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綜説
オリンピック選手強化と体力医学
著者: 石河利寛1
所属機関: 1東京大学医学部衛生看護学科生理学
ページ範囲:P.165 - P.170
文献購入ページに移動1964年に予定されている東京オリンピック大会はすでにあと1年を余すだけとなつた。道路,建築とならんで選手強化もまた急ピッチで進められているが,最後の項目については体力医学に負うところが多い。スポーツは身心の全能力を傾けて勝敗を競うものであるから,選手の能力を判定し,それを強化しまた選手を疾病から保護することは体力医学に課せられた重要な課題である。
しかし,数年前まではスポーツと体力医学とはあまり密接な関係を持っていなかったように見受けられた。これはスポーツの側が,カンと経験に頼ってトレーニングを行なっていて,学問と無縁であったし,いっぽう体力医学者はスポーツの現場の実態に暗く,ただ自分たちの興味のみでスポーツを研究対象としていたので,スポーツの現場から嫌われた傾向があった。しかし,最近のスポーツは科学の裏付けがなくては発展しないことが明らかになった。スポーツの現場と体力医学とを密接に結びつける契機として東京でオリンピックが開催されるということは重要な意味を持っているように思う。私はローマオリンピック大会に東京オリンピック選手強化対策本部から派遣されて参加したが,これは一役員として参加したのにとどまり,選手団の一員として選手の強化にタッチしたわけではなかったが,欧米諸国で体力医学の関係者が選手やコーチと起居を共にして協力しているのを見て,日本のおくれを痛感した。
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