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綜説
科学体系のなかの公衆衛生学の位置と役割—その3
著者: 水野宏1
所属機関: 1名古屋大学医学部公衆衛生学教室
ページ範囲:P.326 - P.330
文献購入ページに移動従来の社会諸科学において,特定の社会事象を明確に認識しようとする場合に,それぞれ対象となった問題に応じて,人口構造とか政治構造とか経済構造とかの分析から事をはじめようとする。対象となった問題を全体社会のなかで構造的に把握しなければ仕事の進めようがないからである。ところが社会全体を分析して,そのなかで「生命・健康をまもるための構造」がどのようになっているかを科学的に明確にしようとする努力はあまり見られない。これでは社会全体のなかの「生命・健康をまもる機能」を総合的に,しかも構造的に把握することはできないであろう。そんなことで地域住民の健康をまもる仕事が,科学的に進め得るであろうか。
人口構造でも政治構造でも経済構造でもすべて地域住民の健康に大きなかかわりをもつ。また法律や宗教や教育も深いところで地域住民の健康を支配している。その1つ1つについて例示するゆとりはないので,ここでは人口構造と経済構造にかかわりのある2,3の問題に簡単にふれるだけにしておこう,農村における生産年令人口の流出は近年とりわけ著しい。これを端的に示す示標として男子の農業人口補充率(中学・高校新規学卒者で農業に就業したものを1年に補充を要する農業人口で除したもの)をみると,昭和30年には70%以上であったものが,その後急激に減少して昭和36年にはわずか20%になっている。
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