。しかしながら,その内容については予算確保について大きな努力を払われた担当者の方々に対しては申訳ないことであるが,特別な新鮮味はなかった。
 保健衛生の事業は共同保健計画の意図するように,先ず地区の保健衛生上の問題点が科学的に把握され,地区住民の自主的な解決への意欲がたかまった上で,各関係団体・役所が一致協力することによって理想図が描き上だされるのではないだろうか。その線に沿って予算が編成され執行される時に始めて理想的な事業執行がなされ,保健衛生の第一線機関たる保健所は益々その真価を発揮することとなろう。しかし現在の機構はこの理想達成にはほど遠いものがある。府県の段階でこんな風な予算編成がなされてほしいと思うことが国の段階で実現不可能のことが多い。

衛生行政の課題

著者: 長束正之

ページ範囲:P.200 - P.202

はしがき
 公衆術生を推進し,健康でしかも清潔な明るい都市をつくるためには,行政を担当する機構の拡充もまた必要であることは申すまでもない。福岡市においては今から1年半前に機構改革によって衛生局が誕生し,他の行政部局とやっと肩を並べ衛生問題を解決する態勢が出来たので,私共衛生関係の職員はかたいチームワークの下に衛生の立遅れをとりもどすべく諸般の活動の積み重ねによって,全体としてのレベル向上をはかるべく最善の努力を行なっている。
 現在福岡市の人口は70万を越え,年間の増加は,社会増も含めて2万ないし3万人におよび,かつ博多港・板付空港を有して九州における政治,文化,経済の拠点都市として発展を続けている本市の衛生需要にとってはむしろおそきに失したのではないかと思う。

新会計年度の抱負

著者: 福田千代太

ページ範囲:P.202 - P.204

 新年度の抱負などと題して,ことさらに言上げしようとも思わないが,折角のご厚意をいただいたので稿をおこしてみた。
 本年度の私どもの仕事の方向は,県民の健康を積極的に保持し増進するための「健康管理対策」と,病気にかからぬように,またかかった場合は,医療の保障ができるようにとの「疾病予防・治療対策」とを2本柱として,これに本県の半分は沢山の離島が散らばっている地理的な特殊性にそった「きめの組かな衛生行政」の浸透を図るという3本柱を基本的な方向としている。

綜説

オリンピック選手強化と体力医学

著者: 石河利寛

ページ範囲:P.165 - P.170

はじめに
 1964年に予定されている東京オリンピック大会はすでにあと1年を余すだけとなつた。道路,建築とならんで選手強化もまた急ピッチで進められているが,最後の項目については体力医学に負うところが多い。スポーツは身心の全能力を傾けて勝敗を競うものであるから,選手の能力を判定し,それを強化しまた選手を疾病から保護することは体力医学に課せられた重要な課題である。
 しかし,数年前まではスポーツと体力医学とはあまり密接な関係を持っていなかったように見受けられた。これはスポーツの側が,カンと経験に頼ってトレーニングを行なっていて,学問と無縁であったし,いっぽう体力医学者はスポーツの現場の実態に暗く,ただ自分たちの興味のみでスポーツを研究対象としていたので,スポーツの現場から嫌われた傾向があった。しかし,最近のスポーツは科学の裏付けがなくては発展しないことが明らかになった。スポーツの現場と体力医学とを密接に結びつける契機として東京でオリンピックが開催されるということは重要な意味を持っているように思う。私はローマオリンピック大会に東京オリンピック選手強化対策本部から派遣されて参加したが,これは一役員として参加したのにとどまり,選手団の一員として選手の強化にタッチしたわけではなかったが,欧米諸国で体力医学の関係者が選手やコーチと起居を共にして協力しているのを見て,日本のおくれを痛感した。

小児マヒとリューマチ熱に関する討論

著者: 岡部宗雄

ページ範囲:P.171 - P.176

 小児結核,急性灰白髄炎および急性関節リューマチの予防医学に関する国際セミナーが在パリ国際児童センター(C・I・E)主催,国際児童セミナー日本運営委員会(委員長;東大名誉教授,栗山重信博士・委員;阪大教授,西沢義人博士ほか15名・実行委員;東京都衛生局長,小林彰博士ほか15名・事務局員;日仏医科会長,慶大教授,三浦岱栄博士ほか29名)協力のもとに,東京・駿河台の日仏会館ホールにおいて,1962年11月13日から,5日間に亘り開催された。
 このうち第4日目と第5日目に行なわれた「急性灰白髄炎と急性関節リューマチの予防」に関するセミナーの傍聴記を東京都日本橋保健所の岡田貫一所長(本誌編集委員)の依頼があったので,いささか旧聞に属するが,記すこととする。

最近の日本における腸チフス発生屈出の著明な減少に対する原因的考察—終戦前後のパラA流行の潜在と,その後におきた腸チフスに対する感受性の変化ならびに患者発見能力の指標としての腸,パラ比と日本の地位

著者: 佐藤徳郎 ,   湯浅秀

ページ範囲:P.177 - P.192

 終戦後の日本の腸チフス,パラチフスの減少は非常に著明である。その原因はいろいろの条件があげられるが,定説が見当らない。著者の一人は終戦前後のパラAの流行を経験し,各地に潜在した跡を認めえたので,それを中心に当時の腸チフス,パラチフスの流行の資料を整理し,腸チフス発生に対する意義を考察した。その結果まだ補強を必要とするが,国内におけるパラAの大き上な流行の存在したことが推定され,パラAに罹患したことが腸チフスに対する抵抗を強めるとすると,腸チフスの減少に対する意味づけが可能であり,この現象は年令別腸チラス,パラチフスの罹患曲線の上に明瞭に跡づけられていることがわかった。また腸チフス発生数を分母とし,それに対するパラチフス発生の比をとるとき,各国の間に非常に大きな開きがあり,その国々の医療の水準を示す一つのよい指標となることを見出した。

原著

血圧計の目盛とその読みとりの検討

著者: 高橋坦

ページ範囲:P.205 - P.208

I.緒言
 従来の血圧計の目盛は2刻みであり,この細かい刻みの線を見やすくするために,10刻みごとに太く長い線(1位が0を示す線,0線と称する)を用い,この線にだけその値の数を記入してある。この0線は吾人の視覚に強く印象づけられる結果,元来は0線の上下の細い線の値として読みとるべき血圧値をこの0線の値として読みとることは,Master1),高橋2),秋山ら3)によって報告されている。
 高橋は,常に業務として血圧測定を行なっている医師・保健婦・看護婦・助産婦40名に,従来の2刻み目盛の水銀血圧計を用いて血圧測定を行なわせ,8,063名の血圧値を集計した結果,0線の読みはすべて読み過ぎを示し(20.9〜161.0%,平均78.0%),1位が2を示す2線の読みは多く不足を示し(不足は-で示す,8.0〜-67.9%,平均-23.7%),1位が4を示す4線の読みはほとんど過・不足ないか不足を示し(6.0〜-33.9%,平均-17.0%),1位が6を示す6線の読みはすべて不足を示し(-7.9〜-63.4%,平均-38.1%),8を示す8線の読みはあるいは読み過ぎをあるいは不足を示した(33.2〜-33.3%平均1.7%)ことを報告している。

九州,北海道等の炭鉱従業員寄生虫相の比較研究(第9報)—北海道の3炭鉱について

著者: 佐々学 ,   林滋生 ,   三浦昭子 ,   白坂竜曠

ページ範囲:P.209 - P.210

 この調査は我々が1956年以来,三菱鉱業健康保健組合の炭鉱従業員とその家族について寄生虫相の研究をつづけてきた一部をなすもので,1959年10月より約3カ月にわたり北海道の美唄・茶支内,芦別の3炭鉱支部の従業員と家族を対象にした成績を集計した。
 検査方法は第1報に述べた術式に従い,各支部にて集荷した便を急行貨物便で東京の研究室に送り,その職員および東大医学部学生などによって塗抹(材料約10mg),浮游(約1g),試験管培養(約0.5g)の3検便法を同一の材料について併用したものである。その成績についてはいろいろな面から集計を行なって検討したが,そのうちとくに疫学上興味ある所見について記すことにした。

セレベス系コレラの起源その他

著者: 泉芳

ページ範囲:P.211 - P.217

まえがき
 今次,東南アジアの流行コレラは,いうまでもなく,エルトールビブリオ(小川型)によるものであり(これについては,検疫所グループの詳しい研究があります。)このセレベス系のエルトールコレラが,インド系の真性コレラと肩を並べて,今後大いに,アジアのコレラ流行に猛威をふるうであろうことは,容易に考えられます。たまたま,Dr.De Moorの論文を抄訳する機会を得,その業績と識見に強い感銘を受けましたので,ここに,その大要をかかげ,セレベス系コレラの起源を紹介いたしますと共に,マニラの臨床報告を資料に,コレラの臨床その他について,若干ふれてみたいと思います。

某セメント工場における成人病検診の実態について(その1)

著者: 浅野延造 ,   重見正大 ,   鈴木林

ページ範囲:P.218 - P.227

I.まえがき
 工場の健康管理は従来胸部疾患を中心として行なわれており,近年ようやくいわゆる簡易ドック等が各地ではじめられたが,少人数ごとにしか受診し得ず,決して満足すべき状況ではない。
 ひるがえって我が国の現状をみるといわゆる成人病による死亡率が増加し1),平均寿命の延長による人口構成の変化2)と相俟って,将来ますます動脈硬化性疾患等の成人病に対する検索の必要性をおびてくる3)と思われる。

文献

デパートの至適気候条件/福祉における保健の問題—責任の連帯か分割か

著者: 芦沢

ページ範囲:P.192 - P.192

 オランダの某大デパート資本の国内6店を対象とし,それぞれの売り場の定位置(高さ2m)に自記温湿度記録計をおき,1年間の温湿度を観察した。なお2年以上勤務の店員を1店につぎ10〜15人をえらび,温熱感覚について個別標準化面接を行なった。
 同国の南端および北端に位置するデパートの店員からは,それぞれより高温上例およびより低温例にかたよった感覚温度を至適と感ずるという回答を得たが,その他の4店の回答は,いずれもおよそ類似の成績を得た。一般に1日の最低室温は開店時(午前8時半)に,最高室温上は閉店時(午後6時,時により午後9時)にみられ,1店だけの観察であるが,在店顧客数とほぼ平行関係にあった。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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