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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生27巻5号

1963年05月発行

雑誌目次

綜説

小地域における保健要請事項(health need)の把握に関する実証的研究

著者: 勝沼晴雄 ,   前田和甫

ページ範囲:P.229 - P.235

I.はじめに
 地域社会における住民集団の健康像を実際的な面から捉えることが,近来わが国においても地域保健計画,保健施設事業等,名称は種々あるが,公衆衛生事業を有効適切に実施するための基本的要件として,重視されるようになりつつある1〜3)
 健康像を現わす方法あるいはその尺度として,人口動態統計の内容をなすものを始めとして,特殊な年齢群にみられるもの(例・乳児死亡率),特定疾患の蔓延及びそれによる死亡,あるいは栄養・発育等生活に関連する要素の濃いもの等,その他多種・多数考案され報告されている。

公衆衛生に従事する医師に対する教育訓練等の諸類型について

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.236 - P.241

I.はじめに
 近代公衆衛生における医師の活動は,England & WalesのM. O. H.(Medical Officer of Health)にその典型がみられるように,その歴史は近代公衆衛生とともに始まり,その変せんと表裏をなしているといえる。すなわち,近代公衆衛生の発展は,国によってその時期に若干のずれはあるが,概括的にいって欧米諸国の場合には,①衛生土木工事および急性伝染病対策の時代(19世紀後半より20世紀初頭),②母子衛生および慢性伝染病対策の時代(20世紀初頭より第2次大戦),③非伝染性慢性疾患対策及び精神衛生の時代(第2次大戦後)の3段階が区別される。これはまた観点をかえれば,①Environmental Healthの時代(19世紀後半より20世紀初頭),②Personal Healthの時代(20世紀初頭より第2次大戦),③Comprehensive Healthの時代(第2次大戦後)の3段階に対応するものである。
 日本の場合についてみても,衛生行政ないしは公衆衛生における医師の活動は,明治初年近代衛生行政の発足とともに始まり,今日の保健所活動等にみられる活動の段階に至るまで相当に古い歴史を有することは周知のとおりである。

保健福祉の行政機構と住民の欲求—地域社会の構造と厚生行政の効果に関する研究序説

著者: 木田徹郎

ページ範囲:P.242 - P.248

I.考え方の枠組
 現在わが国の住民は,それぞれの生活のあらゆる側面について,強い現状不満,したがってニーヅ(各種の要求)の解決を求め,同時に社会制度の側においてはその充足を目的とする社会福祉および社会保健・公衆衛生の向上増進が推進されつつあることは疑いのない事実である,しかし一括して「住民」といっても,それは階層別,年令別,性別および大都市,農村等々の地域ごとに非常な相違があって,一部の要求充足が他の部分に反対の結果を及ぼすことさえあるのだから,保健福祉に関する諸行政を,より目的的に機能するように効果を測定する仕事は,実は極めて困難で複雑なことだといわねばならない。だがここで現在おこなわれつつある数多くの指導および制度改善に関する,直接・間接の諸活動のオリエンテーションの方向を,仮に極めて素朴に分類するとすれば,つぎの二つになるであろう。
 (1)個人の社会生活ないし行動における日常酌要求に対する(例えば医療のごとき)専門的援助および(家計上の,家庭内人間関係上の,またはパースナリテイおよびシチユエーシヨナルな,総括して)社会福祉的な指導。

企業における精神健康管理—その現状と方法

著者: 村松常雄 ,   横山定雄

ページ範囲:P.249 - P.257

はじめに
 さいきん,企業や職場において,精神障害者や事故頻発者の取扱いとともに,神経症や心身相関症や慢性の内科的神経性疾患等を訴える従業員の処置に手をやくようになってきたことから,精神衛生ないし精神健康管理の必要性が企業内の関係者(経営管理者・現場監督者・労務人事担当者・衛生管理者・工場医など)から,強く主張されるようになってきた。
 だが,産業(あるいは企業における)精神健康管理のあり方やその体系は,今日においても必ずしも明らかにはなっていない。欧米においては,第二次大戦前から一応の進展があり,戦後英国ではロンドン郊外にできたRoffey Park Mental Health Rehabilitation Center1)の国際的活躍や,米国のメーシー百貨店やホーソリン工場(Western Electric Co. Ltd.)2)やミシガン大学での産業精神衛生セミナー3)(1951年)などの業績はあるとしても,わが国としてはごくさいきんの動きであることはいうまでもない。

殺虫剤の使用基準量と衛生昆虫の駆除に関する研究—とくにイエバエに対する残留噴霧の再検討

著者: 朝比奈正二郎 ,   安富和男

ページ範囲:P.258 - P.263

I.はじめに
 ハエ,蚊,ノミ,シラミなどの衛生害虫を駆除する実践活動が活溌に展開されるようになってから現在までに,すでに10年以上の歳月を経過した。
 この間の実践活動の具体的な面においては,施設改善を主とするいわゆる環境的対策も勿論重要であるが,殺虫剤の有効適切な使用も極めて大切であることは云うまでもない。

地方公営企業における医療事業の考察

著者: 小野寺伸夫

ページ範囲:P.264 - P.280

I.緒言
 戦後地方自治体経営による医療事業が発展をみせ,地方公営企業としての運営の合理化財政基盤の確立,人事労務管理の検討等財政学的経営管理学的論評が加えられて来たが,最近さらに近代医学の発展,医療の社会化,医療保障制度の拡充を康開発,健康保障への前進が主唱されるにともなって,公益事業としての医療がいかなる公共的社会的政策を必要とするのか,組織的な機能を発揮するにはどうしたらよいのか,予測される将来の医療制度の中で地域民衆の疾病対策,健康向上に果たす役割はどうなのか,またいかなる限界点があるのか等について一層行政科学的考慮が要望されるようになってきた。それらについての理解を深め,今後の考察の素材として,公的医療機関の変遷,公益医療事業特に地方公営企業法適用の医療事業で県単位のものを中心に構造分析をおしすすめ検討を加えて行きたいと思う。

原著

某離島における高血圧者の3カ年連続心電図検査成績

著者: 菅野巌 ,   佐藤光三 ,   蓮池照夫 ,   佐竹央行 ,   片倉康博 ,   小島武雄

ページ範囲:P.281 - P.284

緒言
 本離島は宮城県塩釜市所属の浦戸島(人口約2,000人)で塩釜市より海路30分ないし60分をへだてた四つの小島よりなる。私達は昭和35,36,37年の3カ年にわたり本地区の一般住民検診の一環として35歳以上の者について血圧測定,検尿,血清梅毒反応,さらに高血圧者に対しては心電図検査を施行し,異常所見者を要注意要治療群に分け,市および保健所を通じ毎月1回保健婦を派出し,爾後指導,食餌,生活指導を行ない健康管理を続けて来た。高血圧者の管理成果についてはすでに日本内科学会東北地方会1)2)で報告したが,今回は特に高血圧者の心電図成績を中心に報告する。本島住民の一般住民検診受検率,血圧検診受検率は3年連続90%内外,心電図検査受検率は70%内外であったが学校,職場の場合と異なり一般住民検診においてかような高率の受検率を保持し得たことは関係者の並々ならぬ協力の賜であつた。

某セメント工場における成人病検診の実態に就いて(その2)

著者: 浅野延造 ,   重見正大 ,   鈴木林

ページ範囲:P.286 - P.291

IV.検査成績
8.寄生虫検査
(1)虫卵検査成績
 昭和28年8月595名に対して,寄生虫卵検査を実施し,第15表のごとき成績を得た。595名中382名(64.2%)は正常で,回虫卵保有者91名(15.3%),鉤虫卵保有者83名(13.9%),その他(東洋毛様線虫,鞭虫,肝吸虫)39名(6.6%)が検出されたのに対して,今回の検査では第16表のごとく,599名中正常566名(94.4%),回虫卵保有者2名(0.3%),鉤虫卵保有者23名(3.8%)その他(東洋毛様線虫,鞭虫)8名(1.4%)の成績を得た。

文献

シンガポールの三主要人種別疾病欠勤成績/教師の疾病欠勤

著者: 芦沢

ページ範囲:P.263 - P.263

 1955年3月1日より1年間にわたりシンガポール造船所男子全労働者の診断書による病欠記録の集計を行ない,人種別,年令別,病類別に分析を試みた。全数約8,100,インド人,中国人,マレー人の比はおよそ3:2:1,各国人の年令別構成では中国およびマレー人は16〜35歳が多く,インド人は26〜45歳が多く,中国人はまた56歳以上が他の2国に比し多い。4人当り度数率はインドは最若年層の16〜25歳において,他の2国は次の26〜35歳代で最高,どの人種も36歳以降は漸次低率を示す。しかし1人当り失日率とあわせて考えると加令にともない,一たんかかると回復し難い疾患が多くなる。診断書記載疾患を10群に分けて群別失日率を考察すると,結核(Ⅱ群)によるものは中国人が他の2国人より著しく高い。感冒(Ⅰ群)結核(Ⅱ群)以外の呼吸器疾患(Ⅲ群),および消化器疾患(Ⅳ群)は46〜55歳層を除いた全年令層でインド人がより高率,皮膚疾患(Ⅵ群)は46歳以上でインド人により高率である。年令でみると結核(Ⅱ群)と外傷(Ⅶ群)以外の8群でマレー人は他2国人より低率である。インド人は全年令で最も高率でマレー人のそれの倍に近い。主症状のみ記載した診断名不適(×群)は全年令を通じインド人が最高であり,とくに最若年層で,このための1人当り失日率は1.57の高率である。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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