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現今ジェンナー式のワクチンでは,麻疹にかんする限り必ずしも発病を阻止し得ず,副症状も免れない欠点がある。1953年Kempeらは3〜4週前に麻疹ワクチン接種を受けた者からとったガンマーグロブリンが予防効果を示すことを報告したが,さらに今日ではガンマーグロブリンは麻疹の治療にも予防にも有効なことが分かっている。1955年来モスクワのメチニコフワクチン血清研究所により麻疹ワクチンビールスで高度に感作した動物の血清からビールス中和抗体を高力価にもつ抗ワクチン血清製剤の研究開発が行なわれ,実験的には予防,治療に有効なことが明かにされていたが,1960年のモスクワでの麻疹流行時にあたり次の注目すべき事実が示された。すなわち,予めガンマーグロブリン投与をうけた13人の患者接触者からは1人も発症しなかつたが,何らの前処置をしなかつた29人の同様接触者からは13人の発症をみた。また,前駆期にガンマーグロプリンの投与をうけた患者は軽症に経過した。
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